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生と死は人が一度しか体験できないものだ。 それ以外の全てはその人間がどう生きるかによって何度でも体験できるようになり、また、一度も体験できないものでもある。 言うなれば、この世で生と死こそがあらゆる人間に平等に与えられる唯一の始まりと終わりであるといえる。 そして死だけが人にとって、永遠に未知である領域なのだろう。 概念的に理解は出来ても、それが本当はどうなのか?という本質的な理解をする事は出来ない。 だから人は死に夢を見る。 ある者は死の先にはあらゆる災厄から解放された幸福な世界があると想像し、ある者は死の先には厄の塊のような救いようの無い暗黒の世界があると想像した。 だが、所詮、死は未知の領域でしかない、何故ならば、そこから行って帰ってきた人間はいないのだから。 どれだけ、人間が想像しようとも、仮説、夢想、妄言の域を出ないのである。 だから人は死を恐れる。 ならばだ。 もし、人間が一度しか無い筈の死を何度も経験したとしたら、その時、その人間は何を感じ、何を思うのだろうか? 支竹幸三郎著 「魂論」序説より CR ―Code Revegeon― capter1 「Beelzebub of grudge」 THE MAIN STORY 前編 第七機関統治区域にあるとある山岳地帯。 そこを三機の蒼白の機体が走っていた。 その内、二機は大きな翼の生えた黒い鋼機の両肩に手をかけ運び、最後の一機は全長3mほどの金属のブロックを手に持っている。 「隊長、鋼獣がそちらに向かいました、警戒してください。」 無線越しに三機の鋼機に報告が入る。 「了解だ、各員、我々は下層へ向かう、遅れるなよ。」 「「了解。」」 隊長機が先行して山を下り始める、下に見えるのは森林地帯だ。 彼らの目的はこの山岳を抜けた先にある地下施設、そこの地下通路を抜け海に出て、そこに待機している潜水艦への自身の収容である。 それが、第七機関直属組織『イーグル』戦闘部隊αチームが受けたブラックファントム捕獲作戦の最後のミッションだった。 発端はほんの15分ほど前の話である。 鋼獣を唯一単独で圧倒する正体不明の鋼機、コードネーム:ブラックファントムの捕獲作戦が『イーグル』主導で行われた。 綿密かつ数百度におけるシュミレーションをし、ついに行われたそれは、様々なイレギュラーの影響を受けながらも現場スタッフであったαチームが臨機応変に対応し、 計画通りブラックファントムのシステムをハッキング、遠隔操作で緊急停止システムを起動させる事でブラックファントムを行動不能にする事に成功する。 これは、『汚物処理屋』などという汚名を被せられていた『イーグル』の汚名を返上するに値する成果だったといえるだろう。 だが、運命は悪戯を好むものであり、全てが終わるだろうと思ったその時に問題が発生する。 何者かにαチームを回収する予定だった大型輸送機が撃墜されたのだ。 その撃墜からほんの数秒後に司令部からαチームの隊長であった、『α1』シャーリー・時峰に無線通信が入る。 輸送機を撃墜したのは人類の敵、鋼獣が自分たちのいる方に時速300kmの速度で向かっているという一報だった。 司令部はシャーリーにその鋼獣の衛星写真を送信した。 その写真に写っている鋼獣は、飛行型であり鳥獣のような形状しており、背中に円形のようなリングを背負っている。 そして何よりも特徴的なのは九つに分かれた巨大な尾で、その一つ一つが強く発光している。 この鋼獣はいまだかつて、政府が接触した事のないまったくの未知の鋼獣であった。 これはブラックファントムを直接に回収に当たっていたαチームにとって最悪の事態といっても過言では無いだろう。 鋼機と鋼獣のスペック差は大きい。 この作戦の半年前、20機もの鋼機が、たった一機の鋼獣により傷一つ付けられず壊滅させられた過去がある程だ。 現在αチームが使用している蒼白の鋼機、S-21 アインツヴァインは最新鋭機であり、機関でも前線ではまだ使われていない代物だ。 この機体はエネルギー増幅源ディールダインを採用しており、総合的にかつての鋼機の約5倍近くまで性能を底上げさせたまさに革命的なスペックを持つ機体でもある。 だが、それをもってしても鋼獣と闘う事は無謀といえると想定されている。 『α8』秋常譲二がこの捕獲作戦開始の数刻前に鋼獣天狼に手傷を追わせるに成功したが、これは天狼がもっとも情報を多く入手していた鋼獣であり、また奇襲からの攻撃に偶然成功したからに過ぎない。 しかし、今回、αチームを追ってきている鋼獣は正体不明、姿かたちから判断できる以上の力はまったくをもって未知な敵である。 基本的に不利な戦いを行う時は、相手の情報をどれほど持っているかが勝機を分ける。 相手に可能なこと、不可能なことを考察し、それに対しての対抗策を講じる。 これが己よりも強者と戦う時の基本である。 だが、今回の敵はそれすら行わせてくれない。 つまりは、それとの戦うという事は必然、自殺しにいくようなものだといってもの決して過言では無いだろう。 そんな過酷な状況の中、αチームに課せられたのはブラックファントムとα8を連れて、鋼獣から逃げきり、新しくイーグル司令部が設置した回収ポイントに向かうという任務であった。 とはいえ、望みは皆無というわけでは無かった。 鋼獣は強大な機体性能を持つが、その反面、電子兵装がほとんど発達していないとこれまでの戦闘経過から結論付けられている。 鋼機に搭載されている光学迷彩を使用しつつ、退却を行えば、例え時速300kmで迫ってくる敵が相手でも逃げ切れる可能性はあるとは言えた。 だがここで問題となるのは二つである。 一つ目はブラックファントムの存在である。 今回の作戦の捕獲対象である、正体不明の漆黒の鋼機ブラックファントム。 おそらくは1世紀ほど前の鋼機をベースに作られたそれは、現在の最新鋭機を遥かに上回る不可思議な能力を持っている。 その能力に使われているテクノロジーの調査を行い、量産化にこぎつけることが出来れば、人類は鋼獣に大きな反撃の一手を得ることが出来る。 幸い鋼獣の性能は圧倒的ではあるが確認されている数は少ない。 一体一体の能力は強力だが広域消滅させるような兵装は今の所確認しておらず、人類に決定的な打撃を与えるというのはまだまだ時間がかかるだろうと目されていた。 このブラックファントムを機関に持ち帰る事が出来れば、それを調査し兵器化する時間はあるという事である。 つまり、この機体は人類が鋼獣に打ち勝つ為の希望なのだ。 だが、ここで捨てて逃げてしまったのならば、行動不能に陥っているブラックファントムは確実に、今、αチームを追ってきている鋼獣に破壊されてしまうだろう。 そうなってしまえば、αチームが行った事は何だ? 唯一、鋼獣に対抗できた戦力を自ら相手に献上し破壊させ、進んで滅びの道へと進んだようなものなのだ。 だから、なんとしてもこの機体は『イーグル』に持ち帰らなければならない。 αチームの隊員の命よりも重要な事といえた。 二つ目はα8、秋常譲二の存在だった。 秋常譲二はブラックファントム捕獲の作戦行動前に無断出撃を行い妖魔との戦闘を繰り広げた。 これに関しては秋常譲二に後々、相応の罰が与えられる予定であったが機関の上層部の目にある事実が入った事で彼に大きな価値を見出させる。 鋼獣・天狼と交戦した結果、天狼に小さな傷を与える程度のダメージを与えることに成功した事だ。 これはブラックファントムの謎のテクノロジーを使わずとも鋼機で鋼獣にダメージを与えることができたという唯一にして無二の例の為、 その戦闘データを解析、考察を行えば、ブラックファントムの未知のテクノロジーを調べるよりも現実的かつ早期に対鋼獣の戦術を組む事ができることになる。 ある意味まったくを持って未知のテクノロジーであるブラックファントムの解析して兵器化するというモノよりもそれは現実的な対抗策と言えた。 それゆえに、α8の回収も重要なのだ。 そして何より、αチームの隊長であるシャーリー・時峰は部下思いの隊長である事で有名である。 そして、単なる部下思いというにはそれは余りに度が過ぎている事でも有名な人間あった。 5年前、シャーリーがまだ、第七機関軍に所属していた頃、第四機関であった紛争に送り込まれた際、 たった一人の仲間を救う為にすべての仲間にリスクを犯させた過去があった。 結果、その行動はシャーリーの部隊に大打撃を与え、シャーリーは責任問題から罪を問われた過去がある。 冷静沈着であり、あらゆる状況の中でも柔軟かつ的確な判断をする事が出来、 鋼機のパイロットとしても一流という稀有な人材である彼女が汚物処理屋などといわれるある種の吐き貯めに来る事になったのはこういう背景があったからである。 彼女は今までどのような任務であっても仲間を見捨てる事はしなかった。 正確には、出来ないのだ。 利害問題を考慮した上で確率が低かろうとも、必ず全員が助かる方法を選択する。 それが、シャーリー・時峰という一人の人間であった。 だからこそ彼女はこの最悪の事態において、全員が助かる方法を即時に模索する。 そうして彼女はいくつかの逃走案を組み立て、部下たちに実行させた。 一つめは天狼との戦いで半壊したα8の機体の解体作業だ。 パイロットであるα8秋常譲二は既に機内で意識を失っている状態にある。 機体の損傷も目に見えてひどく、まともな機動が出来ない状態だと言えた。 そのため、まずコックピットブロックのみを切り離し、それをα6に持たせ、持ち運ぶ事にさせた。 次に問題となるのはブラックファントムの運搬方法である。 この機体に関しては安易に解体するというわけにはいかない。 この機体のすべてを手に入れることが今回の目的なのだ。 だが光学迷彩もなく、形状からして非常に目立つ機体であるこの機体を鋼獣の目から隠して移動するというのは困難を極める事であった。 これを回避するための最低条件は常に鋼獣の動きをモニターし、先手、先手と動く必要がある。 そこで空圧砲を持って待機していたα4にはその待機場所で待機したまま、敵の動向をモニターするように命令を送る。 α4のS-21はステルス性に特化させた特殊装備になっている。 鋼機本来の持ち味である機動力を大きく削ぐようにはなっているものの、電子兵装は他の鋼機を遙かに凌駕するものであった。 対ブラックファントム戦にはこのステルス能力をふんだんに駆使する事で、あの歪な眼光に捉われる事なく空圧砲を命中させる事に成功した。 つまりはα4は安易に退却行動をとらせるよりもその場でその高質なステルス性を駆使して鋼獣をやり過ごさせた方が生還の可能性が高いとも言える。 そして、それは鋼獣の動きをモニターすること出来るという事にも繋がり、無線通信において、α4に鋼獣の動向を探らせようという寸法だ。 これは人工衛星からの情報を司令部越しに受け取る等といった方法よりもずっとラグがなく動けるのが大きい。 シャーリー・時峰は一分足らずでこれだけの作戦を組み上げたのだ。 そうしてα1、α5、α6の三機による、ブラックファントムとα8を連れた、退却作戦が開始された。 ――山岳地帯森林部、目標の基地までの距離残り10km 「しかし、何時までたっても奴はここから離れませんね、そろそろ諦めていい頃だと思うのですが…。」 山岳地帯下層の森林部、そこにαチームは森林を隠れ蓑にして潜んでいた。 αチームの上空には一機の鳥獣の形を模した機械が飛行している。 背中に大きな円輪を背負っているのと、9つに分かれた尾が特徴的でその尾の内、6つが激しく発光しているのが特徴的だった。 『イーグル』司令部からの報告にあった新手の鋼獣だ。 「まったくだα6、攻撃をしてこないという事から我々を発見したという事では無いのだとは思うが、 それにしてもここでの待機時間が長い。普通ならばそろそろ別の所にいってもいいものだ。」 α4から鋼獣がこちらに向かったとの報告を受けたシャーリー達は下腹にある森林地帯へと逃げ込んだ。 ここならば森の木々が陰になって、機体を隠してくれるという算段があったからである。 木々の影に隠れれば、ブラックファントムの漆黒の機体もそれなりの迷彩効果を帯びる事になる。 これが、まったく同じS-21 アインツヴァインであったならば、カメラを赤外線モードに切り替えられ、即座に発見されただろう。 だが、鋼獣にはそのような能力がない、それは過去のデータから明らかになっていることだ。 だがシャーリーには一つの懸念がある。 あれはデータには無い未知の鋼獣であるという事だ。 そう、鋼獣の索敵能力が低いという根拠はかつてのデータからの推測でしかないのであってあの鋼獣までもがその枠に収まりきるのかどうか不明なのだ。 つまりは可能性としては鋼獣に高い索敵能力が備わっている可能性もある。 だが、それだとおかしい点も一つある…何故、攻撃してこない? 「ほんっとに、めんどくせぇな、あれに弾丸をぶち込みたくなってくるぜ。」 嫌悪の意を示してα5が言う。 「我慢しろ、こういうのは何時でもじれったいもんだよ、根比べに負けるのはお前も嫌だろう?」 「へいへい。」 α5は口では愚痴を言うものの実際にその愚痴を行動におこすことはしない人間だと3年ほどの付き合いで理解している。 この男が、冷静でいる為に、自身に抑制をかける為に、戒めとしてある種暴言じみた愚痴を零すのだ。 「しかし、こうも近くで飛び回られると、下手な身動きが取れませんね、持久戦になるとこちらが不利です。」 「そうだな、奴が何を根拠にここから離れないのかさえ理解することが出来れば、それを元に対策を立てられるのだが…。」 結局はこれなのだ、あの鋼獣は何かを探知してい、自分たちがいる大まかな位置を理解している。 これは自分たちの上空から離れずに旋回して探し回っているという点からほぼ疑いようが無い。 だが、それは何故だ?これまではそのような例はまったく無かった。 それは一体―― 「―――教えてやろうか?」 その時、聞きなれない声がシャーリーの耳に届いた。 いや、知っている声だ、だが、それは聞きなれた自分の部下たちの声で無い。 暗く淀んでいるような声。 ああ、そうだとシャーリーはその声を誰が発したのかを理解する。 そうして一息を入れて、シャーリーは聞きなれない声を発した者に問い返した。 「君はそれを知っているのかい?ブラックファントム…。」 「知らなきゃ、教えてやろうなんて文句は吐けない、違うか?」 行動不能になった漆黒の鋼機、ブラックファントム、そのスピーカーから声が発せられる。 その言葉には何か含みがあるのが感じられた。 「なるほど、だが、ただでというわけでは無いんだろう?」 シャーリーはため息交じりに言う。 「そうだな、この機体のフリーズ状態を解除してくれたら、教えてやるというのはどうだ、この緊急事態だ、高官どもも進言すれば解除してくれるかもしれない? ついでにあいつも片づけてやろう、ここにいる人間全員が生きて生還万々歳という奴だ。悪い話じゃないだろう?」 茶化すようにブラックファントムは告げる。 「てめぇ、立場わかってんのか!」 α5が怒鳴りつけるように言いながら、鋼機の右腕に握られた、アサルトライフルの銃口をブラックファントムに向ける。 それも滑稽だと笑ってブラックファントムは言う。 「ハァー、状況を把握出来ていないような奴と無駄口する趣味は無いんだ、いいか?そこの脳無し、俺はシャーリーと話しているんだ。」 「この――」 ブラックファントムに煽られα5は怒りを露にする。 だが、そんなα5を遮り、侮蔑するように―― 「黙れ馬鹿、いくらやつらの探知能力が低いとは言え、大声を出せば流石に気づかれるぞ?」 α6は釘を刺した。 「おお、相方は話がわかるようで…。」 「ぐっ。」 それを受けてα5は押し黙る。 「それにしてもだ、ブラックファントム、取引というのは信用の下に行われるのを知っているかい?」 シャーリーがブラックファントムに苦笑まじりの口調で問う。 「何が言いたい?」 「私は君を信用していないという話だよ、それにおそらく私ごときが進言した所で解除の容認などしてくれる事はないだろうな、私達に君を捕獲しろといった人間達はね、 各機関への体裁とプライドを守るためにこんな無茶な任務をやらせているんだ、そんな人間達がそうそう容易に折れてくれると思うかね?」 事実だった。 もしこれで、ブラックファントムをキャッチ&リリースしたというものならば、他機関から第七機関とブラックファントムの繋がりを示唆される要因になりさらに立場が悪くなってしまう。 今回のこの無茶な作戦は、第七機関の身の潔白を証明するための作戦でもあるのだ。 「ふん、やりもしないで、諦めるなんて愚者もいいところだな。」 ブラックファントムは呆れたように呟いた。 「だが、まあ、我々も背に腹は代えられなくなってきている。我々の方から進言はしてみるよ、それで一応の手は打ってくれないかね。」 出来る限りの譲歩だった。 いや、これ以上の事をシャーリーは出来る権限を持っていない。 つまりはこれがシャーリーの出来る限りを尽した誠意と言えた。 「はぁー、はいはい、わかったよ。」 シャーリーはブラックファントムがそれをあっさり承認したことで少々拍子ぬけした。 こちらからは最大の誠意だったとはいえ、理不尽な物言いだったのは間違いないのだ。 「俺も命が惜しいからな、出血大サービスという奴だ、まず奴らはなんでここにとどまっているかという話だったな?」 「ああ、そうだ。」 ブラックファントムはそこに一息を入れた。 「それはな、奴らがこの機体に惹かれているからだよ。」 「それは一体どういう意味だ?ブラックファントム。」 「言葉通りさ、シャーリー・時峰。奴らはこの機体の大体の居場所を探知する事ができる、 ただ結構範囲はアバウトで半径5kmぐらいで…だったかな。 お前らの記録に残っているだろう、俺と奴らの戦いはこちらからけしかけた回数よりもあちらからけしかけて来た方が多いのは、これっておかしいと思わないか? 奴らの探知能力は低い、だが、何故かこいつは見つけられる。それはつまり、奴らは俺の機体の大体の居場所を特定できる能力を持っているからという事なんだよ。」 シャーリーは息を呑む。 「それはつまり――」 「そうだ、そうなんだ、そうなんだよ、俺たちがここでずっと息を潜めていても奴はここから離れるなんて事は無いという事だ。」 「ブラックファントム、聞きたい事がある。」 α6が迫るようにブラックファントムに尋ねる。 「なんだ?」 「我々の状況は把握できた、それにあなたは我々よりも奴らの情報を多く持っているようだ。 そこであなたに一つ聞きたい事があるのだが、我々の上空を飛んでいる鋼獣の事を知っているか?」 「そりゃあ、見えてるからな。」 「いや、そういう話をしているのではなくてだな。」 困ったような口調でα6言う。 α5はそのやりとりを見て腹を抱えて笑った。 「黙れ、ゲンジ。」 若干の怒気を込めてα6はα5に言う。 「いや、だってよぉ、ぐはは、今のはねぇぜ、ぐははは。」 「からかいがいがある奴らだなぁ…。」 その光景を眺め、周りには聞こえないようにブラックファントムは静かに呟いた。 それを見てシャーリーは溜息交じりにブラックファントムに言う。 「頼むからあまり部下で遊ばないでくれ、ブラックファントム、それで実際の所、あの鋼獣の能力に関して知っている事は無いか?」 「ん?ああ、しかし、お前ら、それも知らないのか、どうりでのんびりこんな所で隠れてるわけだな…。」 また、それかとシャーリーは思う。 彼は先ほどの戦いにおいても、我々にそんな事も知らないのかなどという台詞を吐いた。 それはつまり、機関の上層部は彼らの正体に関して知っているという言葉の裏返しであると考えられる事でもある。 だが、今はその意味に関して深く考えている場合では無い、それは生還してから行うべき事だ。 「そうだ、私たちは残念ながら、知らされていないんだよ、だから君が知っているのならば、少しだけでも生き残る確率を上げる為にも教えてほしい。」 ブラックファントムは少し考えるようにして間を置いた後、答えた。 「そうだなぁ、お前らのデータバンクの中では奴のコードネームは焔凰(えんおう)という。」 「焔凰?」 「そうだ、三獣神機、鳳凰のレプリカにして、UHの中でも数が少ない飛翔種機神疑似型、それが焔凰だ。鋼獣の中でもレアな機体だ。俺も存在は知ってはいたが初めて見たよ。」 「ちょ、ちょっと待ってくれ。」 α6が慌てた声をあげる。 「お前は一体、奴らの事をどれだけ知っているんだ?それに俺達のデータバンクのコードネームだと?それは本当は俺達がその情報を知っているという事なのか?」 それをブラックファントムはふん、と鼻で笑った。 「俺からすれば、お前らが知らなすぎてびっくりなんだがな、俺が知っているのなんてこの機体のデータバンクにあるぐらいの情報だよ、 といってもお陰さまでOSが凍結されて、今は閲覧できなくなっているがな。」 そこで更なる追及をしようとしたα6をシャーリーは止める。 「気になる話は多いが、それは後で聞かせてもらおう、今は時間が無い、奴の性能に関して知っている事を教えてくれ。」 「そうだな、何から話せばいいか、まあ、名は体を表すといったように、焔、つまり奴は炎を使う鋼獣だ。奴の姿を見てみてくれ、さっきと違う所があるのに気付かないか?」 そう言われてαチームの三人は、上空の焔凰に機体のカメラを向ける。 「いや、特別なにも変わっている様子はないが…。」 α6は焔凰を見つめて、呟く。 だが、何か違和感があるのは確かだった。 虹色で大きな二つの翼に、鋭角的でその嘴だけで相手の体を貫けそうな頭部、背中に大きな円輪を背負っており、その尾には9つの内、8つの光る大きな尾羽がある。 この中で何がおかしいのだろう、α6は考える。 だが、その違和感に最初に答えたのはα5だった。 「尾の光ってる数が違うな、たしかさっき見たときは6本だったが、今は8本光っている。これがなんか意味あんのか?」 「一番、意外な奴が答えたな、頭はアレだが感覚は鋭いタイプの人間という事か…。」 「てめえ、あんまり人馬鹿にしてると本当に撃つぞ。」 α5はブラックファントムに向けたアサルトライフルの引き金に指をかけさせる。 そんなα5を遮るようにシャーリーは銃口をブラックファントムから逸らさせた。 「α5、よくできた御苦労だった、だから黙れ。」 「た、隊長~。」 落ち込むα5を苦笑してブラックファントムは言う。 「奴の特性はな、太陽光を吸収しそのエネルギーをディールダインで増幅し尾羽というエネルギー貯蔵庫に蓄える事だ。 一本の尾羽に発電所が一日に作り出す程度のエネルギーが蓄えられるんだそうだ。そしてそのエネルギーを熱線として吐き出す。これが焔凰の能力だ。 奴は俺達の大体の位置を把握している、だが明確にどこにいるかまではわかっていない、そこで奴が何をしようとしているかわかるか?」 シャーリーの背筋にぞくりと悪寒が走る。 それは他の二人も同じようで、押し黙ってしまった。 「奴はな、9つの尾に蓄えられたエネルギーを全て解き放つ事で俺らごとここら一帯すべてを焼き払うつもりなんだよ。」 αチームの上空を飛行する鋼獣焔凰、その象徴たる尾の中で光を帯びていないものは残り1つであった。 「ブラックファントム…あと残り時間はどれほどある?」 シャーリー時峰はブラックファントムに問う。 「さあな、ただ、さっきから奴を見てたが大体5分で一本分のチャージが出来るみたいだ、 あとはフルチャージにはあと4分ぐらいと言った所だな。」 「隊長、4分ではこの荷物を持ってここから射程圏外に逃げるのは無理です。」 α6の声には焦りの色が見えた。 この男は普段は常に冷静さを保っているように見えるが、窮地に弱い。 「わかっている、落ち着け!ブラックファントム、奴に何か弱点はないのか?」 「知らないよ、機体がまともに動けば、データバンクからデータを覗く事も出来るが お陰さまで今は無理だ、俺の知ってる情報なんてうろ覚えなレベルだ。だが、可能性ぐらいならば、示唆できる。」 「可能性?」 「奴の特徴はエネルギー貯蔵庫たる九つの尾だ。だが、その尾にこそ突くものがあると思わないか?」 あっ、と納得したような声を上げたのはα6だった。 「そうか、光っている尾が膨大なエネルギーの貯蔵庫なのならば、その尾を破壊する事が出来るかも知れない。 あの膨大なエネルギーで奴自身をも自滅させる事が出来るかもしれない。」 「まあ、そういう事だ。」 「他に何か知っている事は無いか?」 シャーリーはいつもと変わらぬ口調でブラックファントムに尋ねる。 「無いよ、あとはまあ、せいぜい頑張ってくれ、俺はここで見物させてもらうよ。」 もう、どうでもよさそうな口調で答える。 「感謝する、ブラックファントム、先ほどは君の事を信用できない人物だと評した事をここで謝罪させてもらうよ。君がいなければ我々はここで滅びを待つだけだった。」 ブラックファントムは意外な事を言われ驚いた様子を見せ、少し間を置いたあと、苦笑いした。 「やめてくれ、俺はただ、死にたくないだけだ。」 「それでも、ありがとう、凍結解除の進言はしておいたよ、だが、申し訳ないが彼ら受け入れないだろうと思う。それに関しては私から謝罪させて貰う。」 シャーリーは感謝の意をこめて、ブラックファントムに告げた。 「隊長、残り2分30秒です。」 急かすようにα6が言う。 「了解した、さて、諸君、我々には時間がない、細かい作戦を練っている暇もない、だが、やることは明白だ。 あの上空で我々を見下している下衆を焼き鳥にしてやるというそれだけの事だ。 今まで諸君らと様々な任務を行ってきた、そして私と諸君らであらゆる任務を成功させてきた、それは誇るべき事だ。そして我々の行うことはそれをまたやるだけでいい、簡単な事だろう?」 「当然。」 「楽勝。」 二機の鋼機が武器を構える。 「ならば、我々はその存在の名の元に、謳おう。その誇りの証明として、謳おう。」 イーグルの聖句、それはイーグルの創設者、黒峰玄武が組織の在り方を示すために作られたものだ。 「我らは気高き鷹なり。」 だが、玄武の死後、そのあり方を歪められてしまい、その玄武の理念を体現する組織としては成り立たなくなってしまった。 「あらゆる厄災から弱者を守る聖者の爪を持つものなり」 灰色から黒とよばれるような任務ばかりを押し付けられるようになり、それでついた蔑称が『汚物処理屋』であった。 「あらゆる悪を見逃さぬ、絶対なる監視の目を持つものなり」 ありとあらゆる侮蔑や屈辱に晒され続け、どのような目的を持って創設されたかを知っている外部の人間など数えるほどしかないだろう。 「故に我ら、世界の悪を正義の名の元に滅する」 だが、その黒峰玄武が掲げた理念は、その志は、まだここに残っているのだ。 どれほど汚されようと、どれだけ堕とされようと、それだけは、その高貴なあり方だけは誰に変える事は出来ない。 「「「我らの名は鷹、この世界の僕にして、守護者なり!!!」」」 イーグルという組織は、それだけは、その高貴なあり方だけは、どんな苦境に立とうとそれだけは守ってきた。 タイムリミットは2分。 勝率10%にも満たない戦いだ。 だが、彼らはそれを苦としない、信じているのだ、自らの勝利を…。 「さあ、行くぞ、各員、溜まってるものを全部吐き出して来い。」 そして、『地に堕ちた正義の味方』と『鋼獣・焔凰』との戦いの幕が開けた。 To be continued ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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夢の終わり(前編) ◆ew5bR2RQj. 「ハァ、ハァ……」 肩で息をしながら、急ぎ足で階段を降りるアイゼル。 錬金術の才能はある彼女も身体能力は一般人と大差ないため、四階から全速力で階段を駆け下りるのは辛いものがある。 しかしそんなことを言っている余裕はない。 次元やジェレミアの方が、もっと辛い状況に立たされているのだから。 「ジェレミア卿!」 そうして正面玄関に辿り着いた彼女が見た光景は。 「ア、アイゼルさん!?」 傷口から血を流し続ける五ェ門と、彼の治療を必死で続けるつかさと北岡。 「チィッ!」 冷徹に銃弾を放つゾルダと、それを回避し続ける次元。 鈍器のような剣を振り回す浅倉、そして―――― 「浅倉威ィッ!!」 鬼気迫る顔で浅倉と切り結ぶジェレミアの姿だった。 「…………」 声が出ない。 病院の四階から窓越しに見る戦場と、正面から直に見る戦場はあまりに違いすぎた。 粉塵が舞い、銃弾が飛び交い、怒声が轟く。 彼女もそれなりに修羅場をくぐっているが、ここは全く異質な場所だ。 一歩間違えれば、全てが終わる。 日本刀を五ェ門かジェレミアに渡すつもりだったが、今の五ェ門が戦線復帰などできるわけがない。 そして、ジェレミアは周囲の状況が見えていない。 浅倉がルルーシュの真の仇である以上、彼が憤慨するのも当然だ。 つかさを襲った時とは違い、今は明確な殺意を見せている。 繰り出される剣戟は、全て浅倉を殺すためのものだ。 だが、何故か不安を覚える。 彼の剣は一度も浅倉には届いていないからか。 疲労が溜まっているとか、左腕の剣が使えないとかそんな理由ではない。 もっと根本的なところにあるような気がした。 「ジェレミア卿!!」 アイゼルは再びジェレミアの名を叫ぶ。 その声に、彼が反応することはない (ジェレミア卿……) この不安が杞憂であればそれでいい。 しかし、どうしてもそれを掻き消すことはできなかった。 「え……足音?」 リノリウムの床を蹴る足音。 今四階に残っているのは、奈緒子と詩音の二人だけ。 二人のうちで、こんな危険な場所に赴く理由があるのは一人だけだ。 「奈緒子の奴! 詩音さんを任せるって言ったじゃない!」 間抜けな奈緒子のことだから、おそらく銃を奪われたのだろう。 彼女の予想通り、階段から現れたのは詩音だった。 彼女はそのまま自分たちには一瞥もくれず、カラシニコフを構えて正面玄関を突っ切って行く。 「待ちなさい!」 アイゼルは詩音に声をかけるが、彼女は振り向かない。 それぞれの思惑が交差する中、戦場に新たな闖入者が訪れる。 ☆ ☆ ☆ 剣と剣が衝突する音に紛れ、銃声が鳴る。 それはレイの銃から発射されたもので、銃弾は次元の心臓を狙っていた。 「チィッ!」 発射される銃弾を回避し、返す刀で銃口を向ける。 しかしその時には、既にレイの銃口が次元へと向いていた。 「ったく、連射もできてリロードの必要もないとかいい加減にしやがれってんだ!」 一分間で百二十発ものエネルギー弾を吐き出すマグナバイザー。 それだけでも驚異なのに、さらに装填の必要もないと来た。 やはりと言うべきか、仮面ライダーの相手は手に余る。 下手に接近すればギガホーンで貫かれ、身を隠せばギガキャノンに焼かれる。 そして一発でも攻撃を喰らえば、それはファイナルベントを発動させる隙に繋がってしまう。 「ふざけやがって、よぉ!」 発射された銃弾を横っ飛びで避け、同時にレイへと狙いを定める。 相手もすぐにマグナバイザーを向けてきたが、次元の方が一瞬だけ速い。 これを好機と判断し、次元は発砲する。 狙いはマグナバイザーのグリップを握る右手、これさえ撃ち落せばファイナルベントを発動できなくなる。 次元の勝利条件は、レイを倒すことではない。 ファイナルベントを使用させず、変身を解除させることだ。 だがその銃弾は、レイへ届く前にギガホーンに叩き落とされていた。 先ほどからこの繰り返し。 僅かな隙を縫って発砲しても、躱されるか叩き落とされるかの二択。 これにより弾薬は消費され、残弾数が二発まで追い込まれていた。 (まずいな……ん、あいつは?) 銃弾を避けつつ対抗策を構築している最中、次元の視界にカラシニコフを構えた詩音の姿が映る。 彼女は最初に相対した時、これの扱いは慣れていると言った。 銃火器のプロフェッショナルである自分には劣るだろうが、それでもこの状況での援軍はありがたかった。 詩音は正面玄関の入口を陣取っていて、次元がそれを正面から見る形でゾルダと対峙している。 つまり詩音のいる場所は、レイにとって背後という完全な死角。 奇襲をかけるには、今が絶好のチャンスだ。 レイに悟られぬよう、詩音の射線上から外れる次元。 それを見計らって、詩音はカラシニコフの引き金を引く。 「ッ!」 数十の弾丸が矢のように駆け抜け、命を貪らんと雄叫びを上げる。 そこでようやく気付いたのか、レイは背後を振り向く。 だが、弾丸は既に目前にまで近づいていた。 「ぐうっ!」 くぐもった声が漏らすレイ。 寸前で回避を試みたが、全ての銃弾を躱すには至らない。 数発の銃弾が強化スーツに命中し、内側の肉体に銃創を刻んだ。 いくらライダーの力によって強化されていても、剣で突かれたり銃で撃たれたりすれば負傷はする。 しかしその程度だ。 普通の人間であれば致命傷になる攻撃も、ライダーに対しては致命傷にならない。 その証拠に、レイはもう立ち上がろうとしている。 (タフ過ぎんだろ、だが――――) 一発で足りないなら、くたばるまで撃ち続けてやればいい。 依れた帽子を直し、体勢を立て直す。 そうして銃を構えた瞬間、ふと心臓を直接冷やされたかのような悪寒が全身に走った。 (なんだ……?) 素人の直感はアテにならないが、これは何度も死線を越えてきた男の直感だ。 最後の最後で一番頼りになるのは自分だということを、次元はよく理解している。 彼が感じているのは殺気だった。 (……どいつだ?) レイはまだ攻撃態勢に移っていない。 引き金に指をかけつつ、周囲の状況を確認する。 そうして目に入ったのは、カラシニコフの銃口をレイに向ける詩音。 カラシニコフの銃口を”レイと次元のいる方向”に向ける詩音の姿だった。 「ッ!!」 そう、詩音、次元、レイは再び一直線に並んでいたのだ。 「ぐおぉっ!」 銃を急いで取り下げ、地面にへばりつくように転がる次元。 同時に幾重にも銃声が轟き、彼が数秒前までいた場所を弾丸が通過していった。 (あの女……!) 帽子の下の切れ長の瞳を冷酷に尖らせ、遠方にいる詩音を睨みつける。 あと一瞬でも判断が遅ければ、次元の身体には大量の風穴が空いていただろう。 間違いない、園崎詩音は自分も殺す気でいた。 「チィッ、くそ!」 レイだけでも手に余るのに、さらに遠方からの射撃が加わった。 命中精度が劣るとはいえ、二人同時に相手など勘弁願いたい。 レイの方も上手く回避したのだろう、今は走りながら銃弾を避け続けている。 その射線上に次元はいないためか、今は銃口が向けられることはない。 今後の立ち回り方を考えようと頭を回すが、そこに新たな乱入者が現れる。 「次は俺と遊んでくれよ、偽物さんよぉ!」 乱雑に剣を振るいながら、レイに殴りかかる浅倉。 死角からの奇襲を回避できず、レイはその一撃をまともに喰らってしまう。 肩に装着されていたギガキャノンが砕け、彼は数歩後退させられる。 そんなことはお構いなしに、浅倉は二度目の斬撃を振るってきた。 「チクショウ、あの野郎まで首を突っ込んできやがった!」 悪態をつく次元。 辺りを見回すと、そこには剣を杖に片膝をつくジェレミアの姿があった。 「ぐぅっ……」 ジェレミアと浅倉、ここに来て体力の差が大きく出た。 浅倉は悟史の呼び掛け以来、まともな戦闘は一度も行っていない。 一方でジェレミアは、五ェ門にレイと連戦を行った直後に王蛇との戦闘。 ただでさえ強敵である浅倉に対して、疲弊した身体で応戦するのは無理があったのだ。 「引き下がるしかねぇか……」 二人相手なら辛うじて立ち回れたが、そこに浅倉が絡んでくるなら話は別だ。 まだ浅倉は五分以上の変身時間を残しているし、ライダーの中でもトップクラスの実力を持つと聞く。 それをたった二発で応戦など、蛮勇を通り越して無謀である。 ガンマンとしての矜持もあるが、一番大事なのはやはり命。 こちらの勝利はゾルダのファイナルベントの阻止だから、浅倉が足止めしてくれればそれで問題ない。 そう判断した次元は銃を収め、詩音が陣取っている正面玄関まで後退した。 「おい、嬢ちゃん」 「……なんです?」 こちらに一瞥もくれず、二人のライダーに銃口を定める詩音。 最初に会った時は殺すのを躊躇していたのに、今はしっかりと身体を狙いに定めている。 たった数時間で随分と様変わりしたもんだ、と次元は皮肉げに笑む。 それでも浅倉を相手にするのは不可能と判断したのか、彼が介入してから発砲はしていない。 「お前、俺を狙ったな」 「なんのことです?」 わざとらしい演技で次元の言葉を否定する。 「とぼけんなよ」 詩音の背中に銃を突きつける。 「俺を誰だと思っている? テメェみたいなガキの狙いなんざすぐに分かるんだよ」 次元はあらゆる重火器に精通している。 それは単に兵器を扱えるというだけでなく、それらの対抗手段まで完璧に把握しているということ。 素人に毛が生えた程度の小娘の狙いなど、次元には手に取るように分かるのだ。 「……私はあくまでゾルダを狙っただけですよ、そこにたまたまおじ様がいただけです」 「屁理屈垂れてんじゃねぇよ、今の状況分かってんのか? その銃を渡して、嬢ちゃんは引っ込んでな」 銃口を背中に捩じ込むように押し付け、嫌でもその存在を理解させる。 「ここで撃てば、立場が悪くなるのはおじ様の方ですよ?」 だが詩音は脅迫に屈さなかった。 次元は引き金に指を絡めながら、奥歯をぎしりと噛み締める。 ここで発砲すれば立場が悪くなるのを、彼も理解しているからだ。 もしこの場にいるのが詩音だけだったなら、次元は彼女を殺していただろう。 だがこの場には、詩音以外にも大勢の人間がいた。 特に五ェ門やジェレミアとは、今後も協力関係を保っておきたい。 だがもしここで詩音を殺害してしまえば、次元は彼らから仲間殺しの烙印を押されるだろう。 今は脅迫がバレないように銃を自らの身体で隠しているが、脅迫と殺害はまるで違う。 一度人を殺してしまえば今後も協力関係を結ぶのは困難だし、危険人物として情報を流布される可能性もある。 だから脅迫という姑息な手段に頼るしかなかった。 (このアマ……) 背中に銃口を突きつけられても顔色一つ変えず、逆に次元を脅迫する始末。 大した胆力の女だと、次元は舌を巻く。 帽子の下の双眼を尖らせ、次元は周囲を見渡す。 黙々とチャンスを窺う詩音を、肉弾戦を続ける二人のライダーを。 ☆ ☆ ☆ レイとの戦闘を続行していた浅倉は、言いようのない憤りを感じていた。 先ほどから彼が繰り出す攻撃は、一つもレイに届かない。 本来のゾルダである北岡は、接近戦が苦手でそれを避けている節があった。 彼はそれを理屈で理解していた訳ではないが、本能的にそれを察知して接近戦を仕掛けていた。 だが今のゾルダは違う。 接近戦も難なく熟し、逆に浅倉を圧倒している。 ゾルダのデッキは不治の病に蝕まれている北岡のためか、他のデッキよりもスペックが高めに設計されている。 不治の病という制約が取り払われた今、ゾルダはまさに最強のライダーと化していた。 「貴様ァッ!」 罵声と共にベノサーベルを振り下ろす浅倉。 しかし単調な攻撃故に、回避することは容易い。 横に軸をずらして避けたところで、レイは懐からギガホーンを突き出した。 「おぉっ! クハハ、いいぜぇ!」 二本の角が王蛇に突き刺さり、接触面から火花を散らす。 傍目に見ても相当な威力だと分かるが、この程度で浅倉は怯まない。 仮面の下で狂気の笑いを発し、目の前の仇敵に再び切り込んだ。 浅倉が獰猛な野獣なら、レイは冷酷な機械。 乱雑に繰り出される斬撃を、機械的に回避していく。 そして発生した僅かな間隙を縫って、銃撃や刺突を叩き込む。 だが浅倉が倒れることはなく、動きが衰えることもない。 むしろ動きの鋭敏さは、どんどんと増しつつあった。 「はぁッ!」 そしてついに浅倉の放った一撃は、レイを捉えることに成功する。 今までは回避し続けていたレイは、真上から降ってきた斬撃を受け止めざるを得なかったのだ。 「ハハハハハハハハハハッ!!」 王蛇のベノサーベルとゾルダのギガホーンが拮抗する。 ベノサーベルのAPは3000で、ギガホーンのAPは2000。 数字は絶対ではないが正直だ。 だんだんとレイは押し込まれ、ギガホーンに亀裂が走っていく。 単純な力勝負に縺れ込んだ場合は、やはり浅倉の方に分がある。 「ッ!?」 だが、それはあくまで単純な力勝負の話である。 レイはギガホーンの重心を逸らし、ベノサーベルとの衝突点を角の曲線部分へと持っていく。 力押しに全体重を掛けていた浅倉は体勢を崩し、その隙にレイはギガホーンを勢いよくかち上げる。 するとベノサーベルは浅倉の手を離れ、孤を描くように宙へと投げ出された。 「ぐあぁっ!」 浅倉の脇腹を直撃するレイの回し蹴り。 元から体勢を崩していた浅倉は、転倒して地面に投げ出される。 レイは得物も腕力を要しない銃であり、筋力も特筆するほど優れているわけではない。 だがそれを言い訳にできるほど、彼の復讐は簡単ではない。。 腕力を武器に戦う相手への対処法も、当然彼は編み出していた。 ☆ ☆ ☆ 一連の流れを見ていた次元は、思わず肝を冷やした。 北岡が最強と評した王蛇が、こんなにも呆気なく敗れた。 ゾルダの相手をしていた王蛇が倒れたということは、ゾルダが自由に動ける時間を得たということ。 たった数秒ではあるが、それでもエンド・オブ・ワールドの発動には十分過ぎる。 「次元、あいつを止めろ!」 背後から北岡の声が届く。 五ェ門の治療をしていた北岡も、今の状況のヤバさに気付いたのだろう。 「分かってらぁ!」 詩音に突き付けていた銃口を、即座にレイに向けて引き金を絞る次元。 その隙に詩音が走り去っていくが、もはやどうでもいい話である。 彼が射撃の名手であることは周知の事実だが、その中でも特に優れているのは早撃ち。 0.3秒というその数値は、多くの同業者達に畏怖と尊敬の念を抱かせた。 今の彼が所持している銃は愛用のものではないが、それでも速度が衰えることはない。 レイが転倒した浅倉から距離を取るのを視認した時には、既に銃声は響いている。 銃身から薬莢が吐き出され、銃口から弾丸が飛び出す。 火薬により推進力を得た弾丸は、浅倉が立ち上がるよりも、レイがカードを装填するよりも速い。 ファイナルベントを発動するには、いくつかの行程を踏む必要がある。 これならばレイが装填するよりも早く、銃弾は彼の手からマグナバイザーを叩き落すだろう。 そう、確信していた。 しかし、銃弾がレイに届くことはなかった。 「浅倉威イイイイイイイイイイイイイィィィィィィッ!!!!」 銃弾は浅倉の元に駆けつけたジェレミアの半身に命中し、あらぬ方向へと飛んでいってしまった。 唖然とする次元。 視線の先にいる緑色の戦士が、仮面の下でほくそ笑んだような気がした。 ――――FINAL VENT―――― 認証音と共に、レイの足元の水溜りからマグナギガが姿を現す。 こうなってしまえば、もう止める術など存在しない。 マグナギガの背中にバイザーをセットするレイ。 咆哮とともにマグナギガの両腕が上がり、膝、胸、額の砲門が開く。 エネルギーが全身を駆け巡り、一瞬にして充填が完了する。 「逃げろおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」 轟く次元の声。 引き金を引くレイ。 そして―――― 「デリート」 再び、世界の終わりが訪れた。 次元大介とレイ・ラングレン。 両者とも射撃の名手であることに間違いはないが、総合的に優れているのは次元の方であった。 多くの銃火器の扱いを熟知しているのはもちろんのこと、決定的に違うのは年季だ。 レイは妻をカギ爪の男に奪われてから数年だが、次元はもう数十年は裏の世界に身を置いている。 いずれレイもその境地に辿り着いたのかもしれないが、現状では次元の方が優れていた。 そんな次元でも、一つだけ持っていないものがあった。 それはたった一人の仇敵の命を渇望する、燃え盛るようなどす黒い復讐心。 復讐に囚われているレイだったからこそ、数秒先の未来を操ることができたのだ。 もし目の前に大事な人を殺した仇敵が倒れこんできたらどうするか? 答えはあまりにも単純で明快だ。 例え致命傷を負っていようが失明していようが、地を蹴ってその喉元に喰らいつく。 復讐者の心理を理解していたからこそ、ジェレミアを盾にするという策を画策できたのだ。 そしてその目論見は見事に成功した。 浅倉をジェレミアの視線の先に蹴り飛ばすことで、彼の復讐心を再起させる。 そうすればジェレミアは浅倉を殺すため、自らの盾になる地点に現れると確信していたのだ。 黒煙が晴れ、総合病院の惨状が露になる。 蔓延する火薬の臭い、焼け焦げた地面、崩れ落ちた柱、散乱する瓦礫の山。 一階は完全に破壊され、二階以降にも大きな損害を齎した。 「ぐぅ……うっ……」 そして、その地に立ち尽くす男が一人。 自慢のダークスーツは無残にも焼け爛れ、露出した肌の至るところに火傷が刻まれている。 男は銃火器の名手であり、その扱い方や対処法を熟知していた。 しかしいくら熟知していようと、それらを一斉に向けられればどうしようもない。 たった一人の人間が、戦争の結果を変えることはできないのだ。 「クソッタレ……」 男――――次元大介は意識を手放し、焼け焦げた地面の上に倒れた。 ☆ ☆ ☆ 「あ~~、どうしよう!」 時間は遡り、詩音が病室を出た直後。 一人取り残された奈緒子は、今後の身の振り方を見出せずに喘いでいた。 外から聞こえてくるのは銃声と怒号の嵐。 恐る恐る覗いてみると、日曜の朝の特撮に出てきそうな緑と紫の奴がジェレミア次元と戦っている。 こんな時にコスプレとはいいご身分だと突っ込みたくなるが、彼らの武器は本物だ。 普通の銃や剣も何度か見ているが、決して見慣れてはいない。 目前に迫っている死の臭いに、彼女の恐怖心は頂点に達しかけていた。 (逃げたい、とても逃げたい、でも……) ここで逃げることは、ジェレミアやアイゼルを見捨てるのと同義だ。 そうした場合、二度と彼らは自分を仲間として認めてくれないだろう。 白髪の男に襲われかけた時、身を挺して庇ってくれたジェレミア。 年が近くて話が合い、そして何よりもうにを持っているアイゼル。 それらを簡単に切り捨てられるほど、彼女は薄情にはなれなかった。 (やっぱり……逃げたらまずいか) ジェレミアとアイゼル。 最初は劇団の人かと間違えるような格好で、言っていることもちょっとおかしい。 でも大切な仲間であり、見捨てることなどはできなかった。 (そうだ、応援をしよう!) 彼女に役立つ装備はなく、連中と戦う力もない。 それでも彼らを応援することならできる。 「こんな美人に応援されたら、男どもは元気になってあんな奴らボコボコにしちゃうに違いない、エヘヘ――――」 「ぐああああぁぁぁぁっ!!」 そうして彼女が改めて窓を見た時に、王蛇に切り倒されて悲鳴をあげるジェレミアの姿が視界の中に飛び込んできた。 「なに、これ?」 硬直する奈緒子。 無敵にも思えたジェレミアの敗北が、彼女には到底理解することができなかった。 「逃げよう」 白髪の男や五ェ門と互角に渡り合ったジェレミア。 それよりも強い王蛇は、彼女にとってはもはや別次元の存在。 そんな相手に一般人である自分に何が出来るというのだ。 呑気に応援をしていて、もし人質にでもされたらむしろ邪魔になってしまう。 ならばここは一旦逃げておくことが、自分にできる唯一の事なのではないだろうか。 「そうだ、そうだよ……」 数々の言い訳を自身に言い聞かせながら、後ずさっていく奈緒子。 そうしてエレベーターの扉に背中が触れた時、彼女はこの場から離脱することを決意した。 「はぁ、はぁ!」 決意してからの彼女の行動は早い。 傍に配置されたボタンを押し、エレベーターが来るのを待つ。 だが上昇してくるエレベーターを待てず、彼女は少し先にある階段まで走る。 そのまま一段飛ばしで階段を駆け下り、一階に到着した後は裏口へと向かった。 (これで……これで良かったんだ……) 湧き上がる罪悪感を否定するように、彼女はひたすら走り続ける。 そうしてすぐに見えてくるのは、ガラス戸で閉ざされた裏口の門。 それを視認した彼女は飛び込むように加速し、そしてついに手前まで辿り着く。 ガラス戸は彼女に反応に自動的に開き、外の世界へと手招きしていた。 「…………」 最後の一歩を踏み出すことを躊躇する奈緒子。 ここを抜ければ、安全地帯に逃げ切ったことになる。 同時に仲間を裏切ったことを意味する。 その罪悪感が、彼女の足を病院の廊下に縛り付けていた。 (ここまで来たんだ、もう後には引けないッ!) 目を瞑った奈緒子は、重い足を上げる。 重心を前にずらし、足を地面へと降ろす。 踏み締めた地面の感触は、リノリウムではなくコンクリートのもの。 目を開けると、そこは外だった。 「やった……逃げ切った!」 危機を脱したことに、奈緒子は諸手を上げて歓喜する。 一面に広がる青空に、燦々と照りつける太陽。 心の片隅に罪悪感は残るものの、今はただ生き延びたことが嬉しかった。 「ジェレミアさん、アイゼル……ごめん!」 最後に謝罪を込めて、一度だけ背後に聳え立つ病院を振り返る。 そして彼女の瞳に映ったのは。 「え?」 炎と光だった。 ☆ ☆ ☆ レイ・ラングレンは警戒していた。 エンド・オブ・ワールドの使用は二度目だが、その破壊力には感嘆するばかりである。 (やはり恐ろしい破壊力だ) ヴォルケインに匹敵する破壊力から察するに、本来の用途はヨロイ等への対抗手段だろう。 人間相手に使用するには、この破壊力は強大過ぎる。 それでもレイは警戒していた。 エンド・オブ・ワールドは絶対的な破壊力を持つが、ジェレミアや浅倉に対してどこまで通用するか分からない。 特に浅倉は一度エンド・オブ・ワールドをやり過ごしている。 盾を召喚して防いだのか、ミラーモンスターの援護で生き延びたのか。 詳細は分からないが、浅倉が生き延びたという事実は無視できない。 だからこそ彼は、ジェレミアをあそこの誘導することで対抗策を講じた。 ジェレミアは次元の弾丸からの盾であると同時に、浅倉の動きを妨害する拘束具でもあった。 ライダーの力を引き出すには、カードの装填が必須である。 だが装填には数秒の時間が必要であり、ジェレミアを差し向けることでその時間を奪った。 いくらライダーといえど、カード無しでは対抗することはできないだろう。 だが、それでも彼は警戒を解かなかった。 ジェレミアや浅倉はまだ息があるかもしれないし、顔を見られた以上この場にいる人間は皆殺しにする必要がある。 完全に死亡しているのを確認して、もしまだ生存しているなら止めを刺す。 念には念を入れて、そこまでしておく必要があるだろう。 そう考えて、レイは一歩ずつ歩き出す。 彼の身体からは、変身時間の終了を示す細かい粒子が立ち上っている。 もうあまり時間が残されていないが故に、彼の歩調は速い。 あくまで冷酷さを保ちつつ、立ち込める黒煙の中に突入した。 その時である。 黒煙が揺らめくと同時に、何者かが飛び掛ってきた。 「ッ!?」 それに気付いた時には、既に相手の身体がレイの身体にのしかかっている。 黒煙で視界が不鮮明だった故に、相手の動きを読むことができなかったのだ。 「邪魔だ!」 もたれかかってきた者を跳ね除けようとするがなかなか離れない。 膝蹴りを相手の腹に叩き込み、起き上がったところに手刀を命中させる。 ここでようやく相手の身体は吹き飛び、数歩よろめいた後に地面へと伏した。 危機を脱したことで、一先ずは安堵するレイ。 だが、ここで彼はもっと周囲に気を配るべきであった。 何故なら彼が油断する一瞬を、虎視眈々と狙う者がいたのだから。 「ぐあぁっ!」 黒煙の中から伸びる拳。 そこには一瞬の間すらもなく、反応した時にはもう遅い。 拳は彼の腹部に深々と突き刺さり、そのまま数メートルを弾き飛ばされる結果となった。 「ぐっ……うぅ……」 コンクリートの地面に激突するレイ。 それは重厚な鎧に身を包んでいても激痛であったが、彼も生半可な鍛え方はしていない。 すぐに立ち上がり、急襲された方向へと視線を向けた。 ほぼ同時期に黒煙は晴れ、そこにいたのは―――― 「キ……サマ……」 全身に火傷を負い、地面に平伏すジェレミアと。 「あぁ……」 傷一つない状態で、その場に立ち尽くす王蛇の姿だった。 「何故……」 今まで数々の修羅場を潜り抜けていたが、この時ほど戦慄した瞬間はなかった。 最初から王蛇というライダーには、いかなる攻撃も通用しないのではないか。 たった一瞬だけ、そんな荒唐無稽な考えが頭を過る。 だが不自然なほどに火傷の多いジェレミアを見て、ある恐ろしい仮定が思い浮かんだ。 かつて浅倉が初めてライダーに変身した時。 初陣の相手は北岡の変身するゾルダであり、その時にもエンド・オブ・ワールドは発動された。 今と何一つ変わらない状況で、その時も彼が負傷することはなかった。 近場にいた仮面ライダーガイを盾にすることで、爆発の衝撃から身を守ったのだ。 「私を……盾に……」 「近くにいた、お前が悪い」 そう、浅倉はジェレミアを盾にして、エンド・オブ・ワールドをやり過ごしたのだ。 「ぐっ……おおおぉぉぉッ!」 必死に立ち上がろうとするジェレミアだが、身体が言うことを聞かない。 強固な爆発への耐性も、世界に終焉をもたらす破壊を前には無意味だったのだ。 浅倉は彼を盾にした後、突き飛ばしてレイの動きを封じる。 そして隙の発生したレイに、鉄拳を叩き込んだのだ。 「邪魔だ」 地面で蠢いているジェレミアを、浅倉は容赦なく蹴り飛ばす。 ジェレミアは無抵抗のままそれを受け、そのまま瓦礫の山に叩き付けられる。 短い呻き声を上げた後、ジェレミアの意識は暗闇の中に沈んでいった。 「フン」 そんなジェレミアに一瞥もくれず、目の前のレイを見据える浅倉。 バックルから一枚のカードを取り出し、それをいつの間にか握り締めていたベノバイザーに装填した。 ――――FINAL VENT―――― その瞬間、空中から浅倉の足元にエビルダイバーが飛来する。 浅倉は素早くそれの背に飛び乗り、高速で駆け出した。 エビルダイバーのファイナルベント――――ハイドベノン。 それは標準的な威力であったが、先の戦いでボルキャンサーを捕食したことにより大幅に威力が向上している。 ライダーとはいえ、まともに喰らえば致命傷は避けられないだろう。 ――――GUARD VENT―――― マグナギガの胸部を模した盾が召喚され、ゾルダの腕に装着される。 この盾は巨大な上に肉厚。 腰を落として重心を低くし、打ち負けぬように力を込めるレイ。 疾風のように空中を駆け抜け、目前の敵を蹂躙しようとする浅倉。 そうして、両者は衝突する。 「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」 狂ったように笑う浅倉。 同時に凄まじい衝撃が襲い掛かり、レイは数メートルほど押し戻される。 足を置いていた地面は抉れ、足の裏が高熱に包まれる。 超加速したエビルダイバーの突進は、一瞬でも気を抜いたら打ち破られかねない。 それでもレイは必死に体勢を保ち、盾を全面に押し出し続けた。 「ぐ……おおおおぉぉぉぉぉ」 肩が砕け、腰が割れ、膝が潰れる。 そう錯覚させるほどの激痛が、レイの全身を苛む。 意識を失いそうになる彼を支えたのは、カギ爪の男への復讐心だった。 ここで死ぬのならば、どのみち復讐など叶わぬ夢。 これからも数多くの障害が行く手を阻むのだろうし、浅倉も所詮はその一人に過ぎない。 だから、ここで負けるわけにはいかない。 「おおおおおぉぉぉぉッ!!」 衝突してから経過した時間はせいぜい十数秒。 それでもレイにとっては、無限に等しい時間に思えた。 だが、それにも終わりが訪れる。 ギガアーマーに亀裂が入り、一瞬のうちにそれは全体に広がる。 「ぐあぁ!」 そして、盾は砕けた。 レイは吹き飛ばされ、地面へと打ち付けられる。 しかし―――― 「チィッ!」 同時に浅倉とエビルダイバーも弾き飛ばされる。 筆舌に尽くしがたい激痛ではあったが、それでも致命傷には至らなかった。 レイはすぐに立ち上がり、そして動くことができる。 最後の最後で彼の意地が勝り、相殺という形に持ち込むことができたのだ。 (これで……) 踵を返すレイ。 もう変身時間は秒単位でしか残っていないが、浅倉との距離は十メートルほど開いている。 銃で牽制しつつ、民家に逃げ込めば生身でも数分は稼ぐことができるだろう。 何故なら―――― (もう奴にファイナルベントは残されていない!) そう、勘違いをしていたからだ。 ――――FINAL VENT―――― 無機質な機械音声が響いた時、レイが見たのは想像だにしない光景だった。 重厚な雰囲気を醸し出す鋼色のサイに搭乗し、こちらに切りこんでくる浅倉の姿。 既にファイナルベントは消費したのではないのか。 そもそも王蛇の契約モンスターは赤紫色のエイではないのか。 様々な疑問が浮かぶが、その解答が示されることはない。 十メートルの間合いは一瞬で消失し、気がつけば金色の角が目前に迫っていた。 レイの致命的なミスは、王蛇の詳細な能力を知らなかったことだ。 彼らは今までに三回遭遇していたが、その時に王蛇が使役していたのは全てエビルダイバーであった。 中途半端にライダーの知識を身につけていたが故、複数のモンスターと契約できるという考えに至ることすらできない。 三体のモンスターと契約した王蛇という、例外中の例外の存在に気付くことができなかったのだ。 メタルゲラスのファイナルベント――――ヘビープレッシャーが炸裂する。 錐揉み回転しながら空中を跳ね飛ばされ、そして地面に激突するレイ。 それでも勢いは殺し切れず、引き摺られるように地面を転がる。 外塀に衝突したところでようやく停止し、同時に変身が解除されてレイは仮面ライダーから人間へと戻った。 ☆ ☆ ☆ 「うぅ……」 閉ざされた世界。 爆発により発生した光が音が、北岡から視覚と聴覚を奪っていた。 それを皮切りに、他の五感もどんどんと失われていく。 蔓延する火薬と焼け焦げた臭いが嗅覚を。 残り火から発せられる肌を刺すような熱気が触覚を。 口内に侵入した砂利が味覚を。 「……生きてるのか?」 だが、それだけだった。 爆風で吹き飛ばされてはいたが、致命に至るような傷はない。 全身のあらゆる箇所が痛むが、それでもすぐに立ち上がることはできた。 だんだんと五感が回復してきているのも実感することができる。 「北岡さん、五ェ門さん、アイゼルさん……」 「三人とも……大丈夫?」 耳を凝らすと、つかさやアイゼルの声が聞こえる。 どうやら二人とも無事なようだ。 (おかしい……) 命拾いした北岡が感じたのは、不可解な事態への疑問。 エンド・オブ・ワールドをまともに被弾して、生身の自分達が無事でいられるはずがないのだ。 「ん……?」 回復してきた視力が、彼の目に影を映す。 自分達の前に立ち塞がるように、いや、自分達を何かから守るように。 大きな剣を、構えながら。 「五ェ門さん……?」 震えるような声で、つかさが呟く。 ここでようやく北岡も気付いた。 一緒にいたはずの五ェ門の声が、一切聞こえてこないことに。 「五ェ門!」 北岡が叫ぶのと同時に、崩れ落ちる影。 顔面を蒼白に染めながら、北岡はその影の元へ駆けつける。 影の正体は、やはり石川五ェ門その人。 デルフリンガーを手放し、血溜まりの中に沈んでいた。 「そんな……五ェ門さん……」 つかさの瞳から涙が溢れ始める。 おそらく北岡と全く同じ結論に達したのだろう。 五ェ門は自分達を守るため、エンド・オブ・ワールドの盾になった。 だから自分達は生き残ることができたのだと。 北岡は声が出なかった。 五ェ門が死んだのも、元を返せば自分がデイパックを置き忘れたことに原因がある。 カードデッキを奪われなければ、エンド・オブ・ワールドが発動されることはなかった。 詩音に叩き付けられた言葉が、北岡の脳内で何度も再生される。 浅倉の妨害に遭ったせいで助けに行けなかったと言い訳した。 しかしあの時、自分は最初から悟史を助けに行く気などなかった。 五ェ門が勝手に向かったから、嫌々自分も付いて行っただけだったのだ。 (人殺し、か) 当初は否定していたが、今は否定する気力が湧かない。 滅茶苦茶なはずの彼女の言葉が、正当性のあるものに聞こえてならなかった。 「死んじゃいねーよ」 その時だった。 絶望に項垂れるつかさを否定するように、自己嫌悪に陥る北岡を否定するように。 デルフリンガーが言葉を紡ぎ始める。 「どういうことよ? 五ェ門はどう見てももう……」 「言葉のまんまだ、よく見てみろって」 デルフリンガーの言葉を訝しみつつも、五ェ門に視線を向ける北岡。 腹部の傷が開いたのだろうか、うつ伏せで倒れている五ェ門の身体からは血液が流れでている。 「五ェ門さん……火傷がない!?」 一番最初に気付いたのはアイゼルだった。 あれだけの大爆発の盾になったにも関わらず、五ェ門の身体に火傷の痕はない。 さらに言えば、腹部の裂傷以外に新たな負傷もなかった。 「一体どうなってるんだ?」 五ェ門が生きていたことは素直に嬉しいが、やはり疑問は付きまとう。 エンド・オブ・ワールドに巻き込まれて、無事でいられるはずがない。 「少し……ほんの少しだけだが思い出したぜ この俺は魔法を吸収する力があったんだ! この土壇場でその力が覚醒しやがったんだ!」 はしゃぐように語りかけてくるデルフリンガー。 だが北岡は、彼の言葉をいまいち信用することができなかった。 「エンド・オブ・ワールドが魔法だって? そんなことあるわけないだろ」 彼の言葉を総合するなら、エンド・オブ・ワールドを魔法として吸収したことになる。 だがエンド・オブ・ワールドはあらゆる兵器を一斉発射する攻撃であり、魔法とは正反対の科学的な存在のはずだ。 「魔法って言っても色々あってな、ドラゴンのブレスとかも俺の世界では魔法と呼ばれてる」 「おいおい、お前はドラゴンの吐息とミサイルが同じ物だって言うのか?」 「じゃあ逆に聞くけどよぉ、あのでかい牛野郎はミサイルを発射した後どうしてんだ?」 質問に質問で返すな。 普段の彼ならこう返していただろうが、今は言葉を発することができなかった。 デルフリンガーの言葉に、閉口するしかなかったからである。 「俺にはお前さん達の世界の武器のことはよく分からねぇ でもああいう感じの武器は、一度撃ったら弾を込め直さないといけねーんだろ? だったら、あの牛野郎はどうやって弾を込め直してんだ?」 言葉に詰まる北岡。 デルフリンガーの指摘は、非常に的確なものだったからである。 彼もゾルダに変身した際は、何度もエンド・オブ・ワールドを発動した。 しかし弾薬の装填を行ったことはないし、マグナギガが自分自身で装填しているわけがない。 ミラーワールドから脱出して、気が付いたら装填されている。 そう表現するのが、最も適切だろう。 カードデッキのシステムは、間違いなく神崎士郎の開発した科学である。 が、その大元となっているミラーモンスターは、どちらに分類されるのだろうか。 「鏡の世界を自由に行き来する生物……こいつを魔法と呼ばず何と呼ぶんだ?」 マグナギガが銃火器を発射するから誤解していた。 冷静に考えれば、ミラーモンスターはファンタジー側の存在である。 それでも否定したくなるが、五ェ門が生き残った以上はデルフリンガーの言葉を肯定せざるを得ない。 「ちょっと難しい話だったけど……とにかくみんな無事で良かったじゃないですか!」 黙り込んだ北岡を案じてか、つかさが声をかけてくる。 爆撃に巻き込まれた直後であるにも関わらず、まるで緊張感のない声色。 その声を聞いていると、些末事を気にするのが馬鹿らしくなってくる。 理屈は抜きにして、全員無事でいたのだからそれでいい。 そう考え、北岡は自嘲気味に肩を竦めた。 「にしても、ホントにこの兄ちゃんはすげーよ」 「ええ、あんなボロボロだったのに私達を守ってくれるなんて……」 「確かにそれもすげーけどよ、兄ちゃんが凄いのはそれだけじゃないんだぜ?」 「……どういうこと?」 「俺の力はあくまで俺自身に魔法を吸収すること 俺っていうバケツの中に魔法という水を注ぐようなもんだ、限界を越えれば当然溢れちまう」 魔法に疎い面子がいるせいか、デルフリンガーは喩えを交えて説明を始める。 「全部じゃないとはいえ、あの爆発を完全に吸収できたかどうかは分からない」 「でも俺たちは生き残って……」 「そこが兄ちゃんのすげーところだよ、あの兄ちゃんはな、殆どの攻撃を自分で斬っちまいやがった」 「あ、あの爆発を!? 信じられない……」 マグナギガから数々の兵器が発射されてから、着弾するまでの数秒。 その間に五ェ門はデルフリンガーを巧みに操り、爆発する前に斬り落としていたのだ。 切り損ねた弾やレーザーは、デルフリンガーが自身の力で吸収する。 そうすることで、五ェ門はこの場にいる全員守ることに成功したのだ。 「ま、一番すげーのはこの俺様だけどな! さっきから誰も突っ込んでくれねーけどよぉ、錆がとれてピッカピカになったんだぜ!」 豪快に笑い出すデルフリンガー。 彼の言う通り、錆塗れだった刀身はいつの間にか新品のように光り輝いている。 鈍らだった剣が新品のようになったのは、非常に大きな進歩だろう。 きっと爆発を防ぐ際にも、大いに貢献したに違いない。 だが今は五ェ門を労る流れであり、デルフリンガーの発言はいわゆる空気の読めないものに当たる。 つかさだけは呑気に持て囃しているが、残りの二人は冷めた目付きで彼らを見続けていた。 時系列順で読む Back 人形劇 Next 夢の終わり(後編) 投下順で読む Back Calling Next 夢の終わり(後編) 100 云えない言葉 次元大介 105 夢の終わり(後編) 石川五ェ門 北岡秀一 柊つかさ 浅倉威 山田奈緒子 ジェレミア・ゴットバルト アイゼル・ワイマール レイ・ラングレン 園崎詩音
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あたし立花つぼみ、小学生5年生の11歳の女の子です。 今、保健の授業でビデオを見てるのですが、あの時の事を思い出してしまって、ちょっと胸がドキドキしてしまいます…。 あの事…それは夏休みの出来事でした、あたし…見ず知らずのお兄さんとエッチしちゃったの。 だから保健のビデオで説明しているのがよく解ります、あのお兄さんもあたしの膣の中に おちんちんを挿れて、精子というのを出してたから。 幸いにも、あれから特に体に変化はありませんでした、ビデオでも簡単には妊娠しない事を 言っていますけども、あの時は本当に赤ちゃんができないか心配だったから。 「あ…」 吐息が漏れます…実はあれから変わった事もありました、それはあたし… オナニーというのを覚えてしまって、はまってしまったのです。 胸や股を触ると気持ちよくてたまらなくて、特にエッチな事を考えてしまうと…股の割れ目の奥が 熱くなって疼くようになってたの、だから自分で触って弄って疼きを落ち着かせていたのです。 そして今も…保健のビデオの説明を聞いてる内に、エッチな気分になってしまって、 ひっそりと机の下で、シャーペンの後ろの方でパンツの上から弄っていました。 こんなところ…クラスのみんなに見られたら笑われちゃうだろうな、でも止めれないのでした。 そういえば、あたし…最近エッチな事ばかり考えているような気がする、 今日の朝も根本君の股間を見ていたし…なんだか変態さんになってきてるよぉ~ でも私だけじゃないかも、最近は友達同士でもそんなエッチな会話が続きます、 なんか性知識に興味津々て感じで…でもあたしみたいに実際にエッチしちゃった子は居ないよねきっと。 「皆さん、最近学校の近くで怪しい人が出没してるそうですので気をつけて帰って下さいね」 それは帰りの時、先生がクラスの皆に言った事です、どうも学校の近くで女子に度々声をかけてくる男の人がいるそうです。 別に何をしているわけじゃないみたいなんだけど…怪しいから気をつけろとの事でした。 そしてその日の放課後の事です、あたしは視聴覚室にハンカチを落としてしまったらしくて、取りに戻ってました。 すると…そこで根本君とばったり、出会ったのでした…その上に一緒に探してもらっちゃて… なんだか二人きりで一つの部屋に居る状況にドキドキしてました。 実はあたし…根本君に他の男子とは違う意識を抱いていたのでした、でも…もしも根本君に 他の男の人とエッチしちゃった事がバレたりなんかしたらと思うと…少し胸が痛むのでした。 ガッチャン! 「あ…」 と考えている内に、外から鍵がかけられてしまうのです、守衛さんが誰も居ないと思ってしまったの! つまり閉じ込められてしまったのでした…慌ててしまったけども、ここは一階だから窓から出ようという事になって、 外を覗きます、するとそこに見えたのは友達の三枝君と八重ちんでした。 助かったと思って、二人に助けを呼ぼうとした私達なんだけども…そこで見たのは二人のキスシーンだったの 「ん…いいか?」 「うん…いいよ」 すると八重ちんと三枝君は、茂みの方へと移動したの、そこはここ視聴覚室からは丸見えなんだけど、 他からは死角になっていてあまり目立たない場所でした。 「あ…んっ…」 隠れるようにそこへ行くと、二人はまたキスしてる…ううん、それだけじゃないの三枝君は八重ちんの胸を触っているみたい。 「どうかな…こういうの初めてだから、よくわからなくて…」 「んあっ…大丈夫、なんだか…その…気持ちいいから」 八重ちんの顔…凄く真っ赤、三枝君もだけど…どことなくぎこちない二人なんだけど、なんか気持ちよさそう…。 「なぁ…そろそろいいか?」 「…うん、なんだか怖いけど…いいよ」 なんだか先よりも顔を赤く染めて目を合わすと、三枝君はズボンをパンツと一緒に下ろして下半身を裸になりました。 すると八重ちんもズボンを下ろしてパンツを見せて…そのパンツを今度は三枝君が下ろすの。 少し薄く毛が生えている八重ちんの股が見えました、いつも冷静な三枝君はそれを見て動揺してるみたいに見えます。 そして…お互いに首を縦に振ると股間を合わせていくの…。 あの硬く起たせたおちんちんを…八重ちんの中に挿れていくのでした。 「なぁ…あいつら何をしてるんだ?」 「エッチな事…」 「えっ!?」 あたしは、ドキドキしちゃってます…あたし以外にもエッチしちゃう女の子が居た事に驚いてしまって、しかもそれが友達なんだもん。 でもちょっと安心しちゃった、すると八重ちんの表情が険しくなったの…あ、繋がった股から血が出てる… それは初めておちんちんを挿れた時と同じでした…八重ちんもこれが初めてなんだ。 「痛っ!!」 「おい、大丈夫か!…そんなに痛いのなら、止めようか…なんか凄く血が出てきてるし」 「まって…初めてはこれが普通だから…あたしなら平気、続き…しよ」 三枝君は何か言いかけたけど、溜息をつくように息を一つ吐くと、意を決して八重ちんにキスをしました… そしてそのまま腰を動かして、八重ちんの奥へとおちんちんを深々と挿れていくの。 八重ちんの表情が激痛で歪みます…やっぱりあの体が裂かれそうな痛みを感じているんだ、 でも…それならどうしてあんな…幸せそうな眼をしてるんだろ…。 あたしは信じられませんでした、あたしの初めての時は地獄のような痛みでただ泣き叫ぶしかできなかったのに… もちろん色々と状況は異なっています、初めての相手のお兄さんは、あたしの事は気にもせずに 乱暴に掻き回していたし、おちんちんのサイズも大人と子供の差で違うし…。 でもやっぱり、好きな人が相手というのが一番の差かもしれない…。 「三枝君…あぁ…もっと動かしてもいいよ…」 「八重…うっ…おまえの気持ちいい…」 三枝君は八重ちんの事を思って優しく抱いて動かしているみたい… なんだろ二人の見てたらあたしも…股のところが疼いてきてる。 「うっ…俺…もう…!」 「えっ…あぁ…あぁ!」 三枝君の身体が大きく震えました…これって射精しちゃったのかな? 「あぁ…熱いのが入ってきてる…三枝君…」 「八重…んっ」 そしてキス…なんかあたし、ぽーっと見ていました、気づけば股間が疼いて…濡らしちゃってた、やだ恥ずかしいな。 ふと視線を感じて横を振り向くと、根本君がこっちを見てたの…いつから?? 心臓がドキドキしてくる、まさか気づかれてないよね、こんな恥ずかしいところ… 俺…根本大樹は今、とんでもないのを見ていた、まさか葉と山吹のあんなとこを見てしまうなんて… いくらなんでも早すぎるだろ!小学生だぞ俺ら!! 知識としては、色々と知ってはいるけども…まだ縁の遠い話だと思ってたのに。 お陰で、今…凄く気まずい感じだ、一緒に視聴覚室で閉じ込められた立花は二人の様子に魅入っている、 あんなのを見たから、この二人きりの状況は激しく意識してしまう。 元々、立花に俺は何かと意識していたとこだったし…気づけば俺は立花の姿を見たたまま眼が離せなくなっていた。 あの赤く恥らいながら、興味津々としている表情を見ていると、胸がドキドキして止まらない… それに先から立花は息が荒くなっているような気がする。 体を震わせて、別に調子が悪いというわけじゃないみたいだけど…なんかそう、エッチな雰囲気なんだ。 だから魅入っていた…こんな風に女子を見た事は今まで無かったのに…なんでだろ? そんな事を思っていたら、立花が急にこっちに振り向いて、俺と視線が合ってしまう…なんか激しく気まずい気分だった…。 「…そ…、そろそろ行ったかな、あいつら」 俺らは二人が居なくなっているのを確認して、窓から外に跳んで出た、ただその時に立花が体勢を崩してしまって、 地面に落下した時に、受け止めた俺を下敷きにする格好になってしまう。 ムニュ… ふと顔に柔らかな感触を感じていた…、それは顔の上に乗っていた立花の胸の感触… ドッキーン!激しく胸が高鳴った、顔が凄く熱くなっていく…その柔らかくて温かい感触の心地良さに反応するように… 俺は咄嗟に離れていた、そしてお互いに眼が合う…何だか引き寄せられそうだった、 離れたと言っても顔が近い距離…もう少し近づけば、そのままあいつらのようにキスできそうなくらい… 俺はそこまで考えて、ハッと我に帰った…何を考えているんだよ俺は… そんな自分に急に恥ずかしくなって…俺は逃げるように立花を残して帰ってしまってたんだ。 あたし、すごく胸がドキドキしてます、先から色々な事が立て続けにあって心臓が疲れそうな程です。 だって…あたし、もうちょっとで根本君とキスしてたかもしれないの。 その根本君は、もう家に帰ってしまって居ないけど…あたしは胸が落ち着くまで、その場所に居ました。 「根本君、おちんちん起ってた…」 受け止めてもらった時に感じた足の太ももの感触…それを感じた時、心臓が飛び出しそうな程でした。 そうだよね、男の子だもん…あのお兄さんと一緒で三枝君とも一緒…女の子に挿れるアレが付いてて当然なのに こんなに驚いちゃった、でも起っているって事は興奮してたからだよね…何に?三枝君と八重ちんのエッチを見て? それとも…あたしと一緒に居たから…なんだかそう思ったらまた胸がドキドキして歩けなくなりました。 ようやく落ち着いて、上履きから靴に履き替えて、あたしは校門に向かいます。 その時です、忘れたいのに忘れられない…あの人の声が聞こえたのは 「あれ?つぼみちゃんじゃないか!」 「えっ…!?」 な…なんで?あたしは信じられない思いで一杯でした、そこで会ったのは、あの…エッチしちゃったお兄さんだったのです!? 「奇遇だな~ここの小学校に通っていたんだね」 「どうして…お兄さんがここに?」 後ずさりするあたし…だってなんか怖かったから、どうしてあたしの通ってる学校の前に居るの? 「いやいや本当偶然だよ偶然…別に以前に会った時に、カバンの中を覗いて…この学校の名前を見かけたからじゃないよ」 「あっ…」 あたしはドキっとしちゃいます…そいえば持ち物の中に学校の名前が書いてあるのがあったけど…見てここまで来たの? 段々と怖くなってくる…ここにまで来て待ち伏せするなんて、そうだ早く離れないと…でも足がすくんでしまう…動けないよ 「どうしたのかな、そんなに可愛く震えちゃって…もしかして期待してるのかな?」 「えっ…きゃぁ!?」 すると、お兄さんはあたしを抱きしめたのです…とっくに下校時間は過ぎてるから周りにはもう誰も居ません。 「やだ離して下さい!」 「つれないな~あんなに愛し合ったのに、ここに僕のを銜えてさ」 「ひやぁ!?」 体がビクッと震えます、あたしの…スカートの下に手を入れてパンツの上を触ってきてる…ここ外なのに… 「あれ?なんだか濡れてないか…膨らんだ割れ目の箇所がぐっしょりしてるよ」 「あうぅ!」 だけど…どうして?体が熱くなってきてる…胸がドキドキしてるし、こんなの変だよ…どうしちゃったのあたしの体?? 「やっぱり期待してるんじゃないか…また僕とエッチな事がしたいんだね、うれしいな~」 違う…もう好きじゃない人とエッチしたくないよぉ、そう頭で思ってるのに…するとお兄さんは更にあたしの股を触ってくるの。 パンツを下ろして、直接指であたしの割れ目に触れている…弄ってくるの 「あっ…いやぁ…はぅぅ!!」 またビクビクとした感覚が頭に響くの、それはあたしが自分で弄った時とはまるで違う勢いだった。 服の上から胸も触ってきて、顔を近づけて頬を舐めてくるのです。 「いい匂いだな~やっぱり子供はいいよ、柔らかくて小学生の未発達な肌は最高だ!」 「あうぅぅ…いやぁ~~!!」 あたしはこの人の不気味さにたまらずに悲鳴をあげるのでした… 「ひゃう…あぁう…はぁぁ…あんっ…」 でもそんな私の思いとは別に体は違う反応を示します、激しく気持ちよさを感じてる 胸が熱い…乳首のところがツンツンと痛いような感じがする…なんか硬くなって起ってるみたい 股間のところも中が疼いて…まるで漏らしたように濡れてるのがわかります、濡れた所が涼しくなってるから でも熱いの…お兄さんに弄られ続けてあたしの身体…どんどんおかしく変になっていっちゃう、怖いよ… なんか、あたしの身体じゃないみたい…頭もボーっとしてきて段々と何も考えれなくなっちゃうの。 「ちっちゃいおまんこが、こんなにぐっしょり濡れてるよ…ん…おいしいな~つぼみちゃんの愛液の味~」 お兄さんは股間を舐めてる…汚いのに、おいしそうに飲んでる…すると舌を中に挿れて掻き回してくるのでした 「ひゃぁぅぅ…やだ…あぁ~~~っ…」 中を吸ってまた舌を掻き回していく…その度に全身に激しい痺れるような気持ちよさが伝わっていくの。 そして…あの頭が真っ白になる感覚がきちゃいました。 「あんっ…あぁぁぁ~~~~~~~っ!!!」 全身が激しく痺れて目の前が白く霞んでいくの…そして、一気に力が抜けていきました。 「はうぅ…ダメッ…あぁ~!!」 プシャァァ~~~~~~!! 「うおぉ!?ん…あぁう…」 そしてあたし、またお漏らししちゃった…でも驚いたのはそのあたしのおしっこを、お兄さんが飲んでいる事でした! 「ん…はう…おいしいな~つぼみちゃんのおしっこ」 やだ…あたしは顔が真っ赤になって恥ずかしくなりました、あたしが飲んだわけじゃいけれど… あんな…おしっこを飲むなんて信じられないよ! でもお兄さんは喜んでいるの…そして力が抜けたあたしの体を抱きました…もうあたしは抵抗できなかったのでした。 「イっちゃたのか、さて…いつまでも外じゃ流石にヤバイか、おっ!窓が開いているじゃないか、ラッキー!」 あたしの体ををかついで、何処かに移動しています…呆然と通り過ぎる景色はまるで時間を巻き戻しているみたい… それもそのはずです、だって…お兄さんがあたしをかついで窓から侵入したのは、あの視聴覚室なんだもん。 「ここなら、声をいくら出しても周りには聞こえないしね」 そう言って地面の上に寝かせられるの…そこはさっき根本君と居た場所でした。 お兄さんは、ズボンを下ろし中からおちんちんを取り出しました…もしかしてまた!? 「いや…もういれちゃだめぇ!!」 あたしは叫びました…この前の時の事を思い出して、あの痛くて辛かった地獄のような時を…もうあんなの嫌だった。 好きな人となら我慢できるみたいだけど、お兄さんとあたしは違います。 「ここまできて止めれると思うかい?覚悟決めて、いくよ…」 あの時と同じくお兄さんは、あたしの股間の所におちんちんを近づけてきます…ふとその時にいいアイディアが浮かびました。 「そうだ、おまわりさん…おまわりさんに言いつけます!先生にも言いつけますよ!」 そうだった…今まで怖くて頭が混乱してて考えれなかったけども、大人に言いつければよかったんだ。 そうすればお兄さんは、あたしにこれ以上は何もできませんよね、現にお兄さんは舌打ちをして表情を歪めます… でもそれは一瞬の事だったのです。 「ふぅ~ん…それじゃぁ、つぼみちゃんはちゃんと説明できるんだね、僕にされた事を言えるんだ?」 「えっ?」 「僕にエッチな事を色々されたって…きっと警察は詳しく聞いてくるよ~おちんちんを挿れてどう感じたとかね」 あたしは、血の気が引く感覚に襲われました…その状況を頭に思い描いてたら、何て恥ずかしい事なんだろうと思って。 「それに親にバレてもいいのかな~きっと心配するだろうな、ショックを受けて倒れてしまうかも」 それを聞いて、あたしはハッとなりました、もしも妊娠中のお母さんがこの事を知ったら…この間も流産しかけたのに また苦しんで倒れて、今度こそ中の赤ちゃんが死んじゃうかも…そんなのは嫌! 「駄目…お母さんには知られたくないよぉ~!!」 あたしは泣きかけていました…そうなるくらいなら、あたしはどうなってもいい… 「それじゃ僕達だけの秘密にしなきゃね…じゃぁ覚悟はいいね」 あたしの浅はかな抵抗は無駄になりました…もうこれ以上は抵抗する気は起きません…もうあきらめちゃった。 「はい…」 お兄さんは薄っすらと笑うと、いよいよその固くなったおちんちんを、あたしの割れ目の奥の中へ入ってきます…。 あたしはまたあの引き裂かれるような痛みに襲われるのかと、ビクビクしていました…でも 「あ…あぁ…え?あぅぅ…」 それは思ったよりも痛くありませんでした、少し肩すかしされた気分な程に… もちろん少しは痛いよ、内側がめくれそうで…中から圧迫されて苦しいけれども、以前ほどじゃありません…むしろそれより 「はぅ…あぁ…何…あぁぁ…これぇ…あぁ!」 痛みと違う別の感じ…胸や股を弄った時のような感覚をもっと強くさせたような… 頭が真っ白になっちゃう感覚…体が熱くなって電流のようなのが流れていくような気分なの。 「おっ、なんだ…すっかり感じているじゃん!気持ちいいんだね~」 「あぁ…き、気持ちいい…?これが気持ちいいの…」 そうなの、あたし…おちんちんを挿れられて、掻き回されて気持ちよくなってる! 前はあんなに痛かったのに…今度は逆に激しく気持ちよく感じているなんて…信じられなかった。 「こんなに僕のを銜えて感じて…こんなエッチな小学生はビデオでも見た事ないぞ」 するとお兄さんは、もっと力強く突いてくるの、先がお腹の奥で当たっている感じがしてくるの 同時に激しい衝撃が頭に響きます…また頭が真っ白になりそう…。 「膣内もこんなに締め付けてくる…凄く狭くて挿入させるだけでも大変だけども、ヌメッとしたのが絡んで気持ちいいなぁ~」 そんな風に感想を口走って、中へとおちんちんの出し入れを繰り返していくお兄さん… 「あぁ~!ふあぁ…あぁん…いやん…もう…あたしぃ…っ!!」 何度も中を掻き回されて、あたしは気持ちよさが爆発しそうになっていたの…そう頭が真っ白になっちゃうあの気分… 「イキそうか?僕もだよ…溜まりに溜まったのをようやく解き放てそうだ!」 お兄さんも同様でした…でもお兄さんの場合はちょっとわけが違います。 「つぼみちゃんの膣内にたっぷりミルクを…精子をプレゼントしてあげるからね」 それは精子という赤ちゃんの素をおちんちんから出す事です…あたしはもう赤ちゃんができる身体になってるの、 前はそんな事を知らなかったお兄さんに、たくさん注がれてしまって、あの後は凄く不安な日々が続きました… 「だ…駄目!中に出されたら…授業で言ってたもん、赤ちゃんできちゃう…」 「あれ?もしかして…きちゃってるのかい?」 「は…はい…」 あたしは恥ずかしいのを我慢して言いました、本当の事を言ったらお兄さんは中には出さないだろうと思って… 「へぇ~最近の子は成長が早いって聞くけど本当なんだな…でも、それはそれで萌えるよな」 「え!あぁ…っ!!」 ドクゥ!! ところがあたしの期待は無残に散りました…お腹の中であの絶望的な衝撃が起こります。 ドクドクドクって流れ込んでいる…嘘…また中で…膣の中で精子を出されちゃった…どうして… 「ふぅ~…女の子を孕ましてしまうかもしれないという、このドキドキ感もいいよね~より支配した感じにもなるし」 お兄さんは後の事なんか考えようとしないとでも言っているようでした、まだお腹の中に熱いのが注がれているのがわかります。 「あぁ…いやぁぁ…うぅぅ…熱いよぉ…っ」 前は大丈夫だったけど…今度も大丈夫という保障は無いのに、ただあたしは絶望的な思いをするしかできませんでした。 ようやく出し終えたお兄さんは、下からおちんちんを抜き出します…すると、白いのが溢れてきました。 それはお兄さんの精子…これがまだ一杯お腹の中に残っているんだ…赤ちゃんの素がたくさん中に…。 「はぁはぁ…出した出した、でもまだこれで終わらないよぉ~」 「えっ…嘘っ、またぁ…あぁぁ…!!」 するとお兄さんは、またあたしの中におちんちんを挿れてくるの、更に顔を手で持つと唇を重ね舌を口の中に挿れてくる… 「んん…ぷふぁ~っ!本当…二度目てのが信じられないよ、もしかしてあれからオナニーして練習してたのかな?」 「それは…あぁんっ!」 「本当の事を言ってみてよ、そうじゃないと…こんな淫らな小学生は居ないよ普通?」 またキスしてくる…八重ちんがしてたようなのじゃない激しいキス… 「んんぁ…はい…寝る前と朝起きて…あとたまに学校で…あぁん!」 「うわぁ~そりゃ淫乱小学生になるわけだよ、そんなにしてたらね…でも嬉しいよ、そこまで僕の事を思ってくれるなんてね!」 別にお兄さんの事を考えてしてるわけじゃ無いのに… でも気分を良くしたお兄さんは、そのエッチな行為を更に激しさを増していくの! 胸を何度も触って、あたしのお腹の中をおちんちんで掻き回していく…そして最後にまた精子を中で出すのです。 その行為は繰り返し行われました、あたしはただ成すがままになって、ただ喘いで身を震わせて…そして感じていました。 「あぁ…気持ちいいの…あうぅ…凄いよぉ~…あぁ…」 何回出されたのかな…もう頭は何も考える事ができません、何度も頭が真っ白にトンでしまっている内に 何時の間にか絶望も不安も感じなくなっていたの…何だかどうでもよくなっているみたい、 ただこのエッチの気持ち良さだけを感じていました…自分で何を言ってるのか理解できていないと思います。 「だいぶ素直になったな…でも流石にもう限界だよ!ほらっ最後の射精だ!!」 ドクゥゥ~!!! 「あぁぁ~~~~~~~っ…また……あぅぅ」 お腹の中に何度目かの熱い衝撃を感じて、また目の前が真っ白になったあたし… 力が抜けてその場にしゃがみこむと、そのままエッチの心地良さの余韻に浸っていました… そして変になった頭が正常に戻るまで、しばらく座っていたのです。 お兄さんのおちんちんが抜かれると、まるで漏らしたように股間の穴から白い粘液が零れてきました…。 「実は僕ね、この近くでバイトをする事にしたんだよ」 「えっ!」 それはお互いに身なりを整えた後、校門前でのお兄さんの発言でした、あたしはその内容に驚きます。 「だから…たびたび会いにこれるわけさ…嬉しいだろ、これからもよろしくねつぼみちゃん」 あたしは目の前が真っ暗になりました…こんな風にエッチされる日が続くのかと思うとショックで… でもなんでだろ体が熱くなって股がまた疼いてくるの…もしかして喜んでいるの、あたしの体? 自分の意思と関係なく、どんどんエッチになっていくあたしの体…これからどうなっちゃうんだろ… お兄さんが居なくなっても、あたしはその校門前で一人空を眺めながら呆然と立っていました その足元に、垂れてきた白い粘液で作られた水溜りを広がせながらに…
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MURDER×MURDER(前編) ◆OGtDqHizUM 「この2人どうしよう?ボロボロだよ!」 「アル君落ち着いて!どっか安静にできる場所へ…」 「にしても酷い怪我だな。これは急がないと危険ではないのか」 「とりあえずお爺さんはボールに戻っててください……」 「心得た」 港が廃墟と化すほどの激戦の跡地でスバルとアルフォンス…と港爆☆殺の原因をつくった爺さんが、 ボロボロになって倒れているシグナムとアナゴを介抱しようとしていた。 見たところ余程の大激戦を繰り広げていたのか身体や服も傷だらけだ。 シグナムに至っては『何故か』獣の耳と尻尾という余計なものまでついている始末。 それを見てスバルはさらに頭を混乱させる。そしてお爺さんこと東方不敗マスターアジアが存在し話しかけてくるだけで余計ややこしくなってきたので不敗をボールに戻すことにした。 不敗を黙らせ、シグナムに余計なものまで生えていることをとりあえずスルーし、スバルはどうすべきか考える。 「とりあえず病院へ行こう!そこになら治療道具だってあるはず……」 「う…うん、そうだね!じゃあ僕が二人を抱えるよ!」 方針を決めたスバル。 彼女にとって病院は過去のバトルロワイヤルで殺人鬼がいると思しき危険地帯であったが怪我人を介抱する以上はせめて治療器具くらいは手に入れたいものである。 最も、デュエルアカデミアのように病院でなくとも保健室のような部屋のある施設があればいいのだが、動けない怪我人が2人いる上に、いつ襲われてもおかしくない状況なのであたら贅沢は言えないだろう。 そしてアルフォンスは倒れているシグナムとアナゴを抱えようとした時… 『おまえら人間じゃねぇ!』 『あぁん?あんかけチャーハン?』 『おいこら、お前らか、私の服を剥ぎ取っt 『やべっ!間違えた!』 『誰だよニコ動見ているやつは!』 『つか参加者の映像●RECしてんじゃねぇロリペド野郎がっ!!』 「…………」 2人が見たものをありのまま話そう。 『空に巨大なスクリーンが現れたと思ったらわけの分からない映像が流れた。』 放送事故だとか(ry スバルとアルフォンスは理解しかねる映像を呆然としながら見ていた。 『いきなりの放送事故失礼したね。 では早速だが第一回定時放送を始めよう・・・・・・おい』 突如画面は砂嵐状態になり、次に映ったのはこの殺し合いを開催したピエロの男。 上の空になっていた2人は我に帰る。 そう、バトルロワイヤルではもはや定番の提示放送がたった今始まったのであった―― ◇ 前略ニーサン……アルフォンス・エルリックです。 突然2度目の殺し合いに呼ばれてしまいましたが僕は元気です。 開始早々変な怪獣に襲われ前途多難でしたが、前の殺し合いの時に一緒だったスバルと出会うことができたのはニーサンと違って日頃の行いがいいからでしょうか。 そしてその怪獣を何とかやっつけることができ、襲われていた男の人と女の人を助けることができました。 そういえば僕はその『前の殺し合い』の途中でこちらに攫われてしまったわけですが、ヒューズさんが心配です。 何しろスバルがここにいるし、そして名簿を見る限りこなたまでこっちに来ているようです。いきなり僕たちが姿を消してヒューズさんは慌てているんじゃないでしょうか。 そして兄さんはどうしているでしょうか。兄さんのことだからきっと殺し合いに乗った人たちを千切っては投げ千切っては投げているんでしょうね。 とりあえず、一刻もはやくスバルやこなたと一緒にそちらに戻りますから待っててくださいね。 先ほど、僕らを2度目の殺し合いに巻き込んだ張本人だと思われるピエロの人の放送がありました。 放送と言えば、僕の前の殺し合いの最後の記憶は放送時間直前の話でしたね。 そちらが何人尊い命を散らしてしまっているのか気になるところでありますが、今はこちらのことを気にするべきでしょうね。 知り合いの無事を祈りながら聞く人もいれば、自分のスコアに愉悦に思っている人もいるんじゃないでしょうか。 もちろん自分は前者で、特にこなたが無事かどうかが気掛かりでした。 危うく発表される禁止エリアの聞き逃しかけたほどです。仲間の無事に気を取られてもう一つの重要なことを放っといてしまうのはいけませんよね。 どうやら追加された禁止エリアは現在僕らがいる地点からは結構離れているところです。 僕らが行こうとしてる病院も無事みたいなので僕らの行動に支障が無いようで安心しました。 禁止エリアに指定されたところにいる人ははやくそこから離れてくださいね、無事を祈ります。 禁止エリアの後は死者の発表がありました。 幸いこなたや僕の知り合い…といってもここに呼ばれているのは僕と目の前にいるスバルだけですけどが、死んでいないようです。 どうやらスバルの知り合いも無事なようで、僕はホッとして胸を撫で下ろしました。 ですがスバルの表情は暗いです。一体どうしたんでしょうか… 「スバル、どうしたの?暗い顔してるけど…知り合いは死んでないんでしょ?」 僕はスバルに聞いてみました。スバルは暗い表情のまま下を向いていた顔を僕に向け―― 「うんなのはさん達は簡単に死ぬような人じゃないと信じているし…私だってこなたが無事なことは嬉しいよ。 でも――10人も死んだんだよね…。私、素直に喜べなくて…」 そうか…確かに10人の命が亡くなったことは少し悲しいよね。 「…私ね。憧れてる人がいるんだ」 そう言ってスバルは名簿に書いてある名前を指差した。 『高町なのは』と書いてある。う~ん…前の殺し合いにはこんな人はいなかったなぁ… そしたらスバルはその高町なのはさんって人のことを話し始めたんだ。 昔その人に助けられたこと、自分はそれがきっかけで災害から多くの人を守るため…そんな魔導師を目差していること。 ちなみにスバルの職業だと思われる魔導師というのは俗にいう軍人みたいなものだってヒューズさんから聞いた。 話によれば魔法という錬金術よりずっとありえないものまであるみたい。いやありえないことはありえないよね。 「魔導師って言ったって…10人の人の命を助けられず、死なせてしまったなんて…… 所詮デバイスのない私なんてただのサイボ……女の子―――」 「そんなことないよ。スバルは頑張ってるよ。 僕は見ていることしかできなかったけどスバルはあの怪獣の魔の手からそこのシグナムさんて人と男の人を助けることができたじゃないか。 確かに10人も死んでしまったのは悲しいかもしれないけどさ、今はそれで落ち込むより僕たちができることをやるべきだよ。 だから今はあの2人介抱することだけを考えよう」 落ち込んでいるスバルのことが見ていられなくて僕はスバルにそう言った。一応最後に使い古された言葉かもしれないかもけどさと付け加える。 問題のすり替えといわれると確かにそうかもしれない。 でも僕は思うんだ。きっと暗闇の中にいても、僅かな希望さえあれば意志さえあればきっといつか脱出へとたどり着くかもしれないと信じて。 「アル君…ありがとう」 スバルはしばらく下を向いて沈黙していたけれど 僕の言葉がスバルの心に響いてくれたのか顔を上げて僕にお礼を言ってくれた。 お礼を言われるほどじゃないさ。 「じゃあこんなとこで落ち込んでいるわけにはいかないよね。はやく病院へ向かおう」 「うん、じゃあ僕はあの2人を抱えるから―――」 僕とスバルは立ち上がった。 とりあえず僕は倒れている2人を抱えることにする。 こういう荷物運びは疲れることがない僕のほうが適任だからね。 そして僕が2人を抱えようと倒れている2人のほうへ向かおうとした矢先――― 「ぶるあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! あぁぁーっ、テステス!本日は晴天なり本日は晴天なり!!」 突然辺りに響き渡る咆哮に僕とスバルは大声が聞こえてきた方向へと振り返る。 するとそこにはさっきまで倒れていたはずのタラコ唇の男の人が立っていた。 正気なのかどうか分からないけれど、とりあえず無事でよかった。 何故か怪我の回復が早い気がするけど… 「おぉい!そこの鎧に女人!」 「「はいぃぃっ!?」」 余りの迫力に僕らはつい怯みながら返事をしてしまう。 「さっきまでここにいた恐竜を知らねぇぇかぁ!?」 「え…あぁ……」 「さっさと答えろ!!!!」 「あ…安心してくださいっ!あの恐竜は私たちがやっつけました!! もう心配はありませんよ!!」 目の前の男の人の異常なほどの威圧感に僕はただ口篭ることができなかったが、 スバルは笑顔で男の人の問い……に答えた。何だか顔が引き攣ってるけれども。 「そうかぁ…なるほどなるほど…」 「「え?」」 「お前らだったのかぁ………」 ◇ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……! アルたちの目の前の男、アナゴの口調が静かになると同時にこの場の空気が変わった。 男から放たれる覇気、怒り、殺意が2人に突き刺さる。 アルとスバルはただその場で固まっていることしかできず、スバルに至っては顔中に冷や汗を流している。 その時すでに2人は悟ってしまった。 目の前の存在とのいろいろな意味での次元の違い、底の知れなさ… 人の形をしているのだが人と同じなのかどうかすら怪しいものだ。 「お前らが俺を不意討ちして戦いを邪魔してきたんだなぁぁ~~~~?」 「いいえ僕たちは…」 「言 い 訳 な ん ぞ し て ん じ ゃ ね ぇ ! ! ! ! !」 2人は男の人とシグナムが恐竜に食べられかけていたところを助けただけと言おうとしたが アナゴの一喝により遮られてしまい、その咆哮に気圧され2人は怯む。 「生憎今日の俺は紳士的じゃないぜぇ………」 そう言うと男の人はどこからか大斧を取り出した。 正確には取り出したと言うのではなく、前の殺し合いの時にアナゴに集結した若本の魂に縁のある武器が投影されたのだ。 アナゴが投影したのは若本の1人バルバトス・ゲーティアの大斧である。 アナゴは片手で大斧をぐるんぐるんと回しながら処刑人のように一歩ずつ2人へと近づいていく。 そしてひとたび斧を振り回せば確実に2人は真っ二つにされるくらいの距離に近づくとアナゴは足を止める。 彼は今まで自分の戦いを邪魔したのであろう2人を睨みつけていたが、ふと何かを感じ取ったのか急に明後日の方向を睨みつけた。 「………………クックックックッ…クカッ…クカカカカカッ…… ゲェハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」 アナゴはその顔に凶悪な笑みを貼り付け大声で笑い始めた。 気が済むまで笑った後は再び視線を固まっているアルフォンスとスバルに向け意外な一言――― 「見逃してやる」 「…え?今なんて…」 「見逃してやるよ。はやくそこで倒れている狸女を連れてどっか行け… 漢と漢の戦いに巻き込まれたくなけりゃあなぁ!!!」 ◇ 「…危なかったね」 「うん、何だったんだろ…あの人」 アルフォンスとスバルは走っていた。 アナゴに気圧されてロクに身体を動かすことままならず、アナゴによってもたらされる死を待つのみだった二人にアナゴが言った「見逃してやる」という言葉。 彼の突飛な発言に戸惑いつつもアルフォンスはシグナムを背負いスバルとともに病院方向へ逃走していたのだった。 後を振り返るが、どうやら追いかけてくる様子はなさそうだ。 アルフォンスとスバルはいろいろと釈然としない思いを抱えていたが、結果的に助かったのだからこれに越したことはないと考える。 それに今は気絶しているシグナムを病院へ担ぎ込み休ませるのが先決である。 自分達が来る前にあのサラリーマンと恐竜とシグナムは何をしていたのか?あのサラリーマンの男は殺し合いに乗っているのか? そんな疑問を跳ね除けながらアルフォンスとスバルは病院に向かって走っていく。 余談ではあるが、アルフォンスは他に疑問を抱えていた。 アルフォンスにとってスバルは前の殺し合いで一緒に行動していた仲間である。 開始早々遭遇できたのはいいが… (そういえば僕を見たとき驚いていたけどどうしたのかな? 前にもう会ってるんだし……そんなに驚かなくたっていいじゃないか…) 答えは簡単。 今回の殺し合いに呼ばれたスバルはアルフォンスとは違う世界で殺し合いをしていたスバルなのだ。 いわゆるパラレルワールドというもの。 当のアルフォンスはその答えに行き着かない。前の殺し合いでは平行世界説に感づき始めていたのに何故?(こなたの助言のおかげだが) それはきっと2人が泉こなたと知り合いだったがためだろう。 一方スバルは元々の世界観が世界観ということで早めに平行世界説に気付いているのだが、 それを彼に伝えることを本人は忘れているのか、状況が状況だから伝えられないのかは定かではない。 【B-7/1日目-朝】 【スバル・ナカジマ@なのはロワ】 [状態]:健康 [装備]:なし [持物]:基本支給品一式、マスターボール(東方不敗)@カオスロワ、 不明支給品1~2(少なくともみためで武器と判断できないもの) [方針/行動] 基本方針:殺し合いを止める。出来るだけ人は殺さない。 1:シグナムを病院に連れて行き、休ませる 2:泉こなたを探し出し保護する 3:アルにパラレルワールドを説明するのは後(忘れている可能性もあります) 4:前の殺し合いのルルーシュとレイが心配 5:あのサラリーマン(アナゴ)の人は…どうしよう [備考] ※なのはロワ 070話「誰かのために生きて、この一瞬が全てでいいでしょう」より参加。 ※シグナムの参戦時期が11年前であることを知りません 【アルフォンス・エルリック@アニメキャラ・バトルロワイアル2nd (アニ2)】 [状態]:鎧胸部に貫通傷、困惑気味、シグナムを背負っている [装備]:チョーク(1ダース) [持物]:デイパック、基本支給品一式、対弾・対刃メイド服@やる夫ロワ、こなた×かがみのエロ同人誌@オールロワ [方針/行動] 基本方針:事態の把握に努める 1:シグナムを介抱する 2:こなたを探す 3:とりあえずスバルについていく 4:スバルに対し少し違和感が…まあいいか [備考] ※アニロワ2nd 091話「ひとつ屋根の下」より参加。 ※二人ともでっていうは恐らくは死んだと思っています。 『とりあえず難は逃れたか…』 シグナムと合身している身であるラスカルはホッとする。 本当なら気絶している隙に始末するのがベストだったのだが、 この2人と主であるシグナムが無事なのでまあまあ結果オーライというところだろうか。 シグナムは気絶しているもののしばらく休憩すれば後は軽い処置さえ施せば助かるレベルのものだ。 会話からして彼らは病院に行くつもりらしい。 しばらくはこの2人に自分達を任せても大丈夫だろう だが予想外だったことがある。 サラリーマン姿の男の回復が意外にはやかったということ。 それと… 『シグの字が放送を聞き逃しちまったことか…放送でシグの字が探していると言った『セフィロス』って奴が呼ばれたが、お前はどうする? やる夫の奴も無事なんだろうな?ちっ……問題が山積みすぎるぜ…』 【シグナム@なのはロワ】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、ラスカルと合体中、アライグマの耳と爪と尻尾つき [装備]:ラスカル@やる夫ロワ(合体中) [持物]:支給品一式(食料少し減)、不明支給品0~2(確認済み・少なくとも刀剣類はない) [方針/行動] 基本方針:はやて(@なのはロワ)についての判断がつくまで態度保留。ただし降りかかる火の粉は払う。 1:(気絶中) 2:セフィロスと接触し、はやて(@なのはロワ)のその後の安否情報を確認する。 3:柊かがみに激しい警戒。 4:できればラスカルを主(やる夫)の所に届けてやりたい。 ※第一放送を聞き逃しました 099:涙の誓い(後編) 投下順に読む 100:MURDER×MURDER(後編) 097:Pray ~それぞれの想い~ 時系列順に読む 057:Double-Action Rascal form(後編) スバル・ナカジマ アルフォンス・エルリック シグナム アナゴ 064:二人がここにいる不思議 衝撃のアルベルト
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ep.SP ゲストスペシャル R-1チャンピオン 中山功太さん襲来!前編 放送内容 ゲスト 中山功太 参加メンバー Tomo Kimura K-suke その他 名前 コメント すべてのコメントを見る
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ろくでなしブルース(前編) ◆QpsnHG41Mg ラウラは黙り込んだまま、ろくに言葉を発しようともしなかった。 仲間がほかの仲間を殺したことがそんなにショックだったのか。 ラウラの表情はさながら苦虫を噛み潰したように歪んでいる。 「フン」 小さく鼻で笑うウヴァ。 役立たずが、と付け加える。 本人に聞こえてはいないだろう。 “まあいい……俺はそろそろ動くか” 傷心の子兎ちゃんにこれ以上構ってやる気なし。 ラウラが何を考えているのかは知らないが、ウヴァは勝ち残らなければならない。 そのために、一陣営のリーダーとして出来ることはいくらでもあるはずだ。 どうでもいい些事は捨て置き、ウヴァはライドベンダーに跨った。 「俺はもういくぜ、ラウラ……まっ、精々頑張ることだな」 緑陣営の……俺の駒として、なぁ――? 「……………………」 恨めしそうに、ラウラは顔だけを上げてウヴァを睨む。 昏い表情だ。相変わらず気に入らない目をしていやがる。 が、ウヴァはそんなことで貴重な部下に当たり散らすような小物ではない。 心の広い俺に感謝することだな、と心中で笑いながら、ウヴァはバイクを発進させた。 それから数分間、ラウラはそこを動かなかった。 この気持ちの整理がつくまでに、時間が必要だった。 何度、どれだけ考えようが事実は変わらない。 シャルロットはセシリアに殺された。それだけだ。 この殺し合いに乗ったのだ、セシリア・オルコットは。 “ならば……最早躊躇う必要は何処にもあるまい” セシリアは倒す。奴は最早、仲間ではない。 奴は、越えてはならない一線を越えてしまったのだ。 一応説得はするつもりだが、それでも聞かないなら容赦はしない。 仮に説得に応じたとしても、戦力を奪って拘束する必要はある。 これでもラウラは、少し前と比べれば随分と丸くなった方だ。 一夏と出会う前のラウラなら、迷いなく殺そうとしていただろう。 そして、ラウラの変化はほかでもない織斑一夏の影響だ。 一夏ならば、きっとこんな時でもセシリアを救おうとするハズだから…… アレはそういう男だ。そんな男にだからこそ、ラウラは心惹かれたのだ。 だから、その一夏に免じて、すぐに殺すことだけはしないでおいてやる。 “それに……シャルロットもそれを望むだろうしな” こんな状況でもラウラを救い、セシリアを止めようとした彼女なら、きっと。 そこでふと、ラウラはシャルロットとの会話を思い出す。 このゲームの勝利条件――ウヴァへの逆転策。 “私は……例え仮初とはいえ、これ以上ウヴァには従えん” というよりも、あんなヤツに、もう従いたくはない。 シャルロットの死を笑い飛ばしたあの虫頭に従うなど反吐が出る。 だからもう出来ない。それは、シャルロットとの友情にかけても、許せない。 だから、ラウラはここで今までの考えを改めることにした。 “ウヴァの陣営の優勝? いいや、違う……私は、私だけの陣営を優勝させるのだ” シャルロットも認めてくれた、この状況を打開するための最善策。 すべてのコアメダルを集めて、自分だけの陣営を作り、優勝すること。 危険分子だけを排除して、極力多くの仲間を引き込み、全員で生還すること。 そうすれば、殺される必要のない多くの者を救って、共に脱出が出来る。 師である千冬も、嫁である一夏も、仲間である鈴音も、みんなで一緒にだ。 その方法なら、きっと一夏も、死んだシャルロットも喜んでくれるハズだ。 ラウラは、たとえどんなことがあろうとも、彼らの思いを踏み躙れない。 ……だが。 今のままでは力が足りない。 ウヴァにも、あのセイバーにも、敵わない。 だから、今すぐにでも、なんとかして力を得たいのだが…… “いや……そう思うなら、これ以上こんなところでじっとしてはいられないな” ラウラの中で、ようやっと前向きな決心がついた。 ○○○ 夕暮れの空を飛びながら、セシリアは一人涙を流していた。 徐々に闇に染まっていくこの空のように、セシリアの心も黒く染まっていく。 セシリアは大切な親友の一人を、この手で殺してしまったのだ。 その事実が、重く昏い闇となってセシリアの内でわだかまる。 「もう……もう……ッ今更……後戻り、なんて……」 出来るわけがない。 この手は既に汚れている。 セシリアはもう、血と怨嗟の色で汚れている。 一度血に汚れたものは、水で洗い流しても完全に綺麗になることはない。 こうなってはもはや、シャルの命を背負って生きていくほか道はないのである。 「……奪った分……私が……ッ幸せに……ならないと……」 うわごとのように呟くセシリア。 これは呪いだ。絶対に幸せにならねばならない、そういう呪いだ。 殺してしまった友の分まで、自分が幸福を掴み、生還せねばならないのだ。 それがどれ程に歪で醜い決意であるか……そんなことはとうに自覚している。 だが、それでも、不器用なセシリアには、もうこれしか残っていないのだ。 「ごめんなさい……ごめんなさい……私は、もう……」 金輪際、面倒なことを考えるのはやめにしよう。 考えれば考える程にセシリアの心はすり減るばかりなのだから。 ここからはもう、一切の思考を捨てて、罪深い一人の女として戦おう。 生き残るため、女としての幸福のため、ただひたすら……目的のために。 悪鬼の仮面を被って、セシリアはただ、一夏と生還するためだけに戦うのだ。 「そのためなら……なんでもしますわ…………」 恋敵を皆殺しにすることすら厭いはしない。 だがしかし、それだけではただの無駄な殺しだ。 生き残るため、生還するために必要なことは…… 「青陣営……優勝……させなくては……」 こうなってはもう、それしかない。 虚ろな瞳でぼんやりと下界を眺めながら、セシリアは小さく呟いた。 シャルを殺したのだ、もはや残りの恋敵も皆殺しにするほか道はない。 中途半端で終わるのでは、殺してしまったシャルにも申し訳が立たないのだ。 だが、恋敵だけを皆殺しにしたとて元の日常に戻れなければやはり意味などない。 恋敵を皆殺しにして、一夏とともに帰る為には、なんとしても優勝するしかない。 「そうですわ……優勝、しなくては……なりませんわよね……? みんな、殺さなくては……殺さないと……この手で……一人残らず……」 壊れた人形のようにブツブツと呟く。 セシリアは、これ以上、物事を考えるのがつらかった。 面倒な考えの一切を放棄して、そう決断するのが楽だった。 だったら、考えは全てこの場のルールに委ねてしまった方がいい。 「……ごめんなさい……皆さん……私はもう……」 申し開きようもない、どうしようもないクズだ。 だが、どうせクズならもう何をしたっていいじゃあないか。 クズならクズらしく、開き直って好きに生きた方が気が楽だ。 だから――今の一言が、友だったみんなへの、最後の謝罪だ。 「ここから先……私は……」 悪辣な鬼となろう。 目的を成すまで、自分の感情をも殺して。 何も考えない戦闘マシーンになって、ただ殺すのだ。 そして、どんなに汚い手段を遣ってでも、絶対に優勝するのだ。 それが……冷たく深い海の底で見付けた、至ってシンプルな答え。 セシリアの表情からは、既に人らしい一切の感情が消え去っていた。 ゲーム開始から、もう五時間以上が経過しているのだ。 あのメモの場所に行ったところで、すでに誰もいないことは明白。 いいや、もうそんなことはどうだっていい。 「どうせ敵はみんな殺すんですもの……こんなもの」 メズールから貰ったメモを手の中で握り潰し、地上へ捨てる。 ただのゴミ屑となったそれは、風に煽られ何処かへ舞っていった。 「……私の敵は……どこかしら……」 死人の如き能面を張り付けて、修羅の道へと堕ちたセシリアは飛ぶ。 次の標的を見付けるために―― ○○○ 「ベーニャンが偽物って……どういうことか説明するニャ!」 ベッドから跳び起き、イカロスに掴みかかるフェイリス。 フェイリスは、友達が友達を殺さなければならない状況が理解出来ずにいた。 イカロスは一体何をもって彼女を偽物としたのだろうか。 聞いても納得する答えが返ってくるとは思っていない。 が、それでも黙っていることなど出来なかった。 「ちゃんと答えるニャ、アルニャン!」 イカロスの肩を掴んで、がくがくと揺らす。 虚ろげな目をしたイカロスは、ブツブツと、何か言っている。 私の記憶と齟齬が、とか。メモリーがどうの、とか。 出てくる言葉はそんな要領を得ないことばかりだった。 やがて、イカロスを挟んで窓に面していたフェイリスの眼が、光を捉えた。 薄暗い夕闇の中で、何かが眩く光っている。 そして、「光っている」と認識したかと思えば、 「ッ―――――――――――!?」 もうすでに、光は硝子の窓を突き破っていた。 よくSFアニメに出てくる、レーザー光線……というヤツか? それが窓硝子を一瞬で粉々に粉砕し、イカロスの背に直撃したのだ。 エンジェロイドの身体を貫通することはないが、しかしその衝撃は凄まじい。 レーザーの余波がイカロスの背で弾けて、狭い室内で吹き荒ぶ突風を巻き起こす。 軽いフェイリスの身体など容易く吹っ飛んで、壁に打ち付けられた。 「あ……アル、ニャン……!?」 フェイリスは怪我という程の怪我をしたワケではなった。 イカロスが壁になってその背中で受け止めてくれたからだ。 だが、代わりにレーザーの直撃を受けたイカロスは―― 「ア、アルニャン! アルニャン! しっかりするニャ!」 人形のような無表情のまま、うつ伏せに倒れていた。 背中の天使の羽根の付け根には、レーザー攻撃によって出来た焦げ跡。 普通の人間ならばとっくに死んでいてもおかしくはないこの状況……。 一体どうして何が起こったのか、そんなことに考えは至らない。 フェイリスはただ混乱するだけしか出来なかった。 『オイ猫女、次が来るぞぉぉぉーーーーッ!!!』 頭の中で響いたモモタロスからの警告。 だが、そんなことを言われて反応出来るわけがない。 馬鹿みたいに、え!? とか、そういう反応しか出来ないのが素人だ。 粉々に砕かれた窓から空を仰げば、次はミサイルがこの部屋へと迫って来ていた。 「ニャーーーーーーーーーーーーーーッ!?」 何をするでもない、ただの絶句だ。 しかし、そのミサイルに命を奪われることはなかった。 ミサイルが着弾する瞬間、何かがこの部屋の周囲を覆ったのだ。 見えない壁に阻まれたミサイルは、その壁の外周を爆風で粉々にする。 頭を抱えて蹲るしか出来なかったフェイリスのそばで、イカロスが立ち上がった。 「敵勢勢力を確認――殲滅します」 システム音声のように、いつも以上に感情のない声で言った。 それから、キュイ、と小さな音を立てて、イカロスの瞳の色が変わる。 翼をばさりと拡げて、イカロスは敵のいる空へと飛び立っていった。 ○○○ イカロスを強襲した敵は、容易に捕捉出来た。 ステルス機能を使うでもなく……ただぼんやりと空に浮かんでいたのだ。 青い機械の装甲を身に纏った襲撃者は、イカロスと似た空虚な表情をしていた。 その少女の身体からやや離れた場所に、数機の青いビット兵器が浮かんでいる。 その名を、セシリア・オルコットと、ブルーティアーズ。 修羅へと落ちた女の名だ。 会話などなしに、ビットの砲門が一斉にイカロスへと向いた。 “ロックオン……されてる……” すぐに対処をしようと、此方からもロックオンし返す。 イカロスの翼から、ビット兵器と同じ数の赤い弾丸が射出された。 永久追尾空対空弾「Artemis(アルテミス)」だ。 アルテミスが一度イカロスから離れると同時に、敵のビットも稼働を開始した。 それぞれが独立した軌道を描いて、セシリアの身体から離れたのだ。 “オールレンジ攻撃……” だが、命中するまで半永久的に敵を追尾し続けるアルテミスには関係ない。 ビット兵器のかく乱はすべてアルテミスに任せて、自分は加速する。 背中の翼をはばたかせて――一瞬のうちに音速に近い速度を叩き出す。 これには流石のセシリアも驚いた様子で、狼狽を露わにするが…… 「――え?」 しかし、イカロスの加速は、セシリアに届くことなく終わった。 翼があるのだから、空は飛べる。飛行に問題はないが、加速が出来ないのだ。 アルテミスも、敵のビット兵器との追いかけっこの末、着弾を待たずして消失。 次のアルテミスを起動しようとするも、もうイカロスの翼は何の反応も示さない。 この不可解な状況変化に、セシリアは凛とした冷たい声で言った。 「あら、メダル切でも起こしましたの……? ご愁傷様ですこと……」 そういうことだ。 イカロスは決して燃費のいいエンジェロイドではない。 確実に殺すつもりで放たれたミサイルから身を守るための絶対防御圏イージス、 レーダーを起動し、セシリアに追いすがるための加速に、果てはアルテミス……。 残り二十枚ぽっちのメダルを使い果たしてしまうには、十分過ぎる消費であった。 むしろ、たったの二十枚でここまでやれただけでも驚くほどだった。 「……あっけない終焉ですわね」 ろくな加速も出来ないイカロスを囲むように、ビットが展開されていた。 その砲門が、うち四機はレーザーを、二機はミサイルを発射する。 加速も出来ない、ただ浮かんでいるだけのイカロスに回避は出来ない。 「あ……ぁ……」 一声掃射されたレーザーが、イカロスの身体を滅多打ちにする。 身体のあちこちで爆発が起こって、エンジェロイドのボディにダメージが及ぶ。 一秒、二秒と経たないうちに、すぐにイカロスはそれ以上の飛行が出来なくなった。 落下してゆくイカロスを、それでも執拗に追撃するレーザーとミサイル。 ミサイルの着弾と同時に身体が爆ぜて、爆風に煽られる。 レーザーの直撃と同時に人形のように身体が吹っ飛ぶ。 “いたい……ッ、くるしい……――” すぐに壊れてしまえない身体を持ってしまったことが恨めしい。 激しい痛みの中にあっても壊れること叶わない。 力も使えずただ苦しむことしか出来ない、生き地獄。 だが、こんな時でも助けてくれる者は誰もいない。 “……マスターは……此処には居ないから” それを思った時、動力炉に別の痛みが走った。 それについて考える時間を待たず、イカロスはアスファルトの地面に激突した。 大きな音と、強烈な衝撃。高く舞う砂埃。 全身を打ち据えるような鋭い痛み。 身体が、思うように動かない。 「しぶとい……ですわね」 アスファルトに沈んだ身体で、首だけを動かして上空を見遣る。 喜びも悲しみもない、深い空虚のような瞳が、イカロスを俯瞰していた。 砕けた大地を引っ掴んで、イカロスはぐぐぐ、と身体に力を込める。 相も変わらず能力は使えないが、それでも何とか立ち上がることは出来た。 あの冷たい目に負けず劣らず空虚な瞳で、イカロスは空を仰ぐ。 セシリアは、それ以上の滞空をやめて、ゆっくりと地へと降り立った。 つかつかと歩み寄った少女は、動かないイカロスの額に、銃を突き付ける。 ちゃき、という音と共に、額に冷たい鉄の感触を感じた。 「これで終わりですわね」 「……撃ってみると……いい……」 眉根をぴくりと動かしたセシリアは、躊躇いなく引鉄を引いた。 ドガン、と大きな音が炸裂して、イカロスの身体が人形のように後ろに倒れこむ。 額にやや赤い痣が出来ていた。 そこから、僅かな血液がつう、と流れていた。 しかし、それだけだ。イカロスに大したダメージは見られなかった。 それどころか、腕を抑えて苦悶の声を漏らすのは敵のセシリアの方だった。 「零距離射撃の……反動……。私は……そんなものでは壊せない……」 「っ……呆れましたわ……! こんなバケモノ、一体どうやって……!」 「それしか武器がないなら……あなたには、無理……」 イカロスは、幽鬼のようにふらりと立ち上がった。 驚愕に一瞬行動が遅れたセシリアの首を、獲物に飛び掛かる蛇の如き素早さで掴む。 その首をぎり、と締め上げて、人間離れした力でセシリアの身体を持ち上げるイカロス。 この少女は敵勢勢力だ。イカロスの命を奪おうとした、正真正銘の敵だ。 排除することに何の躊躇いも感じない。 ここで、ひと思いに殺してあげよう。 「さよなら」 最期に告げる、別れの言葉。 その細い首をへし折ろうとした、その時だった。 「やめてーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」 聞き覚えのある少女の、悲痛な絶叫だった。 思わず手から力が抜ける。セシリアの身体が、どさりと落ちた。 声の主が、息せき切らして一生懸命に此方へ走り寄って来る。フェイリスだった。 フェイリスは、まろぶようにイカロスにすがり寄り、そのあらゆる動きを掣肘する。 「こんなことやめるニャ! そんなことしたって、何にもならないニャ!」 ……この心優しい少女は、殺人を望まないようだった。 その瞳に澎湃と溜まった涙が、イカロスに後ろめたい気持ちを抱かせる。 その優しい涙が、イカロスの知る誰かの涙と、よく似ている気がしたから。 そんな思考を遮ったのは、視界の隅で銃を構えるセシリアの存在だった。 「ニャッ!?」 危ない、と判断したその瞬間には、イカロスはフェイリスを突き飛ばしていた。 その瞬間、ばん! と大きな銃声が響いて、二人の間を銃弾が通過してゆく。 今狙われていたのは、イカロスではなく……無防備なフェイリスだ。 イカロスに睨まれたセシリアは、苦々しげに表情を歪ませ、再び装甲を身に纏った。 スラスターの噴射による反動で、セシリアは一気に二人から距離を取る。 「……彼女は……無防備なあなたを、殺そうとした……」 それでも、まだそんな綺麗事が言えるのか。そう言いたいのだ。 フェイリスは、しかし、それでも意志を曲げる姿勢を見せない。 「それでも、殺しちゃ駄目ニャ! それじゃあ……駄目なのニャ!」 フェイリス自身も上手く言葉を纏められず、ただ、駄目としか言わない。 だから、イカロスには何が、どうして駄目なのかがわからなかった。 そんな混乱も冷めやらぬうちに、脳内でアラートが鳴り響く。 ――ロックされている。 空に舞い上がったブルーティアーズが、ビット兵器を射出した。 それら全てが、イカロスとフェイリスの二人をロックオンしているのだ。 もはや見境もなし、ということだろう。 とにかく殺したいのだ、あの少女は。 「……フェイリス……メダル……」 「ニャッ?」 「ロックオン、されてる……けど、メダルがない……」 「ニャ、ニャんだってーーーーーーーッ!?」 メダルがないから、防御が出来ない。 最後まで言わなくてもわかってくれたようだから話が早い。 慌てたフェイリスは首輪からオレンジ色のメダルを取り出し、投げた。 ライオンのコアメダルだ。投げ放たれたそれを、イカロスは危なげなくキャッチ。 ビットは六機全てで二人を取り囲むように展開されている。逃げ場はない。 いいや、逃げるつもりもない。 「――イージス、展開……!」 イカロスの声と、ビットによる一斉掃射は同時だった。 ○○○ ブルーティアーズの一斉攻撃による爆発を俯瞰しながら、セシリアは思う。 ああ、また防がれたのだろうな。あの爆煙は着弾による破壊の爆煙ではないな、と。 あの猫耳の女が、イカロスにメダルを分けたから、とかそんなところだろう。 案の定、爆煙から飛び出して来たのは、あの赤髪の少女――イカロスだった。 すぐにビットを向かわせようとするが…… 「……速ッ――」 ――駄目だ! そんな余裕はない……! 尋常ならざる速度だった。音速にも達しようかという勢いだった。 セシリアの反応を上回り瞬く間にイカロスが飛び込んできた。 反射神経などとうに置いてけぼりにされている。 何も出来ないセシリアの頭部を、イカロスの手が鷲掴みにした。 “なんてッ! 馬鹿馬鹿しい……! そんなゴリ押し――!” 対処など出来るわけがない。 セシリアはそこまで人間をやめてはいない。 その身体はぶんと空を切る音を立てて振り回され――地面へとブン投げられた。 イカロスの怪力に重力も手伝って、セシリアの身体はとんでもない速度で急降下。 スラスターを全開で噴射させ、ようやく姿勢制御をしたのは、 “……ッギリギリ! ですわ!!” 固いアスファルトの地面に激突する数センチ手前だった。 即座にレーザーライフル――スターライトを構え直すセシリアだったが、 「……えっ!?」 イカロスを相手に、姿勢制御をしてからの構えではあまりに遅すぎた。 放たれた無数のアルテミスは、既にセシリアの視界の中で円を描いて迫っていた。 円形に展開された一発一発、その全てがセシリアを取り囲むように拡がり、急迫。 横方向の移動は全て封じられたし、下には地面、上にはイカロス、逃げ場がない。 次の行動を起こす前の一瞬のうちに全弾がブルーティアーズに着弾した。 短い悲鳴ののち、セシリアの身体が吹っ飛んで、地面に数度バウンドする。 見たところ直撃だが――しかしセシリア本体へのダメージは今の所存在しない。 ISとはエネルギーが切れるまではどんな攻撃からも装着者を守ってくれる鎧だ。 今回のダメージも全てISが打ち消してくれたのである。 が、しかしだからといって望ましいことはなにもない。 本来ならシールドエネルギーが消費される筈が、急激な勢いでメダルがなくなっていた。 今のダメージをメダル消費なしで受け止めていたらと考えると背筋が寒くなる。 “どうして……あんなバケモノが参加していますの……!?” 頭を抱え、ううんと唸るセシリア。 戦力差がありすぎる。不公平じゃあないか。 零距離射撃でもロクな怪我をしない奴に一般人が勝てるわけがない。 勝てるとするなら、高威力のエネルギー攻撃で一瞬で蒸発させるくらいか。 もしかしたら、それ以外にも幾らでも倒す手段はあるのかもしれないが、 何にせよ、今のセシリアにはそれをやりとげるだけの力がない。 いいや、武装がない、どころか―― “……私のデイバッグが!?” なくなっていた。一瞬前まで肩にかけていたのに。 どうやらさっきの衝撃で、転がりながら落としてしまったらしい。 すぐにスラスターを噴射させそれを回収しようとするが―― 「あなたにこれは回収させない……」 頭上に天使の輪を浮かべた少女が、デイバッグの前に降り立った。 デイバッグの前に立つイカロスが、セシリアにはまるで絶壁のように見えた。 「……殲滅……する……」 まるで脇に大砲を構えるようなイカロスの動作。 その所作に合わせて、光が集束してゆき、そこに巨大なエネルギー砲を顕現させた。 イカロスの超兵器――超々高熱体圧縮対艦砲(ヘパイストス)だ。 “あんなものまで……ッ!!” 絶句するセシリア。 アレの砲身にすさまじい熱量を感知したブルーティアーズがアラートを鳴らす。 アレの威力はおそらく、一撃でセシリアのメダルをすべて刈り取って余りあるだろう。 ISが消失したセシリアに、あのバケモノを倒す手立てはない。 だが、諦めて死を受け入れるワケにもいかない。 「くぅ……ッ」 ビットは駄目だ。アレを飛ばしている間、自分はろくに動けない。 スターライトも駄目だ。今からでは遅いし、威力でもおそらく勝てはしない。 だったら残る道は――ISの機動力を活かしての回避しかあるまい。 セシリアはスラスターを全力噴射して、大空へと舞い上がった。 周囲のどのビルよりも高く上昇したところで、ヘパイストスが火を吹いた。 滅茶苦茶な軌道で飛んでいたセシリアに、へパイストスは――直撃、しなかった。 セシリアの身体の左側に浮かぶビットを蒸発させ、IS本体を掠めて空へと通過してゆく。 「きゃぁぁぁぁ――――――ッ!!?」 ビットの半分が爆発し、その爆風に身体を煽られる。 許容範囲を超えた衝撃に、空での姿勢制御が不可能となる。 くるくると舞いながら、セシリアは落下していった。 地面に激突して、小さなクレーターが出来上がる。 そして、またメダルが減ったことを認識する。 “……これでは……もうこれ以上の戦闘は――” 不可能か……と、一瞬考えたセシリアであったが。 いいや、勝利の女神はまだセシリアに微笑んでくれている。 セシリアの目の前で、イカロスの頭上の天使の輪がすうっと消失したのである。 さっきと同じだ。赤くギラついていた瞳も、ぼんやりとした緑へと変わる。 どうやら、戦闘形態の維持が不可能になったらしい。 実のところ、ヘパイストスも、コアメダルで補ったメダル残量では足らなかった。 今の一撃は、これでも大幅に威力が抑えられたものだった。 それも今の一撃でセシリアが一瞬で蒸発しなかったことの要因の一つである。 もっとも、ソレを差し引いてもセシリアが助かったのは奇跡と呼べるレベルだが。 “とにかく、彼女は今のでメダルの補助分を使い切ってしまったようですわ” それを理解したセシリアの頬がにやりと緩められる。 イカロスはその高性能さゆえ、メダル消費に関しては最悪の燃費なのだろう。 欠点などないかと思われた強敵だが、それはこの場においては致命的な弱点である。 ビットの半分は失ってしまったが、これはISの自動修復機能に任せておけばいい。 メダルを失ったイカロスをなんとかすれば、いくらでもやりようはあるのだ。 一気に逆転したとばかりに笑みを浮かべたセシリアは、 「そのデイバッグを返しなさい。さもなくば、そのメイドを殺しますわよ」 スターライトの銃口を、今も無防備なフェイリスへと向けて要求をする。 どうせイカロス本体を殺すだけの威力はない。こっちの方が脅迫としては上出来だ。 イカロスの表情がぴくりと動くが、しかし思いのほか、イカロスは返答をしなかった。 「私とフェイリスは……関係ない……」 「では、そのメイドさんをお見捨てになりますの?」 「……フェイリスは……私の記憶にない……。必要な人間じゃ、ない……から……」 「あら、そうですの」 ちらと見れば、フェイリスは絶句した様子で口を小さく開いていた。 この状況で唯一の味方に見放されたのだから、もうフェイリスに未来はない。 「憐れなメイドさんですこと」 そういってスターライトを発射しようと照準を合わせる。 その瞬間、フェイリスは転がるようにその場を離れ、イカロスの背後に飛び込んだ。 落ちていたデイバッグを拾い上げ、それを胸に抱きかかえ、また地面を転がる。 立ち上がると、デイバッグを胸元に携えて、フェイリスは精一杯の脅しをかけてきた。 「フェ、フェイリスを撃ったら……このデイバッグの中身まで吹っ飛ぶニャ!」 “ふふっ……何かと思えば、なんて可愛らしい” そんなものは、セシリアにとって脅迫にもなりえない。 自分の身は自分で守るしかないと判断しての行動だろうが…… 悲しいかな、その行動は裏目でしかない。 イカロスから離れさえしたなら、フェイリスなどどうとでもなる。 銃口を降ろしたセシリアは、ブルーティアーズを急加速させ突撃。 驚くフェイリスに次の行動を許さず、激突するような勢いでデイバッグを奪い取る。 ……だが! 「は、離さない……ニャ! 絶対に! 離さないのニャ!」 フェイリスもまた、相当な力でバッグを掴んでいた。 滑空するブルーティアーズに数十メートルも引き摺られて、それでも離さないのだ。 長いスカートが高速で地面に擦れて、どんどんすり減っていくのが目に見えた。 「ええい……しつこいですわ! とっとと! 落ちなさいなッ!」 ついでにその衝撃で死んでくれれば尚いいのに、と表情を歪めるセシリア。 次にフェイリスの身体を襲ったのは、セシリアのIS越しの蹴りだった。 「ッニャァ!?」 猫のような悲鳴を漏らしたフェイリスが、ようやっと落下しごろごろと地面を転がる。 が、計算外の出来事というのはつくづく繰り返されるものだ。 よっぽどの力で掴んでいたのだろう、デイバッグの口も同時に開いてしまった。 フェイリスと一緒に、荷物の凡そ半数がぶちまけられて、地面に散乱する。 “何処までも鬱陶しいメイドですこと……!” 支給品と一緒に転がっている、ボロボロのメイド服を着た女に苛立ちの視線を向ける。 フェイリスもすぐに周囲に転がる支給品に気付いたのか、それらへと手を伸ばしていた。 ――まずい、奴らに支給品を回収されてしまう。 彼女の周囲に落ちているのは、銀色のアタッシュケースと、赤い携帯電話と用途不明のカードが一枚、 ビニール袋に入ったIS学園の男女制服が一式と、シャルの橙色のネックレスが一つ…… 残りは自分のデイバッグに入っているが、重要な支給品は全てぶちまけられているではないか。 ファイズギアはまだいいとしても、 “たとえ他は犠牲にしてでも、ISだけは……!” ラファール・リヴァイブだけは渡すワケにはいかない。 優先順位トップは、迷いなく断然シャルのネックレスの形をしたISである。 幸いにも、フェイリスが最初に手を伸ばしたのはあの銀色のアタッシュケースだった。 セシリアはすぐにビットを展開して、フェイリスと、その周囲目掛けてビームを乱射。 「ニャッ、ニャニャニャァァァ~~~~~ッ!?!?!?」 ビットの展開と同時、フェイリスは慌てて逃げまどった。 ちょろちょろと、まさしく俊敏な猫のように逃げ回るフェイリスに直撃はしない。 が、その周囲で炸裂したビームの爆風に、フェイリスの身体は吹っ飛んだ。 体重の軽い少女を吹っ飛ばすには十分な爆風だ。 フェイリスはそのまま動かなくなった。気絶したのだろう。 ISに引きずられ、IS装着者に蹴られ、果ては爆風だ。無理もない。 何にせよこれで障害は一つ排除した。 支給品はそのまま。チャンスは今だ。 他の支給品には目もくれず、セシリアは真っ先に地表を滑空。 ISのマニュピュレーターがアスファルトで削れることも厭わず、 セシリアはシャルのネックレスをその手に掴み取り、そのまま飛翔。 しかし……それだけで「やりましたわ!」などとは思うまい。 この一瞬の間に、今度はイカロスが、銀のアタッシュケースに手を伸ばしていた。 セシリアはイカロスとはもうこれ以上は戦いたくはなかった。 が、かといってイカロスにファイズギアという戦力を渡すのも嫌だった。 “くっ……仕方ありませんわ……悪足掻きといかせてもらいますわ……!” 展開していたビットが、四方八方からアタッシュケース目掛けてビームを発射した。 イカロスの手が届く前に、ブルーティアーズの煌めきがケースを幾重にも貫いてゆく。 「……あ」 別にどうでもよさそうな、無感動なイカロスの呟き。表情の変化もなし。 イカロスが掴もうとしていたケースは、中身に引火したのか、内部から爆裂した。 爆発の中に、赤の粒子がきらきらと煌めいて舞い上がり、散っていくのが見えた。 それは、ファイズギアが内包していた赤きフォトンブラッドの煌めきだった。 「有害物質の散布を確認……すぐに全焼……消滅。人体に影響はなし……」 イカロスのシステム音声のような報告。 ファイズギアの完全破壊を確認したセシリアは、ほっと一息ついた。 これでもう、あの厄介な鎧が敵の手に渡ることはなくなった。 どうせ自分が使う日が来ることもなかったろうし、 誰かに奪われるくらいなら……ということだ。 他に落ちている物も、セシリアにとってはガラクタ同然。 玩具みたいな携帯電話と意味のわからないカードのみだ。 その携帯電話は気絶したフェイリスのそばに落ちていて…… カードは、風に吹かれてイカロスの足元にぱさりと落ちていた。 イカロスがそれを拾い上げるのを見て、セシリアは寧ろ諦めがついた。 “……まあ、アレらはもう諦めましょう。ISは守り通せたことですし” どの道、あのガラクタ二つを持っていても邪魔だとしか思えなかった。 今はそんなことよりも、自分の首輪の中のメダル残数の方が心配だった。 もう既に、セシリアのメダルはいつ切れてもおかしくないところまできているハズだ。 これ以上戦闘を続けてもしメダル切れを起こせば、勝ち目は絶対になくなってしまう。 口惜しい思いだが……それだけは避けたい。 ここは一旦退いたほうが賢いだろうと判断した。 空中で踵を返したセシリアは、そのまま急速離脱。 あっと言う間にイカロス達から逃げ果せた。 ○○○ 突然奇襲をしかけられた。 短い戦いののち、すぐに去っていった。 ……結果だけを述べれば、こんなところだろうか。 まさに嵐のような戦いであった。 「あの子は……」 戦場だった場所に一人ぽつんと佇むイカロスは考える。 あの青い装甲の少女はほとんど無言だったから、目的はわからない。 ……いいや、ここで人に襲い掛かる目的など知れている。 殺し合いに乗った以外に、一体どんな理由があろうか。 「でも……自分の意思で……?」 虚のような瞳をしたあの少女は、果たして自分の意思で戦っていたのか? 感情を押し殺したようなあの少女は、何を求めて戦っていたのだろうか。 自分と何処か似たあの子ですら戦っているというのに。 この場に来てから、自分は一体何をしているのだろう。 「私は……こんなことをしてる場合じゃ……」 じりじりと、何かがイカロスの心を焦がす。 みんな必死だ。ここにいるみんなが、何かをかけて戦い、殺し合っている。 今この瞬間にも、マスターが何者かに襲われ、殺されそうになっているかもしれない。 そう思った時、イカロスの心を焦がしていたソレが、一気に燃え上がった。 「マスターに……会いに、いかないと……!」 会いにいかねばならない。今すぐにでも。 そのためには、あらゆる万難を排して、戦う必要がある。 さっき戦ったあの子のように、自らの意思で、道を切り拓く必要がある。 「偽物の世界は……全て……破壊してでも……戦わないと……」 イカロスの頭脳は、それが最大の近道であると判断した。 地面に横たわるフェイリスの元まで歩み寄ったイカロスは、その首に手をかけた。 少しでも力を加えれば、ヤワな人間の身体などすぐに破壊してしまえる。 「……フェイリス……」 しかし――イカロスはフェイリスを殺すことは、出来なかった。 いざ殺そうとしたその瞬間、さっきのフェイリスの涙を思い出してしまったから。 あのマスターに似た優しい涙を思い出して……それでも殺せるワケがない。 「違う……私が……殺すまでもない、から……」 だから殺さないのだ。そう言い訳をする。 フェイリスはどうせ、力を持たない一般人だ。 ここで放置していけば、イカロスが手を下さずとも誰かが殺す。 そうだ。何も自分でやる必要はどこにもないのだ。 「さよなら……フェイリス」 イカロスはフェイリスに背を向けた。 もうこれ以上何の得にもならないお守りをするつもりはない。 ここからは自分のためだけに……精一杯、戦って行こう。 イカロスは、自分の意思で歩き出した。 ○○○ 「おい! おいッ! 大丈夫か、しっかりしろッ!」 身体が揺さぶられている。 瞼は重たい。全身の筋肉が、やけに疲れを感じている。 だが、どうにも起き上がれないというほどでもなかった。 ちょうど昼寝のまどろみから目覚めるような感覚だった。 「おいっ、起きろ――」 「――ンニャ……」 幾度となく呼ばれる声に、フェイリスはようやく答える。 そしてフェイリスの視界に飛び込んできたのは―― まず第一に、細くきめ細かに艶めく銀髪。 そして、燃えるルビーのような真っ赤な虹彩。 極めつけて目を引くのは、その片目を覆う黒の眼帯。 ――フェイリスは、彼女の容姿に目を奪われた。 「……素晴らしい……中二魂を感じるニャ……!!」 それが少女を見たフェイリスの正直な感想だった。 「……は? ちゅう、に……?」 「ハッ……!? も、申し訳ないニャ、思わず……」 少女は一瞬怪訝な顔をしたが、それ以上の追及はしなかった。 それよりも、周囲に散らばった支給品や、あちこちに出来た焼け跡を見て、 「私の名前はラウラ・ボーデヴィッヒ。ここで何があったのか教えて欲しい」 短い自己紹介に次いで、状況の説明を求めてきた。 あちこちのアスファルトが、焦げたり、砕けたりしているのだ。 ここで戦闘が起こらなかったという方が無理がある話だ。 フェイリスもまた周囲を見渡して、ことここに至るまでの経緯を思い出す。 そして次に自分自身の身体を見回して、大した外傷もないことに安心する。 “アルニャン……フェイリスには手を出さなかったみたいニャけど……” この場所で出来た友達――イカロスのことが何よりも心配だ。 今のイカロスが何をしでかすかは、フェイリスにも皆目見当がつかない。 もしかしたら、フェイリスは見逃されたが、ほかの参加者は殺している、かも。 そんなことを考えると、フェイリスはいてもたってもいられなくなった。 がばっ、と身を起してラウラに掴み掛り、フェイリスは早口に捲し立てる。 「こ、ここに天使の羽根の女の子がいなかったかニャ!?」 「いいや……私が来た時には、すでにこの状況だった。何も変化はない」 「そんニャ……」 「それよりも私の質問に答えろ」 苛立たしげに眉根を寄せるラウラだった。 フェイリスは慌てて一言謝罪をして、ことのあらましを説明した。 イカロスという友達がいたこと、彼女がニンフを殺してしまったこと。 そこへ突然襲いかかってきた青い装甲の少女のこと、それらを簡潔に、だ。 大体の状況を把握したラウラは、次に二、三質問を投げかけてくる。 その青い装甲の少女は、金髪で、丁寧な敬語を喋ってはいなかったか、とか。 それらの質問に、フェイリスは首肯で答えた。 「あの馬鹿がッ、やはりこれはセシリアの仕業か……!」 ラウラは、憎々しげに拳を握りしめていた。 「そのセシリアって子……ラウニャンの知り合いなのニャ?」 「知り合いどころか。セシリアは……私の仲間、だった」 苦い表情のラウラに、不躾を自覚しながらも質問する。 「だった……? どういう、ことニャ……?」 「……仲間の、ハズだったんだ」 ラウラは、セシリアという少女と、一夏という少年の話をしてくれた。 恋敵を殺し、おそらくは生還するため、殺し合いに乗ったセシリアという少女―― フェイリスは、セシリアとイカロスはとてもよく似ていると思った。 「そんなの悲しいニャ……その子は……止めなくちゃならないニャ」 「そのつもりだ……あの馬鹿は、私が絶対に止める」 たとえ殺すことになったとしても―― まるでそう言っているように、ラウラの瞳は怒りに熱く燃えていた。 友達だから、これ以上間違いを犯す前に止めなくてはならない。 そう考えているのであれば、ラウラもまたフェイリスの仲間になれる。 “でも……この子、危ない目をしてるニャ” 友達が友達を殺すことは、これ以上もなく哀しいことだ。 さっきそれを体験したばかりだから、その悲痛さはよくわかる。 フェイリスはもうこれ以上、そんな悲劇を見過ごしたくはないのだった。 この少女は放っておけない。 このフェイリスが、一緒に行動してストッパーにならなくては…… そう思い、フェイリスはどんと自分の胸を叩き、胸を張って言った。 「ラウニャン……出会ったばかりニャけど、フェイリスたちはもう仲間ニャ!」 「なんだと……?」 「フェイリスはアルニャンを止めなくちゃならニャい…… そして、ラウニャンもまた、同じようにセシニャンを……そう、 よく似た運命を背負いし者同士が出会ったとき、物語は再び動きだすのニャ! ここで終わりじゃないニャ! 何度でも、挫けずに、食らいつくのニャ!!」 そう言って、すっくと立ち上がるフェイリスの眼には……正義の炎が宿っていた。 何度挫けそうになっても、たとえ報われなくとも、諦めることは出来ない。 言葉がどんなにふざけていても、フェイリスの考えは真剣そのものだった。 それを感じ取ったのであろうラウラもまた、背筋を伸ばして立ち上がる。 隣に並び立つと、ラウラはまるで子供のように小さかった。 「そうか……一夏もきっと、そういうのだろうな」 「なら、そのイチニャンともきっとすぐに仲間になれるニャ!」 「フッ……お前ならば信用出来そうだ」 誰とでも友達になろうとするフェイリスが、敵であるワケがない。 そう判断してくれたのだろう。ラウラは小さく微笑んで、 「これから仲間になるなら……私のもう一つの目的を、聞いてくれるか?」 神妙な面持ちでそういった。 「ニャ?」 「私は……このバトルロワイアルで優勝するために戦うつもりだ」 息を呑むフェイリス。 「ソレってまさか……殺し合いに乗るってこと……ニャ!?」 ラウラはやおら首を横に振り、それを否定した。 「……最初はそのつもりだった。……が、今は違う」 「どういうことニャ?」 「死んだ仲間と誓い合った……全員で生還するための方法だ。 私はすべてのコアメダルを集め、陣営のリーダーとなるつもりだ」 そこでフェイリスは、ラウラの言わんとすることを何となく理解した。 このバトルロワイアルは、陣営リーダーとその配下の参加者のみが生還出来る。 いかに上手く参加者を多く引き込んで勝利するか、そういう陣取りゲームだ。 ラウラは……このゲームのルールの穴を突こうというのだ。 元よりこういった頭脳戦ゲームには強いフェイリスは、 「ニャるほど……確かにそれなら!」 胸の前でぽむ、と手を打ち合わせた。 「察しがついたようだな。出来る限り多くの仲間を引き入れて、グリードを排除、そして生還する……!」 決然と言い放たれたラウラの言葉に、フェイリスは光が見えた気がした。 殺されたくはないが、殺したくもない…… そんな二進も三進もいかない状況を打開するための最善策がここにある。 どうして今までそんな簡単な理由に気付かなかったのか、と自分を謗りたくなる。 だが、今はそういった小さなことどうでもいい。 「重要なのはコアメダル……それさえあれば帰れるニャ!」 するとなると、これから二人が挑んでいく戦いは、もはや殺し合いではない。 いかに多くのメダルを手にし、陣営を一つに纏め上げ、優勝するか。 言わばコレは――コアメダルの争奪戦、というワケだ。 “でも……フェイリスのメダルは、アルニャンが……” さっきまで所持していたライオンのメダルは、すでにここにはない。 イカロスが立ち去る前に返してくれていれば……とも思うが、 いいや、この場でそんな上手い話があるハズがないじゃあないか。 フェイリスはこれから、ラウラと共に、一からメダルを集めなおさねばならないのだ。 決意も新たに、ラウラを引き連れ歩き出そうとしたフェイリスだったが、 「……ちょっと待て、フェイリス」 ラウラがフェイリスの肩をつかみ、引き止める。 「その服……着替えないか?」 「ニャ?」 言われて見てみれば、確かにフェイリスの服装はもうボロボロだ。 あちこち黒く汚れているし、引きずられた影響でスカートは破れまくっている。 これでは清潔感など望めようはずもない。薄汚くすらあった。 それに加えて、動きづらいという理由も、ラウラの指摘にはあるのだが。 「ニャゥゥ……フェイリスのアイデンティティが……」 嘆くフェイリス。 二三歩歩いたラウラが、近くに落ちていたビニール袋を拾った。 中に入っているのは――何かのコスプレのような、白い制服。男女用、二着だ。 それは、男女両方の制服を着こなすシャルロットに支給されていた支給品。 さっきの戦いで、セシリアが落とし、そのまま放置していったものだった。 そしてそれは、一目みればわかる。ラウラと同じ衣装だった――! 「これに着替えるといい。私と同じ学校の制服だ。メイド服よりは動き安いだろう」 「……コレ、ラウニャンとおそろいニャ!?」 「まぁ……そうなるな」 フェイリスの表情が、ぱっと明るくなった。 この可愛らしいラウラと同じコスプレ衣装がそこにあるのだ。 元々フェイリスはコスプレが好きだ。メイド衣装は惜しいが…… しかしこれを着ることでこの可愛いラウラとお揃いになれるなら、悪くない。 フェイリスは喜んで着替えを受け取ると、近場の建物の物陰へ走った。 ――と、その途中で、赤い携帯電話のような玩具があることに気づき、 『ってオイ! お前、オイ! ソレッ!!』 それに意識を向けた瞬間、頭の中でモモタロスが声を荒げた。 拾えというのだろうか。一度立ち止まり、それを手に取って眇める。 液晶画面が透明になって透けているソレは、玩具にしか見えない。 「この玩具がどうかしたのニャ? モモニャン」 『どうしたもこうしたもねぇ! そいつぁ玩具なんかじゃねーんだよ! そいつぁなぁ! 俺たちの……俺たちのッ! ケータロスじゃねーかッ!!』 頭の中で騒ぎ立てるモモタロス。 ウラタロスやリュウタロスらも、何処かざわついていた。 なんだってこんなところにケータロスが、とか。 もうクライマックスフォーム? になれないかと思っていたよ、とか。 っていうかケータロスなくなってたんだ、気付かなかったー、とか。 ちなみにみんながそうやって騒いでいる間、キンタロスは居眠りをしていた。 「これ、みんなにとってそんなに大切なものなのニャ?」 ケータロスの何度かかぱかぱと開け閉めして遊ぶフェイリス。 フェイリスは、この玩具の有用性がまったくもって理解出来ていなかった。 それでまたイマジンたちは騒ぐのだが―― 『なんだ、騒がしい……我の眠りを妨げるでない!』 「え?」 聞いたことのない声が、フェイリスの頭の中で響いた。 男の声だ。静かで、それでいて何処か厳かで、高貴な声。 四人のイマジンのうち、誰のものでもないその声は―― 『わー! 鳥さんだー!』 『お前、いないと思ったらこんなとこにいやがったのか!』 『おお、誰かと思えば我の家来ではないか。こんなところで何をしているのだ?』 紫のイマジンと赤のイマジンに、その「白いイマジン」が答える。 今まで眠っていたのであろうそいつは、状況をまるで理解してはいない。 おそらく、ここが殺し合いの場であることにさえ気付いてはいないのだろう。 フェイリスは小首をかしげながら、頭の中の白いイマジンに質問する。 「……鳥さん、ニャ?」 『なんだ貴様は? 頭が高い! 我は王子であるぞッ!』 「えっ!? ご、ごめんニャさい……ッ!」 『あははー! ニャンニャンが鳥さんに怒られてるー!』 どういうワケか怒られた。 どうしてリュウタロスに笑われているのかわからなかった。 何が何だかわからぬうちに、フェイリスの脳内はまた賑やかになった。 元からフェイリスは重度の中二病を患っているのだ…… 見る人によっては、更にヤバく見えるかもしれない。 ○○○ 地表を車ほどの速度で滑空していたISが、光となって消失した。 高さにして一メートルほどの地点から、セシリアは飛び降り着地する。 周囲を見渡すが、セシリアを追ってくる影は見られなかった。 あの天使の姿をしたバケモノは追いかけてきていない。 ほっと胸をなでおろしたセシリアは、首輪の中のメダルに意識を向ける。 「……消耗、しすぎましたわね……」 手の平に、セルメダルが五枚転がった。 これが今のセシリアが持てるありったけのセルメダルだ。 五枚。少なすぎる。 完全にメダルが尽きる前にISを解除したのだが、これでは無いも同然ではないか。 ISの自己修復にも時間は掛かるだろうし、もうこれ以上はISにも頼れない。 今後は拳銃一つでなんとかメダルを集めていかねばならないなと思った。 その為にも、さっきのような考えのない戦いをしてはいられない。 「ああ……いけませんわね……私としたことが」 さっきはシャルのことで、気がどうにかなりそうだった。 とにかく前に向かって動いていないと、気が狂いそうだった。 だから手当たり次第に襲いかかって、殺そうとしたのだ。 だが、相手の戦力を見計らわずに挑むのは無謀すぎる。 今回のミスは、教訓として先に活かしていこう。 「……これからは……もっと賢くいきませんと……ね」 賢く……そうだ。 殺し合いに乗っていない人のフリをしよう。 なんとか集団に取り入って、油断してるうちにこっそり殺そう。 一人でも殺せばセルメダルもどっと補充できるだろうし、そうなればあとは簡単だ。 ISを起動して、残りのチームメイトも殺せそうなら一気に殺してしまうのがいい。 「ええ、それがいいですわ……そうしましょう……ふふ」 騙し打ちで賢く、確実に殺していくのだ。 そうやって殺せば、きっとちゃんと殺せる。 もっと殺すためにも、それで殺していくのが一番だ。 ああ、殺すのがいい。それで殺して、もっと殺していくのだ。 だから、殺そう、殺そう。一人でも多く、どんな手段を使ってでも、殺そう。 もっと殺せば、一夏とセシリアだけでも幸せになることが出来る。 たくさん殺したから、幸せになる権利を得ることができる。 ここはそういう世界だ。だから殺さなくては……! 「ああ……そうですわ……早く……誰か……殺しませんと……」 見開かれた目は笑っていないのに、口元だけが緩く微笑んでいる。 セシリアの心は、もうとっくに壊れていた。 人の心というものはそれほど強いものじゃあない。 今まで平和に暮らしていた人間が、いきなり人の死を見せつけられて、 その上親友の一人をこの手で惨殺してしまって、それでPTSDに陥らないワケがない。 だが、それも元をたどれば、すべてたった一人の愛する男のため。 「そうですわ……これも全部、愛する一夏さんのためですもの…… 一夏さん……ああ、一夏さん……何処にいらっしゃいますの? 私、殺しますから……沢山殺しますから……一緒に……ふふっ」 早く会いたい。愛する殿方に、一刻も早く会いたい。 だが、そのためには一人でも多くの敵を殺さなければならない。 だから、殺すための武器は常に万全の状態に整えておかなくては。 うわ言を呟きながら、セシリアは拳銃に予備の弾丸を詰めていく。 そんな倫理観の狂ってしまった少女の耳朶を打ったのは―― 悲痛な事実を告げる、定期放送の音声だった。 【一日目-夕方(放送直前)】 【D-5/市街地 北西寄り】 【セシリア・オルコット@インフィニット・ストラトス】 【所属】青 【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、精神疲労(極大)、倫理観の麻痺、一夏への依存 【首輪】5枚:0枚 【装備】ブルー・ティアーズ@インフィニット・ストラトス、ニューナンブM60(5/5 予備弾丸17発)@現実 【道具】基本支給品×3、スタッグフォン@仮面ライダーW、ラファール・リヴァイヴ・カスタムII@インフィニット・ストラトス 【思考・状況】 基本:一夏さんと二人で生還したいので、邪魔者は殺しますね? 1.一夏さんが欲しい。ので、敵は見境なく皆殺しにしますわ! 2.一夏さんのためなら何だって出来ますの……悪く思わないでくださいまし。 3.一夏さんのために行動しますの。殺しくらいなら平気ですわっ♪ 【備考】 ※参戦時期は不明です。 ※制限を理解しました。 ※完全に心を病んでいます。 ※一応、青陣営を優勝させるつもりです。 ※ブルーティアーズの完全回復まで残り6時間。 なお、回復を待たなくても使用自体は出来ます。 NEXT ろくでなしブルース(後編)
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投稿日:2009/10/31(土) 告げられた言葉は、簡潔極まりないものだった。 「加藤さん。あなた、追試だから」 「ええっ !?」 放課後の職員室の中、周囲の教師たちが好奇の視線を向けてくるのにも構わず、 真理奈は露骨に嫌そうな声をあげた。 平凡な公立高校らしく、身にまとっているのは地味でシンプルな冬物のセーラー服だが、 彼女はそれが似合わない、長身で派手な雰囲気を持つ生徒だった。 鮮やかな輝きを放つ短めの茶髪は、校則の厳しい学校ならば、 即座に取締りの対象となってしまうだろう。 そして顔を飾るくっきりした目鼻立ちが、彼女を実年齢よりも大人びた姿に見せていた。 二年C組、加藤真理奈。顔とスタイルの良さを武器に、 あちらこちらに迷惑を撒き散らす、トラブルメーカーの女生徒である。 いつもは強気な態度を崩さない彼女も、このときばかりは困った様子だった。 後ろ手に組んだ両の指を落ち着きなく動かし、所在なさげに突っ立っている。 そんな真理奈の前では一人の女教師が椅子に座り、彼女を鋭い視線で射抜いていた。 「ええっ、じゃありません。あなた、自分の成績わかってるの?」 「え、えっと……そういや、今回はちょっと悪かったかも……」 「ちょっと?」 世界史教師の升田は、眼鏡の奥で細い目を光らせた。 まだ若い。真理奈の記憶によると、たしか二十代の後半だったはずだ。 黒のショートヘアと、細身の体を包み込むぱりっとしたスーツ、そして縁なしの細眼鏡と、 見るからに知的な印象を感じさせる女である。 升田はデスクの前で椅子をきしませ、真理奈を見上げて言った。 「あなたの基準では百点満点で一桁は、『ちょっと悪い』ということになるのね。 じゃあ、『とても悪い』ときはいったい何点なのかしら? コンマ以下? ゼロ? それともマイナス? すごく気になるわね」 「い、いいえ……どーなんでしょ、あははは……」 真理奈は冷や汗をかきながらも、内心、はらわたが煮えくり返る思いだった。 こんな嫌味くさい女の説教を、なぜ自分だけ受けなくてはいけないのか。 升田は、彼女が密かに自分に敵意を向けていることには気づかず、冷徹に真理奈に告げた。 「まったく。この学年で世界史の追試はあなただけよ。少しは恥ずかしいと思いなさい」 「え、あたしだけ?」 「そう、あなただけ。中間で落とした子もちゃんと期末で取り返してるっていうのに、 本当にあなたときたら……。少しくらいやる気はないの?」 「すいません……」 この升田という女教師は厳しいことで知られる。しかも短気で毒舌家だ。 不真面目な生徒は容赦なく怒鳴りつけ、不出来な者はこうして呼びつけ説教をする。 美人で熱心な性格のため、一部には高い人気を誇るが、 その厳しさゆえに彼女を苦手とする生徒も多い。人によって好みがはっきり分かれる教師と言えた。 成績が悪く、授業態度もいいとは言えない真理奈にとって、そんな升田は、 言うまでもなく、あまり関わりたくない相手である。 だが試験で赤点を取ってしまったからには、升田の言う通り、大人しく追試を受けなくてはならない。 しかも追試は彼女ただ一人。 必然的に升田と一対一で向かい合い、針のむしろに座らされることになる。 ようやく二学期も終わろうかというのに、なんと悲惨なことだろうか。 非は自分にあるとはいえ、真理奈はこの女を憎まずにはいられなかった。 手のひらの汗を握りしめる真理奈に、升田が相変わらずの冷たい声で言った。 「そういうわけだから、試験範囲は中間と期末で出したところ、全部よ。 ちゃんと勉強しておきなさい」 「え……二学期の範囲、全部ですか? それはちょっと……」 「もう期末試験は終わってるんだから、授業もほとんどないでしょ? 頑張って勉強して、今度こそ合格してちょうだい。さもないと単位は出せません」 「う、うう……」 教師の容赦ない言葉に、少女はうなずくしかなかった。 「話は以上です。試験日はまた連絡しますから、準備しておくように」 「はい、わかりました……」 形だけぺこりと頭を下げ、真理奈がその場を立ち去ろうとすると、 デスクに向かった升田の指に、小さな指輪が光っているのが目に入った。 そういえば、少し前に結婚したと、校内で噂になった覚えがある。 私生活について、少なくとも生徒たちには何も語らない無愛想な女だが、 こんな鬼教師でも嫁のもらい手があるのかと、真理奈は世の不条理を嘆き悲しんだのだった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「――っていうわけでさあ。もう最悪。マジ最悪」 カウンターに力なく突っ伏し、真理奈は息を吐いた。 それに答えるのは彼女と同じ年頃の、爽やかな少年である。 「それは大変だね。まあ、頑張って勉強してよ」 「あの女と同じこと言わないでくれる !? あー、腹立つ……」 「あっはっは、今日はおかんむりだね」 少年は冬物の私服に身を包み、座る真理奈の正面に立って、彼女を悠然と見下ろしていた。 この上なく端正な顔立ちをしているが、不思議と印象は薄く、 まるで空気のように存在感がない。どこかとらえどころのない、風変わりな少年だった。 明るい顔と声で笑う少年に、彼女は不機嫌そのものの声で言った。 「当たり前でしょ !? あんな年増の鬼婆に説教されて、ニコニコできるわけないじゃない!」 「まあまあ、ちょっと落ち着いて」 ここは住宅地の中に埋もれるような場所にある、小さなドラッグストアだ。 狭く地味な店内には真理奈一人しか客がおらず、店員らしき人物もこの少年だけだった。 あまり商売が成り立っているようには見えないが、真理奈はこの店がお気に入りで、 よく下校途中に立ち寄っては、何を買うともなしに彼と世間話に興じることにしている。 「はい。これでも飲んで、機嫌直してよ」 彼女は店の奥から少年が持ってきたコーヒーカップを礼も言わずに受け取ると、 湯気の立つミルクティーを喉に流し込んだ。甘いクリームの味が口内に広がり、 師走の北風に冷やされた真理奈の体をゆっくり温めていく。 「ふぅ、おいし」 「それはそれは。喜んでもらえて何より」 両手でカップを持ち、子供のような仕草でそれを口元に傾ける真理奈を、少年が笑顔で見つめている。 真理奈は貪るように紅茶を飲み干すと、彼にカップを突き出した。 「おかわり」 「はいはい、ちょっと待ってね」 苦笑した様子で店の奥に引っ込み、またすぐに戻ってくる。 二杯目の紅茶を慇懃に差し出す少年に、彼女がため息混じりに言った。 「あ~、それにしてもあの女……マジすっごいむかつくわ。 このあたしに追試を受けさせようだなんて、頭おかしいんじゃないの?」 放課後呼び出された職員室でのやり取りを思い出し、真理奈は吐き捨てた。 愚痴とぼやき混じりに升田を罵ってみせるが、それも所詮、負け犬の遠吠えでしかない。 どう足掻いても追試は受けなければならないし、そのための勉強も必要なのだ。 向こうは教師でこちらは生徒。この立場の差はいかんともしがたい。 少年はそんな真理奈の文句を黙って聞いていたが、やがて彼女に問いかけた。 「で、君としてはどうするつもりなの?」 「どうするもこうするも……そりゃー悔しいけど、大人しく追試受けるしかないわね。 相手は先生なんだもん。あたしに何ができるってのよ」 「へえ、意外だね。君はそんなに大人しい女の子だったっけ?」 「何よ、その言い方は」 少年は自分の薄い唇に手を当て、目を細めている。その表情に真理奈は見覚えがあった。 小学生の頃、クラスの悪童が悪戯を思いついたとき、よくこんな顔をしていたものだ。 彼女は相手の真意をうかがうように、カウンターの向こうに立つ少年を見上げた。 「……あんたがそんなこと言うからには、助けてくれると思っていいのよね?」 「もちろんさ。実は、以前作った薬の改良版ができてね。実験したいと思ってたんだ。 良かったら、君が試してくれると助かるね」 手に持った小さな紙箱をからから鳴らし、微笑む。市販の目薬とほぼ同じ大きさだが、 この少年が作ったものとなれば、普通の薬ではないだろう。 ひょっとしてこれを使えば、あの尊大な女教師に目に物見せることができるかもしれない。 真理奈は少年からその紙箱を受け取り、唇の端を不敵につり上げた。 「いいわ。よくわかんないけど、試してあげようじゃないの」 「話が早くて助かるね。じゃあ、イタズラの計画を立てるとしようか」 彼は上機嫌で、真理奈に笑いかけた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ある日の放課後、水野啓一は放送で生徒指導室に来るようにと連絡を受けた。 終業式も差し迫った師走の午後である。もう試験は終わっているので授業もほとんどなく、 特に部活のない者は昼頃に帰宅することができた。 啓一はサッカー部に所属しているが、この日は練習もなく、真っ直ぐ家に帰るつもりでいた。 そこへ突然の呼び出しである。彼が疑問に思うのも無理はなかった。 「啓一、呼び出しって何だろうね?」 一緒に廊下を歩いていた双子の妹、水野恵が彼に尋ねた。 長い黒髪をストレートに垂らした、清楚で落ち着いた娘である。 「さあ、何だろうな。世界史の升田先生だろ? 呼び出したの」 啓一は窓の外を見ながら、妹に聞き返した。 十二月の青空には灰色の雲が浮かび、冬らしく寒々とした雰囲気を漂わせている。 今日も冷えるなとつぶやき、軽く身を震わせた。 「ひょっとして啓一、何かしでかした? それで升田先生に怒られるとか」 「そんなわけないだろ。お前だって知ってるくせに」 啓一と恵は、二人揃って優等生である。成績は常にトップクラス、さらにスポーツ全般に通じ、 その上二人とも、整った顔と均整のとれた肢体に恵まれていた。 どちらも負けず劣らず、理想の優等生の兄妹として、教師たちにも受けがいい。 当然、素行にも問題などあるはずがなく、 今のように生徒指導室に呼び出される理由は思いつかなかった。 「まあ、先生に直接聞いてみればいいか」 「そうだね。そうしよっか」 二人は目的の部屋に到着すると、ドアを軽く叩き、中で待つ人物に話しかけた。 「失礼します。二年の水野啓一と、水野恵です」 「来たわね。入りなさい」 啓一と恵が室内に入ると、奥に世界史の担当である升田美佐が座っているのが確認できた。 狭い部屋で窓はない。その上、資料の詰まった本棚が壁の辺りを占領しているため、 四、五人も入れば一杯になってしまいそうだ。 何の飾り気もない長方形の机が一つ中央に置かれ、そしてその手前にパイプ椅子が二つ並んでいる。 升田は座ったまま二人を見つめ、穏やかな声を発した。 「二人とも、鍵をかけて、そこに座って」 「はい。わかりました」 カバンを足元に置き、並んで腰を下ろす。二人は升田と向かい合う形になった。 いつもの細眼鏡の奥で、鋭い眼光がこちらを見据えている。 少々気圧されつつも、啓一は教師に問いかけた。 「それで、僕たちに何のご用でしょう。升田先生」 「ええ、二人に大事な話があるの。聞いてくれる?」 「はい」 机の上には、メーカーのロゴが入った黒のトートバッグが、無造作に置かれていた。 彼女の堅物のイメージには今ひとつそぐわない品だが、成績表か資料でも入っているのだろう。 兄妹二人にじっと見つめられ、升田は口を開いた。 「あなたたち、二年の加藤真理奈って子、知ってる?」 「え? ええ……一応、友達ですけど……」 意外な名前を出され、恵が戸惑いながらも答えた。 真理奈は二人の顔見知りであり、一応は友達と呼べなくもない存在だった。 もっとも、向こうがどう思っているかは、よくわからない。 何しろ勝気なトラブルメーカーの加藤真理奈と、人望厚い優等生の水野恵では、タイプがまるで違う。 共に人気の美少女だが、真理奈の方は恵を一方的にライバル視している部分があるため、 大人しい彼女としては少々困ってしまうというのが、正直な感想である。 だがそうした複雑な説明を教師にできるはずもなく、恵の返答は当たり障りのないものにとどまった。 「そう。一応ね……一応……」 升田はその言葉を噛みしめるようにつぶやき、眼鏡を指で整えた。 ひょっとして気に入らない返答だったか、と二人は緊張したが、構わず彼女は後を続けた。 「実はね、加藤さんが追試を受けることになっちゃったのよ」 「はあ……追試ですか……」 「頑張って合格してもらわないと、先生も困るのよ。わかる?」 「はい、わかります」 啓一はうなずきつつも、話の流れがどうにも読めず、教師の顔を見ながら眉を曇らせた。 規定の点数に満たない者は追試を受けることもあるのだろうが、 優等生の二人はそんなものに縁はない。 啓一も恵も、他人の点数をあまり気にしたことはなかったので、 なぜこの場で真理奈の成績のことが話題になるのか、二人して首をかしげるばかりだった。 「しかも、二年で追試に引っかかったのは加藤さん一人だけなの。 可哀想だし、何とか助けてあげたいじゃない?」 二人はますます訝しんだ。 真理奈を助けてやりたいと言うが、担当教師の升田にしてみれば、簡単な話だろう。 形だけ追試を受けさせて合格にすればいいし、あるいは追試そのものを免除し、 試験の点数に救済措置を施して――要は下駄を履かせて、無理やり合格にしても構わない。 つまりは、升田さえその気なら、真理奈の成績などどうにでもなる。 それなのに、なぜ彼女とは直接関係がない二人が、わざわざここに呼ばれたのだろうか。 脳内で疑問符を点滅させる双子の兄妹を見やり、升田はようやく本題に入った。 「それでね。あなたたちに、ちょっと協力してほしいの」 「協力……ですか? それはいいですけど、いったい何をすれば……」 追試の対策のため、真理奈の試験勉強につき合えとでもいうつもりだろうか。 二人は世界史の成績も極めて良かった。必要ならば、彼女の勉強を手伝ってもいいと思う。 やや相性の悪い面もあるが、一応、真理奈は二人の友人だ。困っているなら助けてやらねば。 口を開こうとした恵を制止し、升田はトートバッグの中に手を差し入れ、あるものを取り出した。 「あなたは、これを使ってちょうだい」 「え?」 恵はそれを見て、驚きの声をあげた。 升田が取り出したものは、家庭用のビデオカメラだったのだ。 黒いボディは小ぶりで持ちやすいサイズだが、レンズは大きく、無言の光沢を放っている。 「使い方わかる? なんか色々機能ついてるけど、まあそんなのはどうでもいいわ。 とりあえず撮れたらオッケーだから」 「は、はあ……。多分使えると思いますけど、でもなんで……?」 「いいから、今からしばらくの間、それで先生を撮影してちょうだい」 「…………?」 啓一と恵は顔を見合わせて互いの疑問を視線で交換したが、 教師の唐突で不可解な命令に、どちらも腑に落ちない表情だった。 手渡されたビデオカメラをいじりながら、どうしたものかと躊躇する恵に、升田が厳しい口調で言う。 「早くしなさい! 先生の言うことが聞けないの?」 「はっ、はい……。わかりました……」 唾を飛ばして怒鳴る升田の姿に身を竦ませ、仕方なく彼女はカメラを構えた。 家にあるものと似たような型なので、大体の操作方法はわかる。 恵は教師にレンズを向け、スーツ姿の女教師の姿を撮影し始めた。 それを確認し、升田はにやりと笑ってみせる。 冷徹な彼女に似合わないその笑みに、二人は驚きを隠せなかった。 「そう、それでいいの。あなたはしばらくそのまま、撮り続けてね。絶対よ」 「はあ……」 「で、先生。僕の方は何をすれば……」 戸惑いながらも尋ねてくる啓一に顔を向け、彼女は楽しそうな声を出した。 「うん。あなたには、もっと大事な仕事があるの。ちょっとこっちに来て」 彼はその言葉に従い、立ち上がって机の向こう側に移動した。 升田も席を立ち、狭い部屋の中、啓一の隣に並んでみせる。 彼女はそこそこの長身で、啓一との身長差はあまり感じられなかった。 恵よりは高く、啓一より少し低いくらいだろうか。 スレンダーな体のラインにぴったり合った黒のスーツが、 眼鏡をかけた知的な風貌と合わさって、静かな大人の女の魅力をかもし出していた。 校内を流れる噂によると、最近結婚したらしい。 特に聞いてはいないが、苗字は変わったのだろうか。 二人が升田を見ながら、ぼんやりとそんなことを考えていると、女教師が次の動作に移った。 「啓一君、こっち向いて」 「はい――って、んっ…… !?」 升田は啓一の首に両手を回して背伸びをすると、無防備な彼の唇に自分のを重ねた。 突然のことに唇を奪われた啓一も、それを撮影していた恵も、驚愕のあまり硬直してしまう。 「ん、ううんっ……んむっ、んん……」 女教師の舌が生徒の唇に割って入り、彼の口内に侵入する。 柔らかな侵入者の感触に、彼は両腕を力なく垂らしたまま、動くことができなかった。 新妻の教師とその生徒の激しい接吻が、ビデオカメラの前で繰り広げられる。 「け、啓一…… !?」 恵は異様な事態に狼狽しつつも、言われた通りに撮影を続行した。 途中で撮るのをやめると怒られると思ったからだが、やはり多少の好奇心も否定できない。 升田の舌が啓一のそれに絡みつき、彼の中に唾液をたっぷりと流し込む。 なぜ真面目な教師がこのような振る舞いに及んだのか。啓一も妹と同様に狼狽していたが、 相手が教師ゆえ乱暴に引き離すわけにもいかず、されるがままに口内を貪られるしかなかった。 「ん……ちゅ、くちゅっ――ぷはぁっ……」 やがて満足したらしく、升田は啓一の口から離れると、二人の唇を繋ぐ唾液の線を指で拭い去った。 いつも雪のように白い頬は朱に染まり、冷徹な瞳には彼が見たことがない、淫蕩な色が浮き出ている。 なぜ。いったいなぜ。心の疑問が解けぬまま、彼は升田にきつく抱き締められていた。 普段は授業を淡々と進めるその唇が、思いもよらぬ言葉を発する。 「ん……やっぱディープなキスは最高ね。どう、あたしのツバ美味しかった?」 「せ、先生……な、なんでこんな……」 「そんなの、あんたがイケメンだからに決まってんじゃない。他に理由ある? いいから大人しくしてなさい。あんまウジウジ言ってると、このまま逆レイプしちゃうわよ」 「升田先生……ど、どうしちゃったんですか……?」 カメラを下ろして問いかける恵を、女教師は眉をつり上げて怒鳴りつけた。 「こらそこっ! ちゃんと撮っとけって言ったでしょ !? 何のためにあんたを呼んだと思ってるのよ! ほら、カメラ構えて!」 「せ、先生、ホントにどうしたんですか……?」 「早くしなさい。あたしの言うこと、聞けないの?」 升田は一旦啓一から離れ、恵に予想外の言葉をぶつけた。 「あたしに逆らったら世界史の点数は0点になるわよ。あんたも追試受けたい?」 「ええっ !? な、なんでそうなるんですか! 横暴です!」 「嫌なら大人しくカメラ回しとくのね。それに、あんたも興味あるでしょ? いつも無愛想なこの女のエッチな場面なんて、滅多に見れるもんじゃないわよ」 にんまりと口を三日月の形に開き、奇妙な台詞を放つ升田。 まるで別人になってしまったかのような女教師の変貌ぶりに、二人は声も出ない。 升田は訝しがる兄妹を満足げに眺めながら、自分の服を一枚ずつ脱いでいった。 上着から腕を引き抜き、厚手の白いシャツを脱ぎ捨て、膝丈のスカートを床に落とす。 そして露になった自分の下着姿を見下ろし、彼女は感心した様子で言った。 「へー、意外とエッチなもんつけてるじゃない。やっぱ新婚だからかな?」 腰のベルトから吊り下げられた、薄いベージュのガーターストッキング。 ショーツとブラジャーはそれよりやや濃い色で、派手なフリルのデザインだった。 細身だが尻や胸の肉づきは決して悪くなく、柔らかな体のラインがありありとわかる。 恵や真理奈とは一線を画した妖艶な裸体から、啓一は目を離すことができなかった。 「な、なんで脱ぐんですか、先生……」 「そりゃー、今からあんたと楽しいことするからに決まってるじゃない。うふふ♪」 「そ、そんな……やめて下さい……」 「ふーん、まだそんなこと言うんだ。あんたたち、一緒に破滅したいの?」 紅の入った自分の唇をぺろりと舐め、升田が笑う。 「今ここで大声出したら、あんたたち、どうなると思う? しかもビデオなんて回しててさ。二人がかりであたしに乱暴して、 その映像を脅迫材料に――なんて思われちゃうかもね」 「そんな……!」 二人は歯噛みして、女教師をにらみつけた。 冷静に考えれば、カメラの中には升田が啓一を誘惑するシーンが収められているため、 そのような展開はありえないはずだが、それでも教師との淫らな関係を疑われ、 今まで模範的な学生だった啓一の名前に傷がつく可能性はあった。 二人を追い詰めるように、升田が続けた。 「それにあたしは知ってるのよ? あんたたち兄妹が、実は好き合ってるってこと。 血の繋がった実の兄妹、双子同士で犬みたいに絡み合って……やだやだ、不潔だわ」 「!? ど、どこでそれを……!」 啓一と恵、双子の兄妹の間に戦慄が走った。 確かに彼女の言う通り、周囲に内緒でこっそりと恋人つき合いをしている二人だが、 その関係を知る者は極めて少数で、彼らとほとんどつき合いのない升田が、 このことを知っているはずがなかった。 女教師は、自分の豊満な乳房をブラジャー越しに撫で回しながら、彼らに問いかけてくる。 「わかんない? まだわかんないの? あたしのことが」 「…………」 啓一はにやけ顔の升田を見返し、思案に暮れた。 とにかく事態が異常すぎて、なかなか理解が追いつかない。 突然升田に呼び出され、彼女から肉体関係を強要されつつあるということ。 彼女は人が変わったように非常識な態度を見せ、さらに啓一と恵の関係も知っているということ。 そして最初に話題に出てきた、加藤真理奈の追試の件。 加藤真理奈。その名前に啓一は引っかかるものがあった。 彼女はたしか、奇妙な薬を持っていたはずだ。 飲んだ者同士の精神を入れ替える、不思議な錠剤。 真理奈はそれを使い、よく悪戯を繰り返していた。 ということは、まさか――。彼はようやくその結論にたどり着いた。 「あんたもしかして、加藤さんなのか……?」 「ピンポーン♪ やっとわかったわね、遅いわよ?」 升田は下着姿のまま腰を振り、その場で得意げにくるりと一回転した。 とても普段の彼女からは考えられない、分別を欠いた行動。 自分たちとほとんど接点のない彼女が、二人の重大な秘密を知っている理由。 それらは全て、升田の姿をしたこの女の正体が学年一の迷惑娘、 加藤真理奈であるとすれば納得がいく。 おそらく、またあの薬を使って升田と入れ替わったのだろう。 しかしそれにしても、なんと迷惑なことを。啓一は歯軋りせずにはいられなかった。 対照的に、升田は楽しくてたまらないといった様子で不敵に笑っている。 「新しい薬が手に入ってさ。 今度は入れ替わるんじゃなくて、あたしが一方的にこの女の体を使ってるの。 すぐバレるかと思ったんだけど、意外とあんたたちも鈍いのねえ」 「なんで……なんで加藤さん、こんなことするの?」 律儀にカメラを構えたまま、恵が問う。 「だってこの女、前々からうるさかったし、あたしを捕まえて追試受けろとかウザすぎなんだもん。 だからこうして弱みを握って、楽していい成績をいただいちゃおうってわけ」 「弱み?」 「そうよ。新婚ホヤホヤの女教師が教え子に手を出すなんて、面白いネタだと思わない? 学校に暴露するって脅してもいいし、旦那さんにバラすって脅かしてもいいし、 どっちにしても、なかなか楽しいスキャンダルだわ」 つまりは、ここで升田の姿をした真理奈と啓一が性を交え、 その現場を撮影して、後で升田を脅迫しようというわけだ。 たかが学校の成績一つで、まさかここまで大それたことを考えるとは。 そのやり口に顔が青くなった二人は、何とか彼女を説得しようとするが、女教師は止まらない。 「せ、先生を脅迫するつもり…… !? そんなことやめようよ、加藤さん……」 「そうだよ、もしバレたら進級どころじゃない。大人しく試験受けよう、加藤さん」 「何言ってんの。今のあたしは正真正銘、あの偉そーな女教師なのよ? バレるわけないじゃん。 だいたい追試とかさー、あたしがまともに勉強するとか思ってる? まあそういうわけだから、あたしが無事に進級するためにも、ね、協力してちょうだい」 「勉強するなら手伝うからさ……お願いだ、加藤さん。こんなことやめてくれ」 「イ・ヤ♪ さあ水野君、先生と愛し合いましょ……ふふふ」 半裸の升田が自分の胸を揉みながら、啓一に近寄っていく。 恵はカメラを机の上に置くと、双子の兄を助けようと立ち上がった。 「加藤さん、馬鹿なことはやめて! このことは誰にも、先生にも言わないから、やめなさい! 追試に受かりたいからって、何もこんなことする必要ないじゃない !!」 「成績の話だけじゃないわ。はっきり言っとくけどね、あたしはこの女が大嫌いなの。 年増のヒステリーの分際で、この真理奈様にケンカ売ろうなんて百万年早いわ」 「加藤さんっ! いいからやめるんだっ!」 狭い室内で、恥じらいもなく下着姿になって妖艶に笑う女教師と、 それを挟んで説得を続ける二人の生徒。 三人の口論を中断させたのは、突如として部屋に響いた、穏やかな声だった。 「まあまあ。二人とも、いいじゃないか。たまには真理奈さんにつき合ってあげなよ」 「…………!」 その声に三人が振り返ると、粗末なパイプ椅子の上に、あの少年が優雅に腰かけているのが見えた。 いったいいつの間にこの密室の中に侵入したのだろうか。 常ながら人知を超えた、非常識な存在である。 双子は少年に気づくと、どちらも納得した表情を顔に浮かべた。 「そうか……加藤さんをけしかけたのは、あんただったのか……」 「その通り。ちょうど以前の薬を改良したから、つい試してみたくなってね。 啓一君は覚えてるかい? 君の叔母さんが従妹の希ちゃんに乗り移った、あの薬だよ」 「あのときの……!」 彼の言葉に、啓一は思わず唇を噛んだ。 以前、彼が叔母の家に立ち寄った際、叔母は謎の薬を飲んで実の娘、啓一にとっては従妹にあたる 希という少女に乗り移り、そのまま成り行きで啓一と交わってしまったのである。 あのときは半信半疑だったが、この少年が裏で手を回していたと聞けば納得がいく。 しかし自分たちどころか、その親戚まで薬の実験台にされていたとなれば、 とても愉快な気分にはなれなかった。 升田は少年と啓一を見比べ、怪訝な顔をしている。 「なんだ。あんたたち、知り合いだったの?」 「うん。啓一君も恵さんも、僕の大事な友達だよ」 「…………」 啓一と恵は、反応に困るとでも言いたげに肩をすくめた。 過去、彼ら兄妹とこの少年の間に、いったい何があったのだろうか。 升田は多少の関心を示したが、今の彼女にはそれよりも優先すべきことがあった。 「ま、来てくれたんならちょうどいいわ。 あんたからもその二人に言ってやってよ。この女教師をハメ撮りするから手伝えって」 「ということらしいよ?」 少年は椅子に腰かけたまま、啓一と恵に笑いかけた。 男であれ女であれ、見る者を虜にしてやまない美貌が、柔らかく微笑して言った。 「君たちに迷惑はかけないようにするから、ぜひ協力してくれないかな」 「いや、でも……」 「だって、先生の体を勝手に……」 「大丈夫だよ。君たちの身の安全は、僕が保証するとも」 二人は顔を見合わせた。この少年は基本的に嘘はつかない。 安全を保証すると言ったら、本当に後腐れのないように取り計らってくれるのだろう。 だが、自分たちが教わっている教師をもてあそんで脅迫するなど、 二人とも、そう簡単にうなずくことはできなかった。 一方、少年と升田――女教師の姿をした真理奈のしつこさはそれ以上だった。 「ほら、何事も勉強だよ。それに友達を助けるためでもあるんだよ?」 「いいからあんたたち、手伝いなさいって。さもないと絶対に後悔させてやるんだから」 「…………」 結局、啓一と恵は二人揃って、ため息をつくしかなかった。
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Enter、Enter、Enter、↓、Enter…… キーボード万歳。 やっぱりこっちのが、マウスいじってるより全然楽だって。 ……はいはい、Enter、Enter、っと。っと? 「おおぅ」 びっくりした。 でも携帯って、スカートのポケットとかでブルブルしてもらわないと気づかないんだよね。いまヘッドホンだし。 件名:もうすぐ帰ります 本文:こなちゃん、お仕事おわりました。あと十五分くらいで着くと思います つかさって、こうゆうとこ丁寧でいいな。 私が送ったメールなんて、件名に全部Re とかついてるよ。ああ、あと『無題』。 「てことで、転送」 マイPCのつかさフォルダがまた1つ成長しました。 つかさメールがスパムに埋もれて消えるなんてあり得ないし。 「んじゃあ、そろそろ切り上げるかな」 ごはんとか、あっためなおさないとね。 最後にぽちんとな。えんたー、っと。 あ。攻略中の女の子だ。顔あかくしてモジモジしてて、うん、大画面(20インチ)だとなかなか、刺激、てき… ……この、カッコ。 基本だ、基本的すぎる。だがそれはいい。 2年間も一緒に住んでるってーのに、私こんな大事なイベントスルーしてた? むぅ。いっしょーの不覚だっ! ―― 縁側世界 ―― う、ちょっとさむ。 つかさ、どんな顔するかなー。 やっぱ顔なんて真っ赤にして、わ、わとか言ってパニくってさ、それから、 いやちょっとま、もうこれ、ちょ、も、ああああ! ぴん、ぴんぽーん つかさリズムだ。インターホン、1秒でゲット。 『はい、ひーらぎです』 『こなちゃん、ただいまー』 『おかー』 我らが2DKも1秒で横断、これは記録更新しちゃったか? ここでイベント発動です。 玄関のノブに手をかけて、向こう側でつかさが待っていて。 やっぱり、ちょいと緊張するかも。ええい、いざっ! がちゃり、と。 「つかさ、おまたせー」 「こなちゃん! ただい」 笑顔のままストップするつかさ。可愛すぎるんですけど。 「ま……」 ぱさっとカバンおとしたつかさだけど、なんとかつないだみたい。 「……」 どきどき。つかさのリアクション待ちも楽しいなあ。 「こ、こなちゃん……どしタの、そのカッコ」 「ふっふっふ……よく聞いてくれました」 ふつう聞くだろーけど。 「私としたことが、基本中の基本を忘れてたんだよ!」 同棲とか新婚とか、この手のイベントはやっぱ必須だよ。 こほんっ、 「『おかえりなさい、ア・ナ・タ(はーと)。ご飯にしますか?お風呂にしますか?それともワ・タ・』」 「こなちゃんで」 「シ、なーんて」て、て、て。 あれ? 「……あの、つかささん?」 「こなチゃんで」 つかさ、なんか上半身ゆらゆら揺れてるんだけど。あ、玄関鍵しめるの? うん、最近物騒だし、施錠は大事だよね。 「あれだよホラ、定番ネタっていろいろあるじゃん? 裸エプロンなんてさ、もーギャグだよ、ね?……ね?」 「裸えぷろん。あ、裸にエプロンだから、そーいうんだね。そのまんまなんだ」 しまった。つかさには通じないネタだった。 鍵かけ終えたのか、つかさがこちらに振り向いた。もう目がヤバい。 焦点あってないよ。なんか私の肩ずっーとみてるけど。なんで肩? 「か、からかいすぎちゃった、かな? 着替えてく」 言い終わるより先に、つかさの手のひらが、私の肩に、ふれた。 そこ、かた、むき出しだから。なんだか、あたまがだんだん、くらくらしてきた。 だって、顔ちかいし。つかさ、息かかってるよ。なんか体重かかってきてる、よ? 「まだ、夕方だし、せめて荷物おいてからとか……っ」 「わ、わかってるんだけど……こなちゃんそれ、わたしもういろいろ無理で、その、ご、ごめんね?」 限界早っ!? 「ん、ぅ」 つかさの、小さな唇。 柔らかい。おいしい。きもち、いい。 あー、だめだ。もう足ちから入らない。舌とか反則だか、ら。 かくん、って膝が折れた。おしりに床の感触が、つ、冷た…… あれ、肩紐ほどけてる? つかさ、いつの間に。 そのまま肩から滑り落ちてくるつかさの手、を――なんとか押さえた。 「つ、かさ、ちょいまちっ」 「こ、こなちゃん、ちょっと、ちょっとつまむだけだからっ」 っておつまみじゃないんだから。 でもまあ。もういっか。ここは玄関だし、まだ夕方だね。でっていう。 「いやいやつかさ。せっかくの裸エプロンなんだから。エプロンはそのままっていうのが通なんだよ」 「あぅ、そーなんだ。うん、がんばってみる」 …… ちょっとつまむだけだって。はいレナさんお願いします。 『嘘だッ』 ……。玄関の電球、切れかけてるなー。明日あたり、換えの買ってくるかなー あー、背中、すこし冷たい。冬場の床にぺったりだし、あたりまえか。 うん、もー全然、寒くはないんだけど。 エプロン越しのつかさの体重があんまりに気持ちよすぎて、動く気がしない…… 「こなちゃん……」わ。 むねの中でもごもご言われたから、ちょっとびっくりした。 「んー?」 「いいにおい」 「ごはんできてるよー。そろそろたべよっか。お腹すいたっしょ」 つかさのと意味違うんだろーけど、はずかしいし。べつの方向でいこう。 「……うん、おなかすいた」 「……手、洗ってからね」 「それでは」 「うん!」 う、この笑顔とか、すこし赤い頬とかみてると、なんだかぽーっとなってくるなぁ。 ふたりのアパートで、つかさと……いやいや、いい加減なれようよ。もう2年だよ? でも、こんなちいさな食卓で。 明かりは強すぎないオレンジ色だし。 そんで、ふたりきりとか。もう、ああああ、もう、 「……こなちゃん?」 「あわ、ごめん、では」 だめだ、見つめすぎた。つかさの頬がさっきより赤い気がする。 「い、いただきますっ」「いただきまーす」 本日の献立: ごはん 鶏肉と野菜の甘辛煮(ピーマン抜き) ジュンサイ入り冷やしスープ 適当なフルーツポンチ etc 「こなちゃん、どんどんお料理すごくなってる……」 「まーねー、プロに下手なもの出す気にはなんないよん」 つかさは、お皿の鶏肉をつんつんしはじめた……あ、テレてる? 「あ、あはは、プロっていうか、まだ見習いみたいなものなんだけどね」 「でも、お金もらってるでしょ。じゃ、プロじゃん」 「うーん、そう、なのかな?」 そーなのです。 「しかも今年までなんでしょ? 見習いって」 「そうゆうわけじゃ、ないんだけど……でもちゃんと調理師受かれば、いろいろと違ってくるみたい」 もうすぐ調理師つかさ、かー。 でもつかさの料理、いつも食べてるけど、アレよりおいしい料理作れる人なんてホントにこの世に存在するの? 口の中の甘辛煮をもぐもぐしてみる。うん、結構おいしいよね。けど、ぶっちゃけレベルが全然違う。 「あの、こなちゃん」 「ほむ?」 つかさは、ぱくぱくフルーツポンチを減らしてるけど…… なんだか、目あわせてこない。なんか言いにくいこと、なんだろか。 「日曜日の午後って、時間ある、かな?」 日曜。んーと。たしか大学の友達と遊びにいってから飲み会、だったような。ああそうそう、忘年会だ。 「別になかったと思うけど」 それ以前に、つかさの用事に優先するような予定って想像つかない。 「でもつかさって、日曜仕事だったよね」 「うん、そうなんだけど……」 土曜もね。休みがあわないって私結構耐えられないんだけど、つかさは平気なん? ってうわ、ウザい女じゃん私。 「午後だけお休みもらったの。その、こなちゃんと居たいなって思って」 それは、そうなのかもしれないけど。 でも大事な、なにか話したいことがあるんだ。つかさ。なんだろ? 「こなちゃん、なんか、うれしそうだね」 「つかさもね」 お腹の奥が、くすぐったくなるような。そんな感じがする。 そっか、つかさ、日曜お休みもらったんだ。 そうだね。つかさの思ってるとおりだよ。 つかさの用事に優先するような予定なんて、私ぜんっぜん想像できないよ。 「とコろで、こなちゃん」 「ん?」 なんでお箸もって立ってるの、つかさ。 「着替えないの?」 ああ、そいえば、裸エプロンのままだった。 「ここストーブ近くて、びみょーに暑いんだもん。まーさっきあれだけ」っと、とと。 「……だし、つかさもさすがにへーきでしょ?」 いかん、顔赤くなる。キャラじゃないって。 「あの、うん、あと5秒くらいなら、なんとか……」 「でしょ、まあどうしてもつかさが困っちゃうってなったら、着替えてくるよ」 明日も仕事学校あるしね。あんまりしすぎるのもね。 5秒て。 「え、それもう詰んでない?」 「そうだね」 ■縁側世界(中編) に進む ■作者別保管庫(1スレ目)に戻る コメントフォーム 名前 コメント こなたww逃げてwww -- 名無しさん (2008-04-04 13 29 46)
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第6話『レスキューミー!/魔法使いさんは隣に(前編)』 勝利条件 ハングリースパイダー以外の敵の全滅 敗北条件 味方の撃破(だわー!) ボーナス条件 ハングリースパイダーの撃破(アイテム-『弱者の苦痛』) 味方情報 新規加入キャラクター キャラクター レベル ランク 特殊能力 - - - - 初期配置 高山太陽、サーペント、入江次郎 味方増援4ターン後 弓村小夏、姫樹陽 敵ネームド情報 キャラクター レベル HP EN 特殊能力 ハングリースパイダー 17 21000 210 迎撃Lv5、HP回復Lv1.5、EN回復Lv1、超反応、ダミー、弾体加速装置 敵増援4ターン後 神闘員ボックス(ザコ) 攻略情報 レスキューミー!三部作、その2。 第4話の戦闘非参加組による戦闘。 ボーナスを獲得する気がないのなら、かなり楽なステージ。 こちらからは動かず、反撃に専念する『待ち戦術』を心がければ、 ハングリースパイダーの攻撃を一度も受けることなく、すんなりクリアできる。 保険として、サーペントを小夏と陽の登場位置である北西に移動させておけば、更に簡単に。 しかし、ボーナス獲得を目指すならば、難易度は一転。かなりの苦戦を強いられることになる。 下準備として、まず、太陽と小夏を強化をしておくこと。最低でも、それぞれランク2は欲しいところ。 2つ目に、ハングリースパイダー戦の為の温存。そして、次が一番大切なのだが、 3つ目に、小夏のレベルを10以上に上げておくこと。これは、小夏の「ひらめき」習得レベルが10であり、 この「ひらめき」がハングリースパイダー戦での必須要素となるからだ。 ただし、注意すべき点として、ハングリースパイダー以外の敵を全滅させると、その時点でクリアになってしまう。 なので、適当な敵を一匹ほど残しておいて、攻略に挑もう。 ハングリースパイダーは、強力な火力と豊富な特殊能力(主に防御関連)を持つ。 長期戦は不利なので、「ひらめき」持ちの次郎、太陽、小夏の最強技を一気に叩きこむこと。 「ひらめき」を駆使していけば、HPの3/4は簡単に削れる。勝負は敵のHPが1/4(瀕死)になってから。 ハングリースパイダーは、瀕死状態になると、「ダミー(まだ死なない)」を使用してくる。 これにより、こちらの攻撃を無条件で2回防がれることになり、 更に、「底力」と「弾体加速装置」の効果により、命中率が底上げされてしまうのだ。 なので、「ひらめき」持ちのキャラ(出来れば、太陽、小夏が望ましい)で「ダミー」を削り、 ラストは、次郎か陽(「熱血」使用)でトドメをさそう。 このとき、サーペントを残しておいた敵の近くに配置させておき、 ハングリースパイダーの撃破と同時に、サーペントで敵を仕留めることで、 次のターンに、復活したハングリースパイダーに味方がやられてゲームオーバー、 という事態を回避できる。 第5話『レスキューミー!/隣は魔法使いさん家!』 第6-2話『レスキューミー!/魔法使いさんは隣に(後編)』
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21 03 *nick veiros → August 21 03 (sion) プロローグ 21 04 (sion) 激しい銃撃戦が続く中、議会派の猛攻撃を受け、王党派の兵士達はなだれを撃って逃げ出します。 21 05 (sion) リヴェ、という名の若い兵士が、議会派にいました。 21 05 (sion) 彼は、今戦場となっている町に、妻を残していました。 21 06 (sion) 王党派が撤退し、議会派が町を占領すると、彼は彼の家に駆け込みます。 21 06 (sion) 「マリー!」 21 06 (sion) 彼は妻の名を叫びました。しかし返事はありません。 21 06 (sion) 彼が家中を探し回り、リビングに入ったその時、 21 07 (sion) 彼は彼の妻が変わり果てた姿で斃れているのを見つけました。 21 07 (sion) 「マリー!!」 21 07 (sion) マリーと呼ばれたその女性は被服を引き裂かれ、陵辱され、なぶり殺しにされていました。 21 08 (sion) リヴェ「マリー!嘘だろ、う、うあ、ウワァァァアァァァ!!」 21 08 (sion) 彼は冷たくなった妻を抱きかかえ、大声で叫びました。 21 09 (sion) リヴェ(許さん!絶対に許さん!王党派の奴等、あいつ等!あいつ等!絶対に皆殺しにしてやる!!!) 21 09 (sion) 彼は、固く復讐を決意しました。 21 10 (sion) ―王党派、第3軍、第18小隊陣地 21 10 (sion) KYURRRRRRUUUU―DOWN!DOWN! 21 11 (August) (……この間の敗退で士気が落ちているな) 21 11 (sion) 塹壕帯には、王党派第3軍第18小隊が展開しています。 21 11 (August) 塹壕は都市奪回の為の物ですか? 21 11 (sion) 彼らは今、激しい砲撃を1時間以上受けています。 21 12 (sion) 違います。敵の陣地を奪取したものです。 21 12 (August) なるほど 21 12 (sion) 砲撃は、敵の警戒警報のようなものです。 21 13 (sion) つかれ切った兵士達の頭上に、泥や土の雨が降り注ぎます。 21 13 (sion) たまに人の腕や肉片なども降ってきます。 21 13 (sion) そして愈々、敵の砲撃が止みました。 21 13 (August) (……) 21 14 (sion) 敵が間じかに迫っているのです。 21 14 (sion) 将校「敵が来るぞ!配置に付け!」 21 14 (August) 「おい、君、生きてるか? 来るぞ」 21 15 (sion) 兵士「あ、ああ」 21 15 (August) 隣の兵士に声をかけながら小銃をとって配置につく。 21 15 (sion) 正面には煙幕が張られています。 21 15 (sion) 将校「弾薬は不足している、煙幕が消え、敵を目視してから射撃する事!」 21 16 (sion) 暫く、煙幕が展開されていましたが、それは風邪に流され、消えていきました。 21 16 (sion) その正面に、 21 16 (August) (弾薬は常に不足しているけれどね)煙幕の外にいるであろう見えない敵をイメージしつつ銃を構える。 21 17 (sion) 敵の小隊が展開しています。その距離50、榴弾が開けた穴ぼこに実を隠しています。 21 17 (sion) 将校「各分隊射撃開始!!」 21 17 (sion) 射撃判定どうぞ 21 18 (August) 判定ですか 21 18 (August) ルール確認します 21 18 (sion) はい。 21 18 (August) 3-射撃5+命中値<ダイス目 21 19 (August) 1d6 21 19 ([dice]) August 6(1D6 6) = 6 21 19 (August) ええっと 21 19 (sion) です。アウグスト君は2以上で成功です。 21 19 (August) なるほど、では成功 21 19 (sion) 味方、敵の射撃判定が始ります。 21 20 (sion) 7d6 21 20 (sion) あれ? 21 20 (August) 半角で 21 20 (sion) 7d6 21 20 ([dice]) sion 23(7D6 5 2 6 1 6 1 2) = 23 21 20 (sion) 7d6 21 20 ([dice]) sion 27(7D6 6 2 6 2 3 5 3) = 27 21 20 (sion) 7d6 21 20 ([dice]) sion 35(7D6 6 6 6 5 5 2 5) = 35 21 20 (sion) 敵の射撃判定が始ります。 21 20 (sion) 7d6 21 21 (sion) 7d6 21 21 ([dice]) sion 32(7D6 2 6 4 6 6 3 5) = 32 21 21 (sion) 7d6 21 21 ([dice]) sion 22(7D6 5 2 1 3 2 6 3) = 22 21 21 (sion) 7d6 21 21 ([dice]) sion 22(7D6 1 3 6 5 4 2 1) = 22 21 22 (sion) 味方、敵11名を射殺 21 22 (sion) 敵、味方8名を射殺しました。 21 23 (August) (…疲弊しているのは向こうも同じか) 21 23 (sion) アウグストの所属する第181分隊はダヴィット二等兵が戦死しました。 21 24 (August) 「おい君、生きてるかい? …ゆっくりおやすみ」 21 24 (sion) 第182分隊が敵の集中攻撃を受けているようです。 21 24 (August) 無駄うちに気をつけつつ応戦します。 21 25 (sion) 第182分隊が危険です。 21 25 (sion) 女兵士「だれかー!助けて!」 21 27 (August) 「ちっ…。隊長! 左翼の182分隊が崩れたらおしまいです。援護の命令を!」 21 29 (sion) 曹長「小隊長に要請する、少し待て!」 21 29 (sion) 曹長が小隊長の下に駆け寄って、暫くすると戻ってきました。 21 30 (August) 淡々と182分隊を襲う敵に狙撃を噛ます。 21 30 (sion) 判定どうぞ 21 30 (August) 1d6 21 30 ([dice]) August 5(1D6 5) = 5 21 30 (sion) 成功、敵1名を射殺しました。 21 30 (August) (今日の所はワンチャンス、ワンショット、ワンキルを達成できてるかな) 21 31 (sion) 将校「第182分隊を救援する、射撃!撃て!」 21 31 (sion) 味方射撃判定です。 21 31 (sion) 6d6 21 31 ([dice]) sion 17(6D6 1 5 2 2 1 6) = 17 21 31 (sion) 5d6 21 31 ([dice]) sion 18(5D6 1 6 6 1 4) = 18 21 32 (sion) 2d6 21 32 ([dice]) sion 12(2D6 6 6) = 12 21 32 (sion) [ 21 33 (sion) 敵部隊は機関銃射撃により行動不能です 21 33 (August) やれやれ 21 33 (sion) 曹長「英雄!バロワン、マリアと共に182分隊を救出にいけ!」 21 34 (August) 「了解! いくぞバロワン、今しかチャンスはない!」 21 34 (sion) バロワン「解った」 21 35 (sion) 第182分隊の陣地へ向かいます。 21 35 (August) 移動します 21 35 (sion) 敵は行動不能の為、射撃できません。 21 35 (sion) 陣地へ到着しました。 21 36 (sion) 女兵士「ああ、味方だ…」 21 36 (August) 「181分隊、アウグスト・モイゼス他2名、応援にきました」 21 36 (sion) ガブリエッラ「ガブリエッラよ、み、皆死んだわ…私も、撃たれて」 21 37 (sion) ガブリエッラという女兵士は右肩を撃たれてガタガタと震えています。 21 37 (August) 「…ですが貴方は生きている」と優しく肩を叩きつつ 21 37 (August) 状況を確認します。死体ごろごろ? 21 38 (sion) 彼女以外は全員死体です。 21 38 (August) (…遅かったか。これは退かざるを得ないかな) 21 39 (August) 敵の攻撃がまだ本格再開していないなら 21 39 (sion) まだです。 21 39 (sion) 敵は混乱しているようです。 21 39 (August) ガブリエッラをつれて陣地に戻ります 21 39 (August) 背負って陣地に戻るようバロワンに指示 21 40 (sion) バロワン「了解!」 21 40 (sion) バロワンはガブリエッラを背負って陣地に帰ります。 21 40 (sion) アウグストは如何しますか、(配下―マリア) 21 41 (August) 手榴弾とワイヤーロープを使って、放棄する182分隊陣地にトラップを4~5カ所仕掛けてから自分も戻ります。マリアは182分隊の持っている武器弾薬の回収を。 21 42 (sion) マリア「わ、わ、わかりました」 21 42 (sion) しかし、どうも敵の様子がおかしい、 21 42 (sion) 徐々に徐々に引上げていきます。 21 42 (sion) 将校「敵を撃退したぞ!」 21 43 (August) (……おや、このタイミングで退くのか?) 21 43 (sion) ぞろぞろと引上げていきます。 21 43 (August) (なにかあるのかな? まあそれを考えるのは僕ではない) 21 43 (sion) 周りを見ると、別の場所に攻撃を仕掛けていた敵も引上げていくようです。 21 43 (sion) 兵士「やったぞ!」 21 44 (sion) 兵士達は鬨の声を上げだしました。 21 44 (sion) … 21 44 (sion) …・ 21 45 (sion) 戦いには勝利したものの、小隊は1個分隊が壊滅し、他の分隊も消耗しました。 21 45 (sion) 負傷兵も多く、部隊は再編制が決まりました。 21 46 (sion) 曹長「アウグスト、喜べ、休暇だ」 21 46 (August) 「…休暇ですか。ありがとうございます」 21 47 (sion) 曹長「再編制までの間、休暇が与えられた。僅かだが、家族に逢って来い」 21 48 (August) 「はい。ではそうさせて頂きます」 21 49 (sion) アウグストは、救急車に同乗し、ヴェラリアまでいきました。 21 49 (sion) ヴェラリアからは、列車を使用します。 21 50 (sion) ―フォート・ヴェラリア 21 50 (August) (…久しぶりだな。マルトは無事だろうか) 21 50 (August) 陽光を浴びつつ、列車から降り立つ。 21 51 (August) 要塞化した故郷は幸せだった内戦以前の面影もない。 21 52 (August) はやる心を抑えて家族の疎開先に向かいます。 21 52 (sion) 暫く、歩いていると、 21 52 (sion) 見慣れない光景に出くわしました。 21 53 (August) 足を止めて見ます。 21 53 (sion) 男女の兵士が、道端で震えています。 21 53 (sion) それに正対して、憲兵隊の分隊が整列しています。 21 53 (sion) 将校「頭ー右! 21 54 (sion) 分隊が一斉に男女に向きます。 21 54 (August) (公開銃殺?) 21 54 (sion) 将校「弾込めー!」 21 54 (August) 男女の兵士はどんな感じですか 21 55 (August) 議会派な軍服だったりしますか。 21 55 (sion) 若い男女で、ひどくやつれています。王党派の兵士です。 21 55 (sion) 兵士達は小銃のボルトを後退させ、弾丸を込めます。 21 55 (August) (参ったな。ええい!) 21 55 (sion) 将校「構えー」 21 55 (August) 「ちょっと待った!」 21 56 (August) 大声で分隊に 21 56 (sion) 将校「何の用か?」 21 56 (sion) 分隊の憲兵達もアウグストを見ます。 21 56 (August) 「彼らは一体何を? 議会派のスパイには見えませんが」 21 57 (sion) 将校「女は脱走者だ。男は脱走幇助だ」 21 57 (August) 周囲の視線に動じずに受け答え。 21 57 (August) 「…脱走か。そうなのか?」と男女兵士に訪ねる。 21 58 (sion) 否定できないようです。 21 58 (sion) 男兵士「コイツは、俺の恋人なんだ。無理やり徴兵されて」 21 58 (sion) 男兵士「コイツは体が弱いんだ。お願いだ、許してくれぇ」 21 59 (August) 「…残念だが僕は君が望むことはできない」 22 00 (August) 「だが、…脱走ではなく、無許可外出であると口添えすることはできる」 22 00 (sion) 男兵士「うぐ…お願いだ、彼女を助けてくれ、俺はどうなってもいい」 22 00 (sion) 将校「何時までくちゃくちゃと喋っている!早くどけ」 22 00 (sion) 将校は怒鳴ります。 22 02 (sion) どうしますか? 22 02 (August) 「駄目だ。二人とも原隊に復帰するか、二人とも銃殺かのどちらかだ」 22 03 (August) 「君が好きな人を逃がしたいというのは分かる。しかしこんな時代だ。できることとできないことがある」 22 03 (sion) 男兵士「復帰だと…駄目だ。彼女は、2度も…味方に乱暴されているんだ…また、皆に、皆に…」 22 03 (August) 「だが、彼女は生きている」 22 04 (sion) 男兵士「うう、解った。解ったよ。俺が、彼女を何とかして、守るから、助けてくれよ」 22 04 (August) 「泣くな。お前が彼女を護るんだ」 22 05 (August) くるりと憲兵に向かって 22 05 (sion) 将校「話は済んだか?」 22 05 (August) 「ええ、彼らは錯乱して脱走だなと口走っていましたが」 22 05 (sion) 将校「が?」 22 06 (August) 「話を聞く限り無断外出に相当するものです。二人とも原隊に復帰する意向を示しています」 22 06 (sion) 将校「わかった」 22 06 (sion) 将校はアウグストをどかします。 22 06 (August) どきます。 22 06 (sion) 将校「構え!」 22 06 (sion) 憲兵隊は一斉に男女に向かって銃を構えます」 22 07 (sion) 将校「撃て!!」 22 07 (sion) PANG!PANG!PANG!」 22 07 (August) (……英雄も無力か) 22 07 (sion) 将校「さっさとうせろ、懲罰大隊に行きたいか!」 22 08 (August) 「いえ、お手数をおかけしました」 22 08 (August) 敬礼して去る。 22 08 (sion) アウグストは乗り換えの駅に着きました。 22 08 (sion) アウグストが乗る汽車には、高射砲が備えられ、さながら走行列車のようです。 22 09 (August) (…慣れないな。敵はともかく、味方を撃つのは) 22 09 (sion) アウグストはそんなことを思いながら 22 09 (sion) 列車に乗ります。 22 09 (August) 指定された席を探して座ります。 22 10 (sion) 乗客は殆どいません。 22 10 (sion) 警笛の後、列車が動き出しました。 22 11 (August) 窓の風景をぼおっとみています。 22 11 (sion) 暫く走っていると、遠くの空に飛行機が飛んでいるのが見えます。 22 11 (sion) 議会派の爆撃機らしく、爆弾のようなものを落としています。 22 12 (August) しつもん!それは向かう先ですかw 22 12 (sion) そうです。 22 12 (sion) 爆弾は、軍事施設ではなく、住宅地の方に落とされているようです。 22 13 (sion) 前の座席に座っている兵士たちが、何か話しています。 22 13 (August) (焼夷弾か? おのれ外道め!) 22 13 (August) 立ち上がって 22 13 (sion) 兵士A「この前、家族を疎開させた場所が爆撃されたんだ」 22 13 (August) 兵士の近くによって話声を聞きます。 22 13 (sion) 兵士B「大丈夫だったのか?」 22 14 (sion) 兵士A「うちは何とか…だけど、ピエールの家族が…」 22 14 (sion) 兵士B「ピエールの…そのことはピエールに?」 22 15 (sion) 兵士A「言うつもりだったけど…いえないよ。俺には無理だ」 22 15 (sion) 再び車窓に目をやると、爆撃機はどこかに去ろうとしました 22 16 (August) 爆撃機を眼力で撃墜を試み、諦める。 22 16 (sion) が、味方の戦闘機らしき小型の複葉機2機が現れ、爆撃機を取り巻いたかと思うと 22 16 (sion) 爆撃機は火を噴いて墜落していきました。 22 16 (sion) 兵士A「もっと早く、戦闘機が来てくれればな」 22 17 (sion) … 22 17 (sion) … 22 17 (sion) … 22 17 (sion) こうして、汽車は無事、アウグストの降りる駅に到着しました。 22 17 (sion) ―疎開地 22 18 (August) 到着したら即疎開地に急行します。 22 18 (sion) 疎開地はローザ村と言います。 22 18 (sion) どうやら周囲に爆撃のあとは無いようですが… 22 18 (sion) アウグストは家を探します。 22 18 (sion) 幸運判定どうぞ 22 19 (August) ほっと胸をなで下ろし、探します。 22 19 (August) 幸運5 22 19 (August) 1d6 22 19 (sion) 2以上で成功です。 22 19 ([dice]) August 1(1D6 1) = 1 22 19 (sion) 失敗。 22 20 (August) むねん。 22 20 (sion) とりあえず家に向かいます。 22 20 (sion) どうやら家は無事のようですが、近くに巨大なクレーターが出来ています。 22 20 (August) なんですとー 22 21 (August) 家に向かいます 22 21 (sion) 2、3人の人影がクレーターを眺めています。 22 21 (sion) 家族のようです。 22 21 (August) おっと 22 21 (August) 「父さん、母さん?」 22 21 (sion) 父「おお!アウグスト!!」 22 22 (sion) 母「ぶ、無事だったかえ!」 22 22 (August) 「休暇が出たよ。明後日にはもう出発だけども」 22 22 (August) ぱぱままと抱き合って喜びを表現。 22 22 (sion) 父「おお、それはよかった」 22 22 (August) 「マルトは?」 22 23 (sion) 父「おお、無事だとも、おーい、マルト!」 22 23 (sion) マルトが家から姿を現します。 22 24 (August) 駆け寄ってがしっと抱きしめて。 22 24 (August) 「おかえりなさい」「ただいま」 22 24 (sion) 父「よかった良かった」 22 24 (August) 「無事だった? 怪我はない?」「僕は不死身さ。どこにも怪我はない」 22 25 (August) 「君こそ大丈夫だったかい。このクレーターは?」 22 26 (August) 「ついさっきの事よ。郵便屋さんだったの」「…そうか。敵の飛行機がここに向かっていたので心配だったんだ」 22 27 (sion) 父「さあ、積もる話は中でしよう」 22 28 (August) 「そうだね父さん。久しぶりに母さんとマルトの料理が食べたいな」 22 28 (sion) 母「軍隊に皆持っていかれたけれど、何とか奮発してあげるよ」 22 28 (sion) ―食卓 22 29 (sion) 父「軍隊は、マルトまで連れて行こうとしたんだ」 22 29 (August) (ぶっ) 22 30 (sion) 母「こんな若い女のこまで、徴兵しようとするだなんて、世も末だよ」 22 30 (August) 「今の戦争は、昔の戦争じゃない。機関銃や爆弾でどんどん人が死ぬんだ。そのうちこの国から若者がいなくなるかもね…」 22 31 (sion) 父「前の疫病の大流行で、只でさえ人が少なくなったのに… 22 31 (August) マルト「…怖い」 22 32 (sion) 母「女の兵士は、質の悪い部隊に送られると、散々酷いことされるって聞いたよ」 22 32 (sion) 母「脱走するんだけど、皆憲兵に捕まって殺されてしまうって、町の人が言っておった」 22 33 (August) 「うん、そうだね…。明日死ぬかもしれないんだ。そういう風潮が軍隊の中にできてしまっている」 22 33 (August) 「女性だけの部隊もあるんだけど…なかなかね」 22 33 (sion) 父「…そうなのか、じゃあ、お前の隊にも…女の兵士が?」 22 34 (August) (ぶっ) 22 34 (August) 「いるよ。でも僕の部隊ではそういう事件は起こっていないかな」 22 34 (sion) 母「そうかえ、良かった」 22 35 (sion) 父「うむ、勿論、手出しなどしていないだろうな?」 22 35 (sion) 父「ハハハ」 22 36 (sion) 父はノンキに笑います。 22 36 (August) 「父さん。そういう話は食事しながら言うもんじゃないよ」 22 36 (August) と笑い 22 38 (sion) 彼らは話を切り替えて食事を続けました。 22 40 (sion) こうして、楽しい日々は瞬く間に過ぎて、家族との別れの日になりました。 22 40 (sion) 父「行くのか」 22 40 (August) 「…うん。そういう時代だもの。しかたないさ」 22 40 (sion) 母「気をつけておくれ」 22 41 (sion) 父「お前にはマルトがいる、女兵士に手を出しては行かんぞ!ハハハ」 22 41 (August) マルト「…死なないで」「英雄は死なないさ」 22 41 (sion) こうして、彼は家族と別れ、再び汽車に乗り、フォート・ヴェラリアまで行きました。 22 42 (August) マルトの頭を撫でた後、何度も振り返って手を振りながら出発。 22 42 (sion) フォート・ヴェラリアの集合場所では、兵士たちがぞろぞろと集まっています。 22 43 (sion) スタール「アウグストさん、御久しぶりです」 22 43 (sion) 先日の戦いで生き延びたスタールが挨拶をする。 22 43 (August) 「お久しぶりスタール。君も再編成休暇だったのかい?」 22 44 (sion) スタール「ええ、家族に逢ってきました。でも…恋人は…徴兵されていました…」 22 44 (sion) スタールはがっくりと肩を落とした。 22 45 (August) 「…そうか。頭数が少なくなっているのかな」 22 45 (sion) スタール「ええ、周りの補充兵を見ても、女性ばかりですし」 22 45 (August) (…この戦い、議会派の勝ちかな…) 22 46 (sion) 周囲を見ると、まだ幼顔の少女までもが銃を手にウロウロしています。 22 46 (August) (自分が英雄でなければマルトも…か) 22 46 (August) 「はははははは!」 22 47 (August) 突然笑い出して 22 47 (August) (戦友の恋人を戦場に送り出して、自分の妻は匿うなんて、どんな英雄だか!) 22 48 (sion) ガブリエッラ「どーしたの?突然笑い出したりして?」 22 48 (sion) 負傷し、病院送りになったはずのガブリエッラが肩を叩きます。 22 48 (August) 「スタール、生きろよ。少なくとも恋人さんより先に死ぬんじゃない」 22 48 (sion) スタール「ついでに、恋人も見つけ出しますよ。ハハハ」 22 49 (sion) ガブリエッラ「無視すんな!!」 22 49 (August) 「その意気だ。…と、ガブリエッラ。もう負傷はいいのか」 22 50 (sion) ガブリエッラ「平気・・・じゃないけど送り出される事になったの。とりあえずどうにかきらずに済んだわ」 22 50 (sion) ガブリエッラは2階級上の兵士にたいしてもノンキにため口を使います。 22 50 (sion) ガブリエッラ「あ、あと今度からこの隊に配属になったの。よろしくね」 22 51 (August) 「よかったな。確か切られても除隊できないからね…」 22 51 (sion) ガブリエッラ「いい気なものよね、私達は苦しく暮らしているのに」 22 52 (August) 「よろしく。長いつきあいになることを祈るよ」と握手。 22 52 (sion) ガブリエッラ「よろしくね」 22 52 (sion) ガブリエッラ「あっとと、それで、司令部の姫様は…」 22 52 (sion) 何か言いかけますが、 22 53 (sion) 曹長「第181分隊は集合!」 22 53 (August) 「行こう」 22 53 (August) 整列します。 22 53 (sion) 曹長「良く地獄へ舞戻ってきたな、出撃だ」 22 54 (sion) 曹長「目の前にあるトラックに乗り込め!」 22 54 (August) (この世界が既に地獄なんだけれけどね…) 22 54 (sion) 兵士達はトラックに乗り込みます。 22 54 (August) いつもの通り乗り込みます。 22 55 (sion) トラックは発進しました。ぞろぞろと、別の隊のトラックも続きます。 22 55 (sion) トラックは、南へ向かっているようです。 22 56 (sion) 曹長「苦しい戦闘が続いているが…」 22 56 (August) (マルトを護るには、僕が出世するしかない…か。いくつ勲章が必要なのだか) 22 56 (sion) 曹長「依然我方が反攻を続けている」 22 57 (sion) 曹長「レオネッサも側面支援している」 22 57 (sion) 曹長「出来る限り早く戦争を終らせて、家族を徴兵から守ろう」 22 57 (sion) 曹長はにっこりと笑いました。 22 57 (sion) 前編、FIN 22 58 (August) お疲れ様でした 22 58 (August) (エンディングテーマが流れる)